ベルリンで生まれた
世界初のシートメタルアイウェアブランド「ic! berlin」
2014/06/18 UPDATE
Vol.2handmade in berlin へのこだわり
今となっては確立されたシートメタル製法だが、設立当初はまだ奇異な存在。メガネ製作のエキスパートと呼ばれる人達からも、まるで興味を持ってもらえなかったそうだ。当然製作を請け負える職人も少なく、製品化に至るまでは相当な試行錯誤が繰り返された。CEOのラルフ氏は当時についてこう語る。「それだけ新しい試みだったという証拠だよね。そういった先見の明において、僕には突出した才能があるんだよ(笑)。確かに体制を整えるまでは苦難の連続だったけど、失敗を恐れて尻込みしていては何もはじまらないからね。とりあえずでも前進することが大事じゃないかな」。実際、ブランド設立以前のラルフ氏は、メガネをただのファッションアイテムとしか考えておらず、製作に関する知識はほとんどなかったそうだ。
そんなある意味無鉄砲、よく言えば実験的とも言えるスタンスは、世界的なブランドとなった今でも変わっていない。「冷たい水に臆せず飛び込めるかどうか」。ic! berlinでは、チャレンジこそが何よりもすべてとラルフ氏は続ける。その具体例のひとつを、スキームレスな人材起用や人材育成にも見ることができる。経験の少ないデザイナーを積極的に起用したり、元DJや画家などまったくの異業種から採用された社員も少なくない。世界的なビッグカンパニーとなった今では、会社の体制自体は効率化や体系化が進み随分とシステム化されたが、それでもチャレンジ精神に重きを置くというポリシーは変わっていないのだ。
元々東ベルリンの国営パン工場をリノベーションしたベルリンの本社には、企画から生産、販売部門までのすべて機能が集結。それにより、会社の規模が拡大した際に陥りがちなコミュニケーション不足を防ぎ、製品のクオリティ維持にも繋がるのだ。また、立場の違う者同士が近い場所にいることで環境に澱みが生まれない効果があり、新製品のアイデア創出にもひと役買っている。
製作はハンドメイド。創業時はCEOのラルフ氏も1本づつ手作業で製作しており、今も尚そのクラフトマンシップは受け継がれている。そのせいか、工場内はおおよそ工業製品を作っているとは思えないアナログな雰囲気に溢れている。また、特許技術を扱っているにも関わらず、工場内は壁一面に窓が設置され、たくさんの光が差し込んでくる。アイデアも人も工場も、すべてがオープンになっているのだ。頻繁に開催されている工場見学ツアーに参加すれば、普段は見ることのできないものづくりの裏側も知ることができる。