「レトロ印刷」という印刷をご存知ですか?「リソグラフ」と呼ばれる孔版印刷の一種で、身近なところだとスーパーの安売りチラシなどでも使われている印刷です。早くて安く、手軽にできる印刷として使われてきましたが、大阪の印刷会社「レトロ印刷JAM」でいろいろな種類の用紙やインキが使えるようになってから、イラストレーターやデザイナーに人気の印刷として知られるようになりました。
レトロ印刷の魅力は、通常のオフセット印刷にはない「味」。コピー機のような機械で1色ずつプリントするため、多色刷りの場合には版ズレ(絵柄の位置がずれること)が起きたり、ベタ面がかすれたり、こするとインキが落ちたりします。一方で、わら半紙やクラフト紙など、塗工されていないザラ紙にも印刷できるため、手触り感のある味わい深い印刷物ができるのです。
現在、レトロ印刷JAMで使えるインキの色数は30色以上。蛍光色やパステルカラー、ゴールドも使えます。「ツヤプリ」という盛り上がった光沢加工を使うと、こすれによる色落ちを防ぐこともできます。また、使える用紙の種類は、ポストカード向けの厚紙からチラシ向けの薄紙まで、30種類以上。薄紙を製本してノートやZINEなどのページのものも作成可能。全国どこでもネットからオーダーでき、手軽に印刷物をつくることができます。
「レトロ印刷JAM」で使える刷り色と用紙の種類
https://jam-p.com/paperink/
自分でオリジナルの紙雑貨をつくって販売しているクリエイターの方々の中にも、レトロ印刷で印刷したものに一手間加えて、箱や文具をつくっている方がいらっしゃいます。ここではそんなレトロ印刷を使った技あり紙ものの事例を紹介したいと思います。
(本記事の写真はすべて『レトロ印刷コレクション』[発行:ビー・エヌ・エヌ新社、撮影:吉次史成]より)

山のポストカードは落合恵さん作。鉛筆で描いた原画のかすれ具合も再現されています。

ムツロマサコさんの便箋「本とコーヒー」。ハトロン紙に2色で印刷。

いのうえ彩さんのラッピングペーパー。のし袋や箱に仕立てた紙雑貨を制作している。

一乗ひかるさんの個展DMとfujiwara keisukeさんの蛍光色ストライプのフライヤー。

レトロ印刷JAMの台湾店で印刷されたA3サイズのポスター。日本とはまた違う色の使い方が印象的。

書肆サイコロのカレンダー。紙やインクの選び方次第で、シックなデザインにも。
ポストカード、便箋、DM、ポスター、カレンダーなどのアイテムを紹介しましたが、このほか、名刺、ショップカード、ラッピングペーパー、ZINEなども制作できます。レトロ印刷で印刷できるサイズは、A3くらいまで。大きさの制約はありますが、工夫次第でかなりいろいろな紙ものがつくれます。
レトロ印刷の作品を集めた書籍『レトロ印刷コレクション』の刊行を記念して、大阪・東京・台湾の3都市同時に期間限定の展覧会を開催。実際の印刷物が多数展示されていますので、この機会にぜひレトロ印刷の魅力を感じてみてください!