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東京藝術大学


「関係」

小松冴果 / デザイン

常に私たちは他人の顔を見ながら生活している。生まれた時にまず目にするのも人間の顔(母親)である。しかし、鏡に向かって思う。「自分の顔は本当にこれだろうか。」それが本当に正確に写されたものだと言う確信はない。現実的に自分の目で自分の顔を見ることは不可能である。何人の顔を見て比べてきたのか想像もつかないが、ただ一つ、自分の顔だけは見られないのである。
老人の顔を見ると、その人の人生が何となく見て取れる。顔面の皮膚上に出来ている抑揚である「シワ」は、その人が今まで作って来た表情で造り上げられてきたのだ。人と人との関係は一目ではつかめないものだ。幸せで、笑顔を作っている事ばかりではない。悲しくても寂しくても辛くても、笑顔を作っている時がある。笑って過ごして来た人。毎日イライラしながら過ごして来た人。悩みふける時間の多かった人。無表情になった時にも、日常の過ごし方というのは現れるものである。人間は居るという事は、そこに場面があり、人の感情があり、表情がある。映画のテープの様にそのコマの繋がりで出来上がっていくものだ。
そんな人間の表情へのリアリティーと、人間同士の関係「コミュニケーション」が私のベースとなっている。

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