桑沢デザイン研究所に受け継がれる創造者育成のメソッド

桑沢デザイン研究所に受け継がれる
創造者育成のメソッド

2013/03/21 UPDATE

Vol.1デザイナーに必要な感性をどう、磨けばよいか

1954年の設立から現在まで、桑沢デザイン研究所は膨大な数のデザイナー、クリエイターを輩出し続けている。長年に渡り、このデザイン教育施設が有望な人材を育成できたのは、設立者の故・桑澤洋子氏が掲げた「社会に資するデザイン」を生み出すという揺るぎない理念が深く関係している。この思想は当時、強い説得力を持って世の中に受け入れられ、経済成長を遂げようとする日本社会のニーズを的確に捉えた。それまで「芸術」と同じ土俵で語られることの多かったデザインの分野に、全く新しい考え方を示唆したのだ。

この考えは、桑沢デザイン研究所に脈々と受け継がれ、今も日本が生み出すクリエイションに多大な影響を及ぼし続ける。

桑沢デザイン研究所10代目所長 浅葉克己
桑沢デザイン研究所10代目所長 浅葉克己

2011年10月に同研究所10代目所長に就任し、自身もここで多くを吸収した卒業生、浅葉克己氏は学生時代をこう回想する。
「デザインには理論や技法も大切。だけど、それ以前に必要なのは感性と、デザインに取り組む姿勢です。このことを桑沢は設立当時から訴えていたと思う。ビジュアル、プロダクト、スペース、ファッションなど、学生がどんな方向を目指していようと、ここで学ぶのはまず感性。来る日も来る日も多くの課題が出され、やりこなすのが大変でした。その中で僕も、他の学生も皆、感性が磨かれていった。デザイナーはひたすらものを創ることでしか、手ワザを磨けません。手ワザを磨くことで感受性も高まっていくことを僕自身も学ばされたのです」

浅葉氏が学生の頃から行われていた、ある授業の内容は現在も変わっていない。ひたすらハンドスカルプチャーの造形を模索していくというこのユニークな授業は、桑沢の思想を端的に表していると言えるだろう。
「ただ、木片を削り、ペーパーで磨いて作品を創る。これは全学生に基本教育として教えている授業です。初めはただの木片なんですが、8週間の間、削り続けていると造形になっていく。見えない形を手の中から作り上げていくのです。1つの到達点は、目で見るというより、手で触って気持ちの良い自分だけの形。触覚でデザインを学んでいくと言えばいいのかな。このように非常に動物的な行為によって、感受性や造形力が豊かになっていくのです」

木片を削り、手で触って、自分だけの心地よい造形を生み出すハンドスカルプチャーの授業は浅葉氏が学生の頃から行われている
木片を削り、手で触って、自分だけの心地よい造形を生み出すハンドスカルプチャーの授業は浅葉氏が学生の頃から行われている

社会にはどのようなデザインが求められているか。この問いに応えていかなければならないデザイナーにとって、まず必要なのは独創的な着眼点。ハンドスカルプチャーの授業を始めとした斬新なカリキュラムは、確かに、社会を変えていく人材を生む一助になっていると浅葉氏は語る。
「世界を変える、より良い方向に向かわせるには、デザイナーがそれぞれ独自の視点を社会に提示していくしかありません。従来にはないものの見方をできるクリエイターが常に求められているんです。だから僕はいわゆる“普通”じゃない視点を持てる人材、つまり天才を育てたい。かつて桑澤洋子さんは“概念くだき”という言葉をよく使っていましたが、全ての先入観を解体するという考え方に賛同するし、僕もこの想いに立って若い人を後押ししていきます」

専門学校 桑沢デザイン研究所

INDEX

デザイナーに必要な感性をどう、磨けばよいか

VOL.1

デザイナーに必要な感性をどう、磨けばよいか

実験の連続が新しい発想を生みだす

VOL.2

実験の連続が新しい発想を生みだす

デザイナーに必要な感性をどう、磨けばよいか

VOL.3

進化し続ける桑沢の育成メソッド

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