1983年、広島国際文化財団と日本グラフィックデザイナー協会は、人類最初の原爆の惨禍を体験した広島の祈りと願いを多くの人に広めるため、言葉を超えて「ヒロシマの心」を訴えるポスターを共同制作するキャンペーン「ヒロシマ・アピールズ（広島は訴える）」の構想を発表した。

同年、記念すべき第1回目の「ヒロシマ・アピールズ」作品として、当時JAGDA会長だった亀倉雄策氏の「燃え落ちる蝶」が発表されると、美しさと品格を備えながら平和・反戦の祈りが強く込められたポスターとして大きな反響を呼んだ。その後、1989年の第7回まで、日本を代表するグラフィックデザイナーであるJAGDA会員1名があらゆる思想、政治、宗教にとらわれない、純粋に中立な立場で毎年1点ずつ新しいポスターを無償で制作し、原爆記念日にあわせて歴代の広島市長に贈呈してきた。

アピールズ・ポスターは自治体や教育機関、医師会などに頒布されるとともに一般にも販売された。また、核兵器廃絶に向けて世界各国の都市が連帯する「平和市長会議」の参加都市に贈られ、1985年にスイス・ジュネーブでの米ソ首脳会談前に開かれた原爆資料展や1997年の欧州ヒロシマ展でも紹介された。

2005年、戦後60周年を機に、一時中断していた「ヒロシマ・アピールズ」ポスターの制作を再開し、毎年1点ずつ、2014年までに新たに10作品（通算17作品）が制作されてきた。再開後のポスターも毎年広島市長に贈呈されるとともに広く販売、頒布され、世界に向けて「ヒロシマの心」をアピールし続けている。