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12カ月のパリ
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第5回
SALON DU MEUBLE 2003
(家具見本市)

 update 2003.02.12
レポート : 浦田 薫 / アート&デザインジャーナリスト 



今回のレポートは、2003年1月の、SALON DU MEUBLE 家具見本市 (1月9日〜13日) と、MAISON&OBJET メゾン&オブジェ (1月24日〜28日) が主催する賞を受賞したフランス人デザイナーに焦点を当ててご紹介する。

SALON DU MEUBLE 2003
RONAN et ERWAN BOUROULLEC " PRIX du CREATEUR 2003 "
2003年クリエーター賞は、ブルレック兄弟が受賞 ───


ブルレック兄弟 ポートレート

1983年より設けられたクリエーター賞は、建築家やデザイナーを奨励し、今年で20周年を迎える。記念するべき節目に、兄弟でデザイナー活動を続けるロナン(兄)とエルワン(弟)・ブルレックが受賞した。
このほど、ギャラリー・クレオから10年間 (兄ロナンの単独期間も含めて) の2人のデザインワークにおける歩みをまとめた本 " Ronan et Erwan Bouroullec Catalogue de raison "が出版されたばかりである。写真、スケッチ画、そして簡単な説明が、年代毎に分かり易くレイアウトされており、カタログのような構成である。どうもデザインに関する著作は、プロフェッショナルを相手にしている場合が多く、アマチュアには意味不明な用語が、本を読みづらくしてしまう。しかし、この1冊には、2人のデザインに対する思考や姿勢が要約されている。確かに、短期間のキャリアで VITRA , CAPPELLINI , MAGIS といった大手家具エディターと中身の濃い仕事をしてきただけに、シンプルな言葉と構成が確固たる光を放つのも当然であろう。

さて、会場内のブルレックのブースとは、一体どんな空間なのだろうか?
SAWAYA&MORONI のハイスピリットな床から照明を当てたフラットなブースの隣で、ポリスチレン素材のモジュール棚が、商品名 " Nuage "(=雲) の表現そのままに、高々と眼前に現れてくる。色は素材の白一色。ハチの巣状の円部分から、始終記者のインタビューを受けるロナンを、会期中に垣間見ることができた。その裏手では、デザイン画をロートリングで描く映像が投影されている。 " Nuage "のみの展示方法にも説得力がある。
デザイナーを取り囲む区域は、METROPOLE (メトロポール) と呼ばれており、クリストフ・ピエがデザイン誌 INTERNI の編集長ブリジット・フィットゥツィーと監修している。ポイントになる4つのブース(各400平米程)に、"住居の新しい形態"というテーマを、5人のデザイナーに与えている。


INSIDE HOUSE 

"LOVE OVER ALL" Fabio NOVEMBRE (ファヴィオ・ノヴェンブレ)
"水と光の建築" Claudio La Viola・Mario Nanni (クラウディオ・ラ・ヴィオラとマリオ・ナニ)
"基準サイズ外のキッチンとバスルーム" Carlo Colombo (カルロ・コロンボ)
"記憶と夢の間、ルネッサンスの庭園" Vittorio Locatelli (ヴィトリオ・ロカテリ)
こうしたモニュメント的な空間が、小刻み配列のブースのイメージを和らげている。

とりわけ、ブルレック兄弟の基調色白の空間は、疲れた目を癒す。
2002年末には、VITRA社とコラボレーションしたオフィス家具+空間プロジェクトも発表された。どんな空間にでも適応する家具の提案であるのだが、オリジナリティーのポイントとしては、ユニットという概念ではなく、コンビネーションを多様化させた、空間全体を一つのまとまりで考慮したことだろう。Issey MIYAKE のコンセプトショップも注目されたが、ロンドンのデザインミュージアムにおいても、回顧展を開催したばかりである。パレ・ド・トーキョー美術館 (パリ) に、AUDIO LAB という音響システムもデザインした。そして、ギャラリー・クレオはクリエーションを展示する楽しみの場であるとも言う。

フランスデザイン界の柱的な存在であることは否定しないが、まだまだ成長期の真只中にいる2人は、メディアからの雑音に耳を傾けながらも、ひっそりとデザイン作業に没頭していたいのであろう。
既に、英国出版社PHAIDONからも2冊目の出版が予定されている。


JOYN オフィスシステム・VITRA社・2002

JOYN オフィスシステム・VITRA社・2002


※画像は全て、SALON DU MEUBLE プレス提供


家具見本市ブース・2003年1月


NUAGE モジュール・ポリスチレン素材・105×187.5×40(cm)・2002


NUAGE モジュール・ポリスチレン素材・105×187.5×40(cm)・ルクセンブルグ近代美術館・2002


照明器具・CAPPELLINI・1999


枝で自由自在につくる小屋の壁面・ポリプロピレン素材・2002




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