Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 窪田建築都市研究所・窪田茂

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 窪田建築都市研究所・窪田茂

2012/12/12 UPDATE

VOL.2 「今治タオル 南青山店」

タオルが主役になる空間

2012年6月、表参道のFrom 1stにオープンした「今治タオル 南青山店」は、今治タオルプロジェクトのクリエイティブディレクターを務める佐藤可士和さんから、直接声をかけていただいてスタートしました。

ここで取り扱われるのは、今治タオルとして一定の基準を満たしている証のオリジナルタグがついているタオル。もちろんタオルが主役になるわけですが、四国タオル工業組合の23社が手がける600種類以上ものタオルをどう見せればいいのか。可士和さんと話をしながら、まず格子のような棚をつくろうというアイデアが生まれました。

窪田茂
「まず格子のような棚をつくろうというアイデアが生まれました」

シンプルで繊細な日本らしさと、格子パターンの組み合わせです。つまり、ミニマムな材料でミニマムなデザインにしよう、と。どこまで部材を繊細にできるか、探りながら進めていきました。
最初は、20ミリ幅の柱と板で構成し、自分たちでサンプルを作ってみたところ、ちょっと太い感じだったので、もっと細く、18ミリ角にしてほしいと依頼しました。加えて、組子のように18ミリの柱と棚板の両方に切り欠きをいれて、組み合わせるようにしたい、と。

さらに7メートルの壁面全体を1体にしたいから、その精度で作ってくれと依頼したら、『それは到底できない』と木工所に断られてしまって(苦笑)。実際、人の手で作るものなので、一番上と下の組み合わせ部分が1ミリずれただけで全体が傾いてしまいますからね。遊びが作れないので、相当な精度で仕上げなければならない。断られるのも当然なんです。

でもあきらめきれずに、設計変更や調整を重ねながら、なんとか作ってもらうことができました。しかも、釘を1本も使わずに、ホゾを作って組み合わせる、理想的な形です。繊細で、作り方も見た目にも日本的な棚は、タオルのための完璧なしつらえになりました。途中で何度もスチールや他の素材にしようかと考えましたが、木の枠がベストです。何カ所か継ぎが入っていますが、たわみが全く出ず、白いタオルを最高に引き立てる壁面が完成しました。

何度も調整を重ねて実現したシンプルで繊細な棚で日本らしさを表現
何度も調整を重ねて実現したシンプルで繊細な棚で日本らしさを表現

0.1ミリ単位のデザインを

18ミリ幅の柱と板で作った棚でも苦労しましたが、もうひとつ大変だったのが店内中央に設置したテーブルです。長さが5メートルあるのですが、実はひと続きで作っているんですよ。
機能としては、真ん中のテーブルでタオルを大きく広げ、寸法や柄を確認しながら買物するための場所です。タオルの洗い方などのセミナーをすることも計画していると聞いたので、テーブルを囲めるよう、下にベンチ状の台を作って、引き出して使ってもらえる工夫をしました。
既存の内部空間には手を入れず、無駄な設備を取り払っただけで、ほとんどそのまま白く塗装しました。サッシなど見せたくないところは壁で隠していますが、良い意味での緊張感が出ていると思います。とにかくミニマムな仕上がりです。

継ぎ目のない5メートルのテーブル
継ぎ目のない5メートルのテーブル

特に棚のピッチやテーブルは、製作できる高さが決まっていたので、図面上で0.1ミリ単位のシミュレーションを繰り返しましたね。強度の問題や、使い勝手や動線の検討も加え、スタッフがタオルをパッキングするスペースを確保したり、包材をしまっておく場所を細かく設定したり、人が座ることを考慮したり…。
図面では、棚数やトレイの数、椅子になる場所の設定、商品名や価格を掲示するPOPまで地味に細かく何度も描き直しながら検討しました。僕らの図面は意外と細かいですよ(笑)。

使い勝手を考え、シミュレーションを繰り返した棚のピッチ
使い勝手を考え、シミュレーションを繰り返した棚のピッチ
精巧な模型で仕上がりをイメージ
精巧な模型で仕上がりをイメージ

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

「メルセデス・ベンツ コネクション」

VOL.1

「メルセデス・ベンツ コネクション」

「今治タオル 青山店」

VOL.2

「今治タオル 南青山店」

Vectorworksの便利な機能

VOL.3

Vectorworksの便利な機能

企業情報

空間を扱うデザイナー、設計者にはお馴染みのVectorworks。Vectorworks2012は、Designer(デザイナー)、Architect(アーキテクト)、Fundamentals(ファンダメンタルズ)の3種。全てレンダリング用のRenderworksを伴ったシリーズがあり、仕事の領域によって選択できるようになっている。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2012/

企業情報

エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)

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