創業140周年
「究極のシンプル美」を追及するNiessingのデザイン哲学
2013/08/28 UPDATE
Vol.1受け継がれるニーシングセッティング技術
今やドイツのモダンジュエリーを代表するジュエラーとなったNiessingの歴史は、1873年ヘルマン・ニーシングが創設したジュエリーのワークショップから始まった。ドイツの造形学校バウハウスの流れを汲む作風は、究極のシンプルを追求。その研ぎ澄まされた美しさは、140年の歴史の中で培われた職人達の熟練した技術によって支えられている。
1970年代からモダンデザインへと方向性をシフトしていったNiessingが、確固たる地位を築くきっかけとなったのが1981年に発表された「The Niessing Ring(ザ・ニーシングリング)」だ。無駄な装飾を一切削ぎ落とし、地金のテンション(張力)だけでダイヤモンドを支える独自のスタイルは、当時のジュエリー界に大きな衝撃を与えた。
金細工職人で彫刻家のウォルター・ウィテックにより考案されたこのリングは、まるでダイヤモンドが浮遊しているようなセッティングで、そのフォルムと輝きを最大限に生かし、究極のシンプルと機能性を融合している。のちのモダニズムデザインの礎となったリングとしても評価されており、ジュエリーデザイン界ではこの技法をさして“ニーシング セッティング”と呼ぶなどエポックメイキングな存在だ。
アール・ヌーヴォーの流れの中で、ダイヤモンドが名声と豊かさの象徴とされていた1980年代当時、Niessingの打ち出すモダンデザインに懐疑的な意見もあったが、1979年に特許を取得したザ・ニーシングリングはその後、数々のデザイン賞を受賞。2001年には本国ドイツで芸術的著作権保護の対象として認可され、芸術品として法的に盗作・贋作から保護されている。現在ドイツのグラッシィミュージアムをはじめとした4つの美術館に所蔵されており、Niessingの卓越したクオリティと職人的技術は“美術品”としても高く評価されている。
特殊な構造ゆえ、地金のテンションに耐えられず破損することがないよう、ダイヤモンドの選定にも厳しい品質基準を設けている。熟練した石留職人が一点一点細心の注意を払って宝石とリングをセットしてはじめて、ダイヤモンドは宙に浮かび上がるのだ。1981年の発表以来、技術改良は絶え間なく続けられ、その製造プロセスはつねにベストの状態に維持されている。
140周年記念 限定モデル登場
今年創業140周年迎えるNiessingは、このたび新作「The Niessing Ring S(ザ・ニーシングリング エス)」シリーズを発表。代表作ザ・ニーシングリングよりも細いアームでダイヤモンドを支えることを可能にした画期的な商品だ。アームを細くするというデザインコンセプト自体は、かねてより新作候補に挙がり続けていたが、理想とするアームの細さを表現するのに必要な張力を持つ地金の開発が非常に困難であったため、実現に至るまでには長い時間がかかった。不可能とされていた技術開発を乗り越え、より身近で身に着けやすくなったモダンデザインをぜひご覧いただきたい。