インタビュー 編集部が注目するデザイナー・クリエイターのアイデアと実践に迫る
エイトブランディングデザイン西澤明洋氏インタビュー「デザイナーの成長、成功とは?」
ブランディングデザイナーとしてどのようにキャリアを形成してきたか
2015/04/22
JDN編集部
建築の思考体系が役立つ
ブランディングデザインは、表層的にはグラフィックの要素が目立ちますが、思考体系としては建築に近いものです。
建物を建てるとき、いきなり建物の形を考えるのではなくて、まず敷地。それに対して隣地の環境があったり、風土があったり、コストの制約があったり、法律の制約があったり…。諸条件の中で、1つの構造躯体を選択して、それに対してライフスタイルを考慮し、そのあとに初めて意匠を考える、という進め方をします。
ブランディングデザインってこれにかなり似ているんですよ。企業経営の情報の整理の仕方、開発コンセプトの立て方、デザインの進行のさせ方が。
建築を勉強してきた僕は、ブランディングデザインの思考術も学んでいたことになります。手技のスキルは当然、必要ですよ。デザイナーの素質として必要ですが、それ以前の考え方を身につけられたのが良かったのかなと思っています。
「登竜門」で腕を磨く
ブランディングデザインを専門にするにあたり、思考体系は建築で身につけられたので、後はプロダクトやグラフィックといった個々のスキルを磨くことが課題でした。
たとえば、建築出身の人間が建築のポートフォリオで東芝に就職できるかといったら絶対に無理です。就職難だった当時は、東芝でもデザイナーの採用枠が3人という少なさ。でも僕はどうしてもメーカーで働きたかったので、プロダクトデザインの腕を上げなきゃなと自分を駆り立てる方法を考えました。
そこでJDNの「登竜門」を活用したんです。建築を学びながら、1年半くらいデザインコンペに出しまくりました。その目的は、作品を少しでも多く制作したいということと、受賞歴くらいないと説得力がないということ。プロダクトを専門に4年間勉強してきた人と就職活動で争わないといけないんですからね。
特に大学院1年のときは、日々「登竜門」をチェックして、毎月1つくらい応募するペースでした。
始めの頃は、賞にはまったく選ばれません。作品は増えるので就職のためのポートフォリオづくりには役立ちました。それでも、大学院の課題と平行して、月イチのペースで作っていると、10回くらい応募し続けていたら、ようやく受賞できるようになりましたね。コツがあるわけではないですが、1個受賞できたら次々選ばれるようになって、就職活動までに3作品は受賞できました。
コンペには活用法がある
無事に就職が決まり、入社してからもプロダクトのスキルを上げたかったので、「登竜門」でコンペ情報を見つけては応募していました。プロダクトの実務に2年間携わりつつ、コンペでもいくつか受賞しました。その作品が商品化につながりそうになったことから縁が生まれて、他の仕事を引き受けたこともあります。会社員の時代にも、コンペを通じていろいろな人と知り合えたのは有意義でした。