創業140周年
「究極のシンプル美」を追及するNiessingのデザイン哲学
2013/10/09 UPDATE
Vol.3店舗デザインにみるフィロソフィーの表現
トラディショナルなマッリジリングメーカーを、一躍世界に名だたるモダンジュエラーへと押し上げた、ウズラー・エクスナー。彼女が提唱したデザイン哲学は、プロダクトに対してのみならず、広告戦略や、販売の場である店舗デザインにも反映されている。
Niessingは、ジュエリーとそれを身に着ける人の間に、コミュニケーションが生まれることを理想としており、店舗はいうなれば人とジュエリーの出会いの場。シンプルで素材を探求するジュエリーデザインと同様に、Niessingのフィロソフィーを具現化した数々のアイデアが、店舗デザインからも感じられることだろう。
Niessingの店舗デザインは、端的にいえばシンプルそのものだ。一般にジュエリーから想像される華やかなイメージを、ことさらにアピールする装飾は施されていない。人とジュエリーの自由で純粋な出会いの場を理想とするNiessingにとっては、ファーストインプレッションが均一化される極端なイメージ作りは最も避けたいからだ。その想いは、何ものにも染まる白を基調に、ソリッドな什器類、モデルを登場させない広告ビジュアルなどに表れている。
2010年、経営陣の刷新に伴い、世界中に展開する店舗デザインのリニューアルをすすめているNiessing。元々小売業を営んでいた人物が経営陣に参画したことで、より顧客目線を重視した提案が採用されることとなったのだ。基本的な理念は変わらないが、以前よりコンサルティングスペースが拡張され、より温かみのある空間デザインが採用されている。
白塗りの壁は、マットな質感に仕上げられた人工大理石に変更され、また、ドイツの左官職人が来日して製作したクレイウォールを取り入れた。無機質だった床はオーク材を使用した趣きのある床に、チェアも木製へと変更し、天然素材を各所に用いている。デザインを手掛けたのは、ドイツの2人組デザインユニット・ドライフォルム。先日、青山店のリニューアルに合わせて来日したドライフォルムのデザイナー、クレメンス・ギジツキ氏に、店舗デザインのコンセプトを聞いた。
「素材が持つ魅力を最大限に生かし、デザインとして昇華させていく。そんなNiessingのブランドフィロソフィーこそが、まさに今回の店舗デザインのコンセプトです」。
新しいコンセプトの店舗を目指すに辺り、幾度もブリーフィングを重ねたと語るギジツキ氏。あくまでもジュエリーをバックアップすることを目的としてデザインされた新しい店舗は、実にリラックスできる空間に仕上がっている。訪れた客は、ジュエリーとの出会いをじっくりと時間をかけて堪能できるだろう。
「ジュエリーとそれを身に着ける人の間に、コミュニケーションが生まれることを理想とする考え方は、変わっていません。マットな壁も、ジュエリーやストーンから放たれる輝きを邪魔しないための選択。そうすることで、見る人がジュエリーの素の魅力と対話できるからです」
Niessingが世界的に取り組んでいる店舗リニューアルのプロジェクトは、変化ではなく、Niessingのデザインフィロソフィーを効果的に演出する進化と呼ぶ方がふさわしいのかもしれない。
Niessing Tokyo 【ニーシング東京/新店舗】
東京都港区南青山5-9-10 サンク青山1階
Tel. 03-3499-1868 / 11:00-19:30 水曜定休
※旧店舗は2013年8月20日をもって閉店いたしました。
