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ミラノ - Life is design -
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第12回
イタリアン O・RI・GA・MI

 update 2004.01.28

レポート : 上田敦子 / インテリアコーディネーター 




折り紙 ── 小さい頃に誰かに教わりながら、鶴やかぶとを折った経験を皆さんもお持ちのことだろう。今、突然折り紙を折るとなると、正直な所折り方を忘れてしまっている。日本の伝統的な遊戯の一つでもあり、一枚の紙から生まれるそのデザインに、また使われる紙の美しさに外国に住む方が喜ばれるものの一つでもある。私達の考える折り紙というと手のひらサイズの小さい紙を使って作る箱や鶴などの動物、とりわけ折鶴のイメージが思い浮かぶのではないだろうか。クリスマスの前に訪れたある展示会で折り紙を発見した。しかも作っているのはイタリア人の女性であり、日本の文化の一つを題材にしている彼女に興味を持った。今回はその彼女Luisa Canovi(ルイーザ・カノーヴィ)さんの展示会の模様を報告したいと思う。【写真 1 】

クリスマス前のここミラノでは、あちこちでいろいろなMostra(モストラ=展示会)が行われる。洋服・帽子・アクセサリーなどデザイナー本人が作った手作りのものが多く、クリスマスプレゼントに向けての展示販売会でもある。今回ご紹介する展示会も全て手作りのものばかり。フェルト素材のかばん、帽子、くつ、アクセサリー、紙を使った作品といったように、私達に身近に感じられる作品が一堂で展示されていた。初日の夜はちょうど金曜日で夕方6時からのスタート。知り合いの方に連れられて行ったこの場所は、ナビリオ運河(骨董市などが開かれるミラノの下町、第9回レポート『骨董市の中のイタリアンデザイン』を参照下さい。)の近くで、古くからのミラノの風情を残すアパートが建ち並ぶ地域。訪れた時間はちょっと遅くて夜7時半を過ぎていたのにもかかわらず、中には作品を見る人たちが・・・。入り口付近にはスプマンテ(イタリアのシャンパン)とパネットーネ(ミラノのクリスマス時期に食べるケーキ)などが並ぶ、アペリティーボコーナーも設けられていた。小さな工房の展示会も、自分達で飲み物やケーキなどを用意したり、友人が持ってきてくれたりして作品を見ながらちょっとしたパーティータイムになる。

会場となっていたのは、彼女達が普段仕事をしている工房。今年で9年目になるというその工房で、ルイーザさんはお客をもてなしていた。笑顔の優しい、温かさを感じさせる彼女である。彼女が折り紙を始めたのは、ベネツィアの美術学校の時から。室内装飾のコースで紙を使ったことがきっかけとなり、その後本などを見てほとんど独学で学んだという。

彼女の折り紙のデザインは、私達が考える「折り紙」とは少し違い、モダンな折り紙とでも言おうか、現代的なデザインである。アンモナイトを思わせるやわらかいカーブのついた作品は、現代アートのようでもある。彼女は、そのデザインを考える際に、バウハウスの理論や、造形作家であり、彫刻家、またグラフィックデザイナーでもあったBruno Munari(ブルーノ・ムナーリ)のデザインからもヒントを得ていると言う。なるほど、彼女の執筆した折り紙の本の中にあるオリジナルデザインのページには、紙を折ることで作られていく形が、計算されてデザインとして示されている【写真 2〜3 】。紙を曲げることにより平面の面が立体に変わっていき、その立体の構成で、また新たな形が生まれる。例えば、アルファベットの文字が立体的に折り紙によって作られていく、といった具合だ。使用される紙も、日本の折り紙のような小さい柔らかな紙から、100%綿素材の、厚みがある手作りの紙まで様々である。また、大きな作品だとA1サイズまでの紙を使用する。日本の“こうぞ”なども使用するが、イタリアでは手に入りにくいのと高価な為、ほとんどはイタリア製のものだという。




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【 1 】 Luisa Canovi(ルイーザ・カノーヴィ)さん。笑顔の優しい方である。

【 2 】 ルイーザさんが執筆した折り紙の本。

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【 3 】 折り紙の中の1ページより。モダンな折り紙の作品。

04.jpg
【 4 】 折り紙の箱の作品。



【 5 】 折り紙を使ったオーナメント。
【 6 】 折り紙の箱の作品。
【 7 】 工房内の折り紙のディスプレイ。
【 8 】 素材に紙を使ったお皿。




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