Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 文田昭仁デザインオフィス・文田昭仁

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 文田昭仁デザインオフィス・文田昭仁

2012/08/01 UPDATE

VOL.3 「DCMX SITE + SMBC」の場合

3Dと図面で複雑な立体を作り上げる

「DCMX SITE + SMBC」の特徴は、複雑な形状の天井でしょう。DCMXは当時のNTTドコモが始めた新しいカードビジネスで、Xは“未知なるもの”、これから拡大して成長していく期待を込めたXでもある、とオリエンテーション時にうかがったので、空間も固定されすぎず、こじんまりと収まらない感覚を大事にしました。

アイデアはすぐに浮かびましたが、本当に作れるかどうか…スケッチしたものがそのまま具現化できれば問題ありませんが、実現性を最初から考えなくてはなりません。最終的にうまくいきましたが、振り返ると、手描きの時代には断念したかもしれないな、と思うデザインですね。

ラフなスケッチをベースに、まず物件全体の3Dを作ってもらってアイデアが成立するかどうか確かめる、という普段とは少し違ったアプローチで進めました。図面にあたり線を入れながらバランスを見極め、また修正する。複雑な天井の形を実現するために、通常であれば手描きスケッチで検討する段階から3D化して、成立する根拠を持ちながら形のバランスを考えつつ、変更していく方法です。

複雑な天井の実現はCADあってこそ
複雑な天井の実現はCADあってこそ

施工業者へ伝える方法も工夫しました。より具体的に伝えるために用意したのは、CTスキャンのような、90センチごとの断面図です。直感的に分かりやすいようにパーツごとに色分けして確認しながら作成していきました。それら約83枚の断面図を、天井伏図と対応するように作成し、斜めのパーツが重なり合っている状態を表現しました。今見ても、普通はこれ、作りたいと思いませんね(笑)。

施工時には、あらかじめ軽量鉄骨を溶接して組み上げた骨組みを搬入し、現場でさらに組み立てていきました。天井から吊るのですが、現場に入ってみると(まあ、これもよくあることなのですが)図面には描かれていない部材や設備があり、場所を調整したりしました。

僕が金物に対して厳しいことは施工業者の方々も良く知ってくれているので、それに応えるべく、細かい部分までチェックします。そうした現場には、どれだけマニアックな注文をうるさく言っても、難しい注文にこそ応えてくれる職人さんがいるもので、そういう人と出会えると僕もノリノリになりますね(笑)。

このときは、複雑な天井のデザインということもありましたし、スケッチを描いて検証する時間もあったので、CAD図面の描き直しも多かった方だと思います。施工図面は施工業者さんに改めて引いてもらいます。施工を担当する立場の方が描くことによって、設計意図の理解も深まり、施工上の疑問点が明らかになることもありますので、必要な役割分担だと思います。

什器のディティールはCADで追い込み、施工へとつなぐ
什器のディティールはCADで追い込み、施工へとつなぐ

手描きと併用してこそ活きるVectorworks

ツールとしてVectorworksを選んだのは、1997年にMacを導入した当時、仕事仲間やインテリア関係の人たちの間ではすでにVectorworksが定着していたから自然な流れでした。

正直、僕自身ではなくてスタッフのほうが使いこなしてくれています(笑)。僕の事務所に入ってくるスタッフは、学校でもVectorworksの基本を学んでいるからすぐに使いこなしてくれていますね。他にはIllustratorとPhotoshop、3DソフトはformZを使っています。

Vectorworks

スタッフにも手を動かすのは大切だと常々言っています。たとえば、『ここの部分どうしましょう?』と質問されたら、『どこを聞きたいのか手描きで説明してみて』と言います。『ここをどう収めたらいいかわからない』という場合には、『何が問題だと思っているのか、絵に描いて僕に伝えて』と。そうすることで描く力や説明する力がつきますし、もっとリアルに理解することもできるはずです。

僕も新人のときは、先輩に言われた図面を描いて、間違いを指摘されて直すことを繰り返していました。単に正確な図面を早く仕上げるだけなら外部ブレーンに発注すればいい。CAD図面を描くのは成果物を作ることだけが目的ではないと考えています。

基本のデザインはFUMITA DESIGN OFFICEとして僕自身が手がけますが、それをブラッシュアップするプロセスはスタッフに委ねる面もあります。最初からVectorworksで描いて進めた方がよいものと、いちど手を通して立体的に把握してから進めた方がよいものがあると思うんです。いまの時代には、その両方を使いこなすのが理想形ではないでしょうか。

ビンテージマンションをリノベーションしたFUMITA DESIGN OFFICE
ビンテージマンションをリノベーションしたFUMITA DESIGN OFFICE
文田昭仁

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

イメージ、スケッチ、CAD図面の一体感

VOL.1

イメージ、スケッチ、CAD図面の一体感

「CORE JEWELS」の場合

VOL.2

「CORE JEWELS」の場合

「DCMX SITE + SMBC」の場合

VOL.3

「DCMX SITE + SMBC」の場合

企業情報

空間を扱うデザイナー、設計者にはお馴染みのVectorworks。最新版の2012は、Designer(デザイナー)、Architect(アーキテクト)、Fundamentals(ファンダメンタルズ)の3種。全てレンダリング用のRenderworksを伴ったシリーズがあり、仕事の領域によって選択できるようになっている。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2012/

企業情報

エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)

TEL:03-3518-0131 / FAX:03-3518-0122
http://www.aanda.co.jp/