目指しているのは「匂いが感じられる」スタイリング-インテリアスタイリスト・さかのまどか

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目指しているのは「匂いが感じられる」スタイリング-インテリアスタイリスト・さかのまどか

ひとりのクリエイターに焦点を当てて、その「お仕事」の魅力をひも解いていく「お仕事ファイル-クリエイターの横顔」。今回は、インテリアスタイリストのさかのまどかさんにフォーカス。アンティーク商材や植物、オリジナルのクラフトアイテムを取り入れ、広告撮影や店舗・商業施設などでオリジナリティのある空間を提案するさかのさんに、インテリアスタイリングの実例を交えて、スタイリングの着想法やこれから提案していきたいことなどをうかがった。

インテリアスタイリストを目指したきっかけ

昔からインテリア自体には興味があったので、インテリアコーディネーターの学校に通っていました。その時はインテリアスタイリストになることは特に考えていなくて、インテリアについて幅広く勉強したいと考えていました。学校を卒業してからはインテリアショップに入社して、その時もまだインテリアスタイリストになるとは思っていませんでした(笑)。実はいまもそんなにこだわっていません。

インテリアの仕事はけっこうハードなことが多くて、2~3年くらい前に過労で入院してしまし、気力、体力共にダウンしてしまって、仕事ができなくなってしまったんですね。今後は何をしようかなと悩んだ末に、やはり自分が人の役に立てるのはインテリアの仕事、これで生きていこうと改めて決めました。

それまで勤めていたようなような家具屋をやるのはひとりだと難しく感じたのですが、スタイリングによって商品のいちばん良く見える角度や組み合わせ方を提案することが好きだと気がつき、同時にそれを求めてくれるお客さんがいることに意識的になりました。病気で自信を失っていたのですが、これなら人の役に立てると思えました。そういう仕事ができるとわかった時は本当にうれしかったです。

自分ができる範囲で誰かの役に立てるということは、いま私が仕事をしていくために大事だったりします。

さかのまどか 雑誌などのメディア・広告撮影時のインテリアスタイリングをメインに、ホテルなどの商業施設やオフィスへのアートワーク提案、住宅やモデルルームのインテリアコーディネート、アンティークやハンドクラフトを取り入れたインテリアを提案している

さかのまどか
雑誌などのメディア・広告撮影時のインテリアスタイリングをメインに、ホテルなどの商業施設やオフィスへのアートワーク提案、住宅やモデルルームのインテリアコーディネート、アンティークやハンドクラフトを取り入れたインテリアを提案している

クライアントへの提案で大事にしていること

普段から常にリサーチはしていて、できるだけいろんな場所に出かけたりとか、遊びに行く時もいろんなものを見るようにしています。その蓄積した知識や経験と、クライアントの希望、箱(場所)を組み合わせてカタチにするようにしています。あと、そこに住んでいる人のことを妄想しながらストーリーをつくっていくことが多いです。例えば今回であれば、いろんな国へ旅に出て、自分の尺度でさまざまなモノを持ち帰ったコレクターの部屋、というようなイメージでつくったり。昨日の夜もずっとイメトレしてました(笑)。

それと、自分で意識しているのは、「匂いが感じられる」スタイリングをしたいなと思っています。その人の生活の感じが少し匂ってくるみたいな。それが伝わるような生の感じがある仕上がりにしたいと思っています。

百聞は一見にしかずではないが、実際にハウススタジオを使って、さかのさんにスタイリングをしていただいた。スタイリングをするにあたり、さかのさんは以下のような人物像を設定(妄想)したそう。

彼は旅が大好き。本を読みながら、地球儀を見て行きたいところへ。トランク片手に出かけます。審美眼があり、旅先で気になったものを仕入れたりアンティーク品を買って帰って部屋に並べています。植物やお花も好きで、飾る事も多いようです。旅先で出会ったスタイリストにアートをもらい、壁のデコレーションのやり方を聞いたので、新たに壁にかけてみました。

たくさんのアイテムを自分なりにセレクトして編集していく。そうして彼のスタイルはできていきます。

アンティーク調の雑貨、花器、アーティフィシャルグリーン、+さかのさんの私物などを用いてつくられた空間がこちら。旅が生活の一部にあることを感じさせ、各地で集められたふぞろいなモノが調和して並んでいる、架空の家主のキャラクターが浮かび上がってくるような空間だ。

今回、スタイリングにご協力いただいたのは、国内最大級のディスプレイ/デコレーションアイテム専門店「横浜ディスプレイミュージアム」。同店の商品を使って、スタイリングした感想についてもうかがった。

