Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 文田昭仁デザインオフィス・文田昭仁

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 文田昭仁デザインオフィス・文田昭仁

2012/07/25 UPDATE

VOL.2 「CORE JEWELS」の場合

初のショールームに期待する想いを具現化する

よくクライアントから出されるキーワードに、<クラシックと未来的なスタイルの融合>があります。僕のデザインは未来的なイメージを抱かれることが多く、そこにクラシックなセンスを掛け合わせるとどうなるんだろう、と期待してくださる方が多いのだと思います。「CORE JEWELS」のケースもそうでした。

初めてお引き受けするクライアントでしたので、いきなりデザインに取りかかる前にいろいろな話をしました。「CORE JEWELS」にとって初めての直営店なので、クライアントは迷いや不安もお持ちでした。

文田昭仁

こうした場合は特に、細かく話を聞きながら、どのような空間を目指すのか、あらゆる方向からアイデアを出し、相手の意見に耳を傾ける時間が大切です。かなり具体的な希望を持っていらっしゃるクライアントもいれば、まったく白紙の状態で依頼される場合もあります。「CORE JEWELS」はモノを作っている集団で、若い人たちの集まりでもあったので、デザインに強い思い入れをお持ちでした。

最終的に白っぽい空間に仕上がっていますが、「CORE JEWELS」の主力商品がブラックダイヤモンドを使ったジュエリーなので、当初は真っ黒くするアイデアもありました。
店舗がある建物のエントランス部分は、地下1階からの吹き抜け構造になっていて、その中央にブリッジがかかり、お客さまはそこから入店してきます。吹き抜けとは言っても階層の間はガラスブロックで仕切られていて、雨風を防ぎ人の気配も中和しつつ、上下階に光だけ拡散する仕上げです。この建物の1Fが物件でした。ブリッジを中心にしたシンメトリーな配置となっており、左右2つに分かれた両方の区画を使うことが条件でした。そこで、水回りを含めて「コ」の字型の区画と考えて、3方の壁を生かす方向でデザインを検討していきました。

什器の細部まで、Vectorworksで描き込む

ある段階までデザインが固まってきたら、具体的な家具や什器を含めて平面図と展開図の両方を描いていきます。このときは、蓋が回転して開閉するドラム状のショーケースや、クラシックな要素を肥大化させてシンボリックにしたケースを特別に作る、などの提案をしました。

提案とはいえ、図面になったらそれは実現可能という意味です。後から『実はできませんでした』は許されません。ですから、どうやったら作ることができるのか、特殊な素材を用いるのだったらどこまでが現実的なのか、あらかじめ工務店や施工業者に相談しておきます。

最終的に、菱形のモチーフをデザインのポイントにすることに決めました。それをカウンターの腰の部分に入れたり、照明の演出で表現したり、といった具体案を加えていきました。

今回の物件は、天井がとても低くて(編注:スラブ高2470mm)、設備を仕込むことができず、空調機器は家庭用の壁掛けエアコンを設置するしか選択肢がありませんでした。でも、ブラックダイヤモンドを扱う店舗に、壁掛けエアコンはふさわしくありません。

菱形をモチーフにしたシンボリックなデザイン
菱形をモチーフにしたシンボリックなデザイン
天井をわざと下げ、照明や空調設備を収めた意匠
天井をわざと下げ、照明や空調設備を収めた意匠

そこで、壁面の隆起しているデザインをそのまま天井にも反映させ、部分的に天井をわざと下げて、その斜めのラインとカウンターの側面に施したデザインや壁面のでっぱり部分が呼応するような形に設計しました。そのでっぱりに、照明や空調設備等を収め、結果的に壁面と什器の多面体が表現するシンボリックなデザインになったと思います。

「CORE JEWELS」は、受注から竣工までは約4カ月(2010年7月から10月)でした。平均的には受注から3カ月程度で竣工を迎えることが多いです。

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

イメージ、スケッチ、CAD図面の一体感

VOL.1

イメージ、スケッチ、CAD図面の一体感

「CORE JEWELS」の場合

VOL.2

「CORE JEWELS」の場合

「DCMX SITE + SMBC」の場合

VOL.3

「DCMX SITE + SMBC」の場合

企業情報

空間を扱うデザイナー、設計者にはお馴染みのVectorworks。最新版の2012は、Designer(デザイナー)、Architect(アーキテクト)、Fundamentals(ファンダメンタルズ)の3種。全てレンダリング用のRenderworksを伴ったシリーズがあり、仕事の領域によって選択できるようになっている。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2012/

企業情報

エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)

TEL:03-3518-0131 / FAX:03-3518-0122
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