アートのある暮らしを実現する学生限定 立体アートコンペティション

アートのある暮らしを実現する
学生限定 立体アートコンペティション

2013/02/20 UPDATE

Vol.2マンションの顔となるアートの要件

AACの審査では、そのアートが展示空間となるエントランスホールで生きるかどうかがチェックされる。作品が空間にマッチするか、という点はもちろん、恒久設置に耐えられるのか、素材や技法、作品保護のためのケースやカバーの必要性など、細かい多様な視点も審査のポイントだ。審査員からは、応募者が想定していないような問題についても指摘や提案があり、様々なやりとりを通して最終判断に至る。

2012年の最優秀作品に選ばれたのは、帆足枝里子さん(女子美術大学大学院)の「景」である。AAC2012の審査員長で森美術館館長の南條史生氏は「エントランスの白い壁の前で、淡いグリーンの色が大変映える」と、マンションに足を踏み入れた時に受けるであろう印象を評している。実は、帆足さんは、2011年にもAACに応募し最終審査に進んでいる。その際には耐久性の問題を指摘され、優秀賞にとどまった。恒久的にマンションに設置する、という前提に向き合い、耐久性を改善しての再チャレンジ。受賞に際し、帆足さんは「試行錯誤を続けたことが良い思い出」と述べている。

マンションの顔とも言うべきエントランスホールに設置されるアートは、住人が友人を招くきっかけにもなりうる。2011年のAACの物件は、若い入居者の多い都内のワンルームマンションだった。最優秀賞に選ばれた堀康史さん(多摩美術大学)の「HOPE」は、審査員から「設置条件に対してよく考えられている」との評価を受けた。審査委員長は「こんな素敵な作品があるから遊びに来て、と友人を招待できる」とコメントしており、エントランスに作品を設置することで、このマンションに住んでいること自体を楽しみ、誇らしい気持ちになるような空間を予感させた。

作品の設置に関しては、学生は一様に不慣れであるが、これに関しては、最終審査の段階で、主催者の設計担当者にサポートを受けながら実現方法を検討する。堀さんは、先生や友人、そして主催会社のアシスト無しには、最終的な完成はなかっただろうと話す。

2008年最優秀賞「ゆるやかなときのながれのなかで」 は、小椋聡子さん(東京芸術大学大学院)の、彼女の専門分野である鋳金を用いた作品である。

2012年最優秀賞「景」
2012年最優秀賞「景」
帆足枝里子(女子美術大学大学院)
2011年最優秀賞「HOPE」
2011年最優秀賞「HOPE」
堀 康史(多摩美術大学)
2008年最優秀賞「ゆるやかなときのながれのなかで」
2008年最優秀賞「ゆるやかなときのながれのなかで」
小椋 聡子(東京芸術大学大学院)

審査の際には「手の込んだ技を大切にしており、工芸の世界から色々な社会、自然環境、あるいは住空間に繋がっていこうという意欲が感じられる、人間の感覚に柔らかく訴えてくる仕事」と評価された。受賞した小椋さんは現在作家として活躍しており、このようなニュースは、そのアートが置かれたマンションの住人にとっても、ちょっと嬉しい出来事に違いない。

主催者は年間数棟のマンションを手掛けており、全ての物件にアート作品が設置されるので、AACで最優秀賞を逃しても、条件が合えば別物件に採用される場合があるという。また、大学卒業後に新規で制作依頼をしたケースもあり、コンペでの縁が将来の活動につながるなど可能性が広がっている。

  • 2006年優秀賞「時空ピラミッド」
    2006年優秀賞「時空ピラミッド」
    北川 太郎(愛知県立芸術大学大学院)
  • 2007年優秀賞「ゆるり」
    2007年優秀賞「ゆるり」
    井川 彩子(東京藝術大学大学院)
  • 2009年優秀賞「立つこと」
    2009年優秀賞「立つこと」
    本郷 芳哉(東京藝術大学)

Nakagawa Chemical

INDEX

恒久的に残る作品を作る喜び

VOL.1

恒久的に残る作品を作る喜び

マンションの顔となるアートの要件

VOL.2

マンションの顔となるアートの要件

プロとしての第一歩を踏み出すために

VOL.3

プロとしての第一歩を踏み出すために

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アート・ミーツ・アーキテクチャー・コンペティション(AAC) / 株式会社アーバネットコーポレーション

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