「横浜ディスプレイミュージアム 横浜本店」は、自社開発のオリジナル商品が一堂に会するショップ&ショールーム。現実の店舗を想定した活用例やコーディネーションのヒントを提示・販売している。1階には、空間演出のシーンづくりに欠かせない、大小さまざまなディスプレイマテリアルがそろい、グリーンコーナーでは、アーティフィシャルグリーンを中心としたグリーンディスプレイ専門のアイテムを中心に展開

「横浜ディスプレイミュージアム 横浜本店」は、自社開発のオリジナル商品が一堂に会するショップ&ショールーム。現実の店舗を想定した活用例やコーディネーションのヒントを提示・販売している。1階には、空間演出のシーンづくりに欠かせない、大小さまざまなディスプレイマテリアルがそろい、グリーンコーナーでは、アーティフィシャルグリーンを中心としたグリーンディスプレイ専門のアイテムを中心に展開

横浜ディスプレイミュージアムにはいろんな商品があるから幅広い提案ができる、ここでしか見られないような大型のオブジェクトがあるし、ヒントがたくさん得れる場所だと思います。店内は広いからピックアップがしやすいですし、アーティフィシャルグリーンも充実していて、実際にお店で花器に合わせらるのも便利ですよね。いろんなものがそろっているので、1軒である程度のスタイリングのベースはつくることができますね。私はいろんなものをミックスするスタイルで、古いものと新らしいものを混ぜ合わせることが多いので、そういう意味では相性が良かったなと思っています。

スタイリングの難しさとやりがい

やっぱり難しさはギリギリまで頭の中でイメージするしかなく、「その場」でしかつくれないこと。料理みたいに試しにつくってみたり、建築のようにパースに表すことも難しいし、絵を描くみたいに下書きができないので、いつもライブペインティングをやっているような感覚です。本当に前日は吐きそうになるくらいの緊張感を覚えることもあります(笑)。そうならないために、先ほどお伝えしたようにかなり細部までイメトレします。でも、どうしても不確定要素が多い現場もあります。そういうときにこれまで蓄積してきた知識や経験が役に立ちますね。

家でイメージするのと現場でモノにふれるのでは全然違うし、実際に差し込む光とかを体感しながら、現場の空気の中でつくり上げていくというのはあります。古びたアンティーク品があったり、モダンなデザインのフラワーベースがある、私のスタイリングはそれらがそろって成り立っていて、ぜーんぶキレイだともの足りないというか、面白みがない気がします。それぞれがそれぞれに良さがあるから、スタイリングに深みをつけられると思っています。それに気がついてからは、コンプレックスだった外見もあまり気にならなくなりました(笑)。個性って良い!と。

自分が好きな表現をやりきった先に
新たに提案できる表現がある

いまはお客さんのための表現が中心で、それがもちろん仕事なんですけど、1回余裕ができたら自分が好きな表現をやりきってみたいですね。その上で、またお客さまのためにできる表現があると思っていて、まわりのクリエイターとみんなで1枚の画をつくりたいっていうという思いがあります。

あとは、最近アートを身近に感じてもらうため、アーティスト・クリエイター・インテリアショップとコラボレーションして、つくり手の部屋やアトリエをイメージしたスタイリングをつくっているんですよ。

アートが遠い存在という印象を持っている方もいると思うんですけど、アートを身近に感じてもらうため、作り手の人となりが分かるようなスタイリングを半分は本当に彼らの道具を使い、半分私の妄想で作っています。それは今後も続けていきたいです。

もっと手軽に季節ごとに切り替えられるんだよ、という提案をしたいですね。フォトグラファーも、編集者も、料理人もクリエイターで、みんな何かをつくってる人たちだと思うんですよ。いろんなジャンルの人たちの部屋を、最終的になにかブックなどにまとめられたらすごくおもしろいなと。

フリーランスで活動していると、最終的には頼れるのは自分しかいないので、日々自分を管理していくことって大事だなって感じています。管理していくなかにちゃんと遊びもあって、自分で息抜きしていかないと身体を壊してしまいます。病気をしてからは逆に遊ばないとって強く思うようになったというか、一生懸命遊んで、一生懸命良いスタイリングをする。一日一日楽しく生きて、自分のできることをして、誰かの役に立てると幸せです。まだまだ遊べていないので目標ですね(笑)。

撮影(人物+スタイリング):木村文平 構成・文:瀬尾陽(JDN編集部)

さかのまどか
https://airbnbinterior.wixsite.com/coryostylist

横浜ディスプレイミュージアム 横浜本店
住所:神奈川県横浜市神奈川区大野町1-8 アルテ横浜
営業時間:10:00~17:30
定休日:日曜、祝日(土曜不定期)
TEL:045-441-3933
http://www.displaymuseum.co.jp/