伝統と革新のデザインの融合
ドイツのコンテンポラリージュエリーにみるクラフトマンシップ
2012/04/25 UPDATE
Vol.1宙に浮いたダイヤモンドのモダニズム
まるでダイヤモンドが浮遊しているかのようなデザイン。宝石を留める爪がないため、あらゆる角度から光を集め、ダイヤモンド本来の美しさを最大限に引き出すことに成功した画期的なリングだ。
1979年に彫刻家ウォルター・ウィテックがデザインした「The Niessing Ring(ザ・ニーシングリング)」は、地金のテンション(張力)のみで完全にダイヤモンドを支えるという発明で、世界のジュエリー界に大きな衝撃を与えた。この技法は「ニーシングセッティング」と通称されるほど、エポックメイキングなリングとして世界中で認識されている。のちのモダニズムデザインの礎的な存在としても評価され、1999年には「Busse Longlife Design Award」を受賞し、2001年には芸術的著作権保護の対象として認可。また、ドイツのグラッシィミュージアムをはじめ、ノルウェー、オーストリアなど4つの美術館に所蔵されている。
張力によって固定するということは、常に加重が掛かっているということであり、極端に言えばこのリングは単なる静物的なデザインではない。すなわち、およそ15kgもの加重を安定的に維持するこの形は、緻密に計算された機能性に基づいて生み出されたモノなのである。それは「形態は機能に従う」というバウハウスの理念に通じる。Niessingは1873年にへルマン・ニーシングによって、ドイツとオランダの国境近くの街フレーデンで創立。ジュエリーを製作するにあたって画期的な合金や機具の発明など、創立以来様々な技術革新を続けてきた。そんなモノ作りに対する姿勢はバウハウスの理念そのものであり、ひとつのデザインが生み出される時には常に技術が寄り添っている。