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12カ月のパリ
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第2回 (2)
Frédéric Ruyant à Vallauris

 update 2002.11.13
レポート : 浦田 薫 / アート&デザインジャーナリスト 



Frédéric Ruyant (フレデリック・リュアン) とは、誰?
フランス新鋭デザイナー。
哲学の勉強の後、建築家 Gaetano Pesce (ガエタノ・ペーチェ) のアトリエで数カ月を過ごす。1987年に建築学校を卒業。1996年には、パリ照明器具見本市でランプ “Eclipse” (名前の通り、日食の原理をコンセプトとしている) で受賞し、商品化される。1998年、三宅一生のブランド Pleats Please パリショールームの家具をデザインした。その後、量販デザインを受注、フランス工業家具振興会よりバックアップを受ける。文部省からの奨学金を得て、「直線状の家具」をテーマに、家具と空間の新しい在り方について研究をする。


左から RUYANT , AIELLO , FEVRE

今世紀の活動としては、フランス広告代理店のミーティングルームの家具、フランス赤十字本部の家具のデザインを手掛ける。赤十字支援のためのグッズも展開し、セレクトショップ COLETTE (コレット) で販売された。今年は、Galerie Sentou (ギャラリー・サントゥー) で個展を開催し、“dining suite”、つまり食事空間の提案をした。公的機間からの注文も受けており、2003年のパリ家具見本市では、VIA (フランス家具振興会) の招待デザイナーとして、「生活のための空間」をテーマに作品を展示する予定である。

Vallauris (ヴァロリス) とは何処?
ここは、フランス南部地中海に近い町である。1950年代には、PICASSO も滞在し、数々の作品を育み、世に誕生させたローマ時代から秘伝の陶器で栄える。しかし、近年においては、特に観光客を引き寄せる魅力も失われ、町の活気もなくなり、かつて栄えた時代は過去のこととなった。

デザイナーとVallaurisの関係は?
そんな、過去の栄光と語り継がれていかなくてはならない秘伝と技術を世間にアピールするために、町と文部省が行動にでたのである。
1998年より、毎年2名のデザイナーが選出され、食を用途とした陶器を現地の職人と共に制作するプロジェクトを実行した。
2002年のデザイナーは、Patrick Jouin (パトリック・ジゥアン) と Frédéric Ruyant。両方ともフランス人である。今年の東京デザイナーズブロックでは、TOYO KITCHEN と IDEE で作品の一部が紹介され、記憶が鮮明な方もいることであろう。
Frédéric Ruyant は、6点の陶器と3点の家具を展開した。リバーシブルな造形を表現しているのだが、決してそれが一目ではなく、用途においても二重性が隠されている。シンプルな造形と線によって、隠されたメッセージが各々の立体に集結されている。

今回の作品は、Maestro (=巨匠) と呼ばれている職人 Claude Aiello (クロード・エヨ) の支援なしでは、実現することができなかった。Frédéric Ruyant は、Maestro が土と触れる手作業を観察しながら、伸縮やたわみ、変形を意図的に造形に取り入れていくことに思い当たる。
デザイナーが職人と作業できる環境に巡り会えたことで、造形への訂正や追加が即実行に移せるのである。
そして、Frédéric Ruyant は、こうコメントしている。
「オブジェを作成したことよりも、代々受け継がれてきた Maestro の仕事と出会い、作法により原材料がオブジェに変身していく過程に参加できた実感が、何よりも手応えがあった。」


直射日光や風を避けるため、アトリエ内は暗く、湿っぽい。


11月中旬まで展示予定のパリ市内 Galerie Gilles Peyroulet & Cie にて


Galerie Gilles Peyroulet&Cie 外観より


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