自社をデザインし、働き、提案につなげる―“デザインチーム”のある会社【コニカミノルタジャパン編】(2)

自社をデザインし、働き、提案につなげる―“デザインチーム”のある会社【コニカミノルタジャパン編】(2)

コニカミノルタジャパンだからできる、空間デザインにとどまらない提案と得られる経験

――御社の空間デザイン統括部だからこそ得られるスキルや経験について教えてください。

梅田:「つなぐオフィス」で実際に働くことで、働く環境に必要なものとはなにか、経験的に理解できる。そこにコニカミノルタジャパンで空間デザイナーとして働く強みがあると考えています。つまり、出社することがそのまま空間デザインの勉強になるんです。自分が働くなかで、改善すべきところを見つけ、形にし、働く社員からフィードバックをもらう。自分たちのオフィスで実証実験をしながら、働きやすい空間を追求できる環境だと思います。

また、当社は毎日のように「オフィスツアー」を開催しており、お客様と対話できる機会が多いことも特徴です。デザイナーが営業に同行し、お客様のリアルな声を直接拾い上げることで、お客様が普段どんなところで課題を感じているのか、多くの気づきを得られます。

辻:私にとって「つなぐオフィス」は、まさしく学びの場です。自分では良いデザインだと思っていても、他部署の人にとっては使いづらく感じたり、その逆もあったり。実際に働いている人の声をすぐにキャッチアップできる環境なので、いろいろな視点を持つことができます。

コニカミノルタジャパン 空間デザイン統括部

辻:ほかにも、空間デザイン分野にとどまらず複合的な提案ができることも、弊社でデザイナーをやる魅力だと思います。たとえば、フロアの中心にオープンスペースをつくる提案をしようとした時、設計図を書いてみると、オープンスペースとコンセントの位置が離れており、気軽に充電できないことに気がつきました。デザイナーのみの組織だと、この場合レイアウトを変更しなければなりません。

しかし弊社はモバイルバッテリーを自社販売しているので、レイアウトそのままにモバイルバッテリーと合わせた提案ができる。ほかの事業部と連携することで、質の高いデザインが可能になるんです。そのため、デザインを考える時は、コニカミノルタジャパンのリソースをフルに使ってなにができるかを意識するようにしています。

梅田:社内向けの空間デザインの観点で言うと、当社は「オフィスを全員でつくっていこう」という前向きな風土が根づいているため、デザイナーが社内を巻き込みやすい環境です。空間デザイン統括部のメンバーが会社のために取り組みたいことがあれば、「つなぐオフィス委員会」に提案できます。この規模の会社で、自分たちのやりたいことを社内に発信して形にできるのは、とてもやりがいを感じますね。

多様化する働き方にフィットしたデザイン提案

――「つなぐオフィス」をつくったことで、お客様への提案も変化したのでしょうか?

梅田:これまでもABWの考え方を導入したオフィス提案をおこなってきましたが、「つなぐオフィス」をつくったことでさらに説得力が増した提案ができるようになったと感じます。

たとえば、農業向け機械メーカーのクボタ様の場合。働き方の多様化に合わせてフリーアドレスを導入したものの、社内にうまく浸透しないことに悩んでいました。そこでABWの考え方を採用した当社の「つなぐオフィス」に訪問いただき、クボタ様にとって最適なオフィスとはなにかを一緒に考えていきました。

空間デザイン統括部が手がけた、株式会社クボタのオフィスの様子 

コニカミノルタジャパン空間デザイン統括部が手がけた、株式会社クボタのオフィスの様子

梅田:リニューアル後の執務フロアは、固定席を廃した「フリーアドレスエリア」、ミーティングをおこないやすいようにテーブル席で構成された「コラボレーションエリア」、ソファに掛けてリラックスしながら打ち合わせができる「クリエイティブエリア」、作業に集中できる「フォーカスエリア」で構成。各エリアである程度用途が決まっているので、働く場所をより選択しやすくしました。

また、ランチタイムしか利用されていなかった食堂をカフェテリアにリニューアル。業務時間中にもワークスペースとして気軽に使えるような仕組みにすることで、働く場所の選択肢を増やすことができました。

食堂をリニューアルすることで、ランチタイム以外にも使われるようリニューアル

時代とともに変化する空間デザイナーの価値

――最後に、空間デザイナーとしての今後の展望について教えてください。

辻:まだ入社して日が浅いので、いまはとにかく目の前のことに全力で取り組み、経験や知識を確実に自分のものにしていきたいです。そしてゆくゆくは、オフィスだけでなくどんな施設でも設計できるデザイナーになりたいと考えています。

ここ数年で世の中のオフィスに対する考え方や働き方が大きく変化しました。多くの人々がオフィスや自宅を使い分けながら働くようになりましたが、将来的にはオフィスがいらなくなり、オフィスに代わる新しい場所が必要になるかもしれない。そんなことを想像すると、オフィス以外にもデザインの幅を広げていく必要性があると思います。だからこそ、オフィスに限らず「働く」の本質を探りながら、新しいデザインを提案できるようになりたいですね。

梅田:コロナ禍を経て働き方が大きく変化した昨今、ただオシャレなだけのオフィスではお客様のニーズに応えるのは難しいと感じるようになりました。一番大事なのは、働く人の目線で空間をデザインすること。オフィスにどんなことを求めて、どんなふうに働きたいのかを、きちんと読み解く力が空間デザイナーに求められる時代です。自分たちがデザインしたオフィスで実際に働くことができる当部署は、まさにいま求められるデザインスキルが磨ける場所だと思います。

デザイングループのメンバーたちにも、お客様の真のニーズを読み解く力を磨いてもらうために、空間デザイン以外の視点をたくさん持ってほしいです。コニカミノルタジャパンは、さまざまな事業部が集まった会社。空間デザイナーとして成長できる機会が豊富にあるので、それを最大限に活かせる環境をリーダーとして整えていきたいですね。

デザイングループがレベルアップすることは、お客様の課題に応えられる幅が広がるということ。オフィス空間を通して、お客様の企業価値の向上を叶える部署に成長していきたいと思います。

コニカミノルタジャパン 空間デザイン統括部

コニカミノルタジャパン株式会社 空間デザイン統括部
https://www.konicaminolta.jp/business/solution/space-design/

取材・文:濱田あゆみ(ランニングホームラン) 撮影:井手勇貴 編集:石田織座(JDN)