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ミラノ - Life is design -
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第9回
骨董市の中のイタリアンデザイン

 update 2003.10.22
レポート : 上田敦子 / インテリアコーディネーター 




毎週日曜日、ヨーロッパの他の都市の例にも漏れずミラノのお店は全て休みである。最近でこそスーパーマーケットが日曜日も営業を始めたが、それも全てではなく午前中だけ営業という店も多い。それ故日曜日というのはとても退屈だ。カトッリック教徒でもなければ教会のミサに行くわけでもなく、日本と違って日曜日に買い物に・・・ということは出来ない。そんな日曜日だが、毎月の最終日曜だけはささやかな楽しみがある。Naviglio(ナヴィリオ)運河沿いで開かれる骨董市があるからだ。


ナヴィリオと呼ばれるこの地域は、市内の南に位置し、ミラノの中の下町といった風情を今も残している所である。さながらミラノの中の浅草といったところだろうか。運河をはさむ両側には、昔からのたたずまいを残したアパートが建ち並ぶ。ミラノの中でも人気の地区でバール、ピッツェリアやトラットリアが多く並び、夜や週末ともなると多くの人で賑わいを見せる地域である。


このナヴィリオ運河をはさむ界隈で市は開かれる。当日市の開かれる道路は歩行者天国となり車が進入禁止となる。日曜日の散歩を兼ねてこの骨董市を訪れる人も多い。アンティークの家具、ガラス製品、食器類、絵画、カーペット、古着、古本や新聞・・・古いものならなんでもござれといった感じで、いろんなものが出展されている。本当に珍しいものもあるのだろうが、なかには本当に古いだけのただのがらくたと思われるものもある。・・・が、なんといってもイタリア人は古い物好き。みんな真剣に物色している。


一見ガラクタの山と思しきお店に、50年代や60年代のイタリアンデザインが埋もれている。今回訪れた9月28日にも、いくつかの発見があった。まず、その色と形で目に飛び込んできたのは Olivetti(オリベッティ)社の赤のタイプライター 【写真 1】 。ひときわ目立つのは、その鮮やかな色彩のためでもある。『Valentine』ヴァレンタインと呼ばれるこのモデルは、Ettore Sottsass(エットーレ・ソットサス)のデザイン(1968年)。この日の目玉だったらしく、店主は一番先にこれを勧めてくれた。このタイプライターには、持ち運びのための同じ赤のプラスチックケースもある。店主はお披露目してくれた後、大事そうに又そのケースに戻してしまった。ソットサスはオリベッティ社のデザイン顧問をしていた。80年代に彼が率いたデザイン集団『Menfis』メンフィスが存在したが、そのなかでも彼のデザインしたものには一種独特の癖のあるものが多い。このヴァレンタインのタイプライターは、形よりもその色彩である赤が何よりそれを表している気がする。そして隣には、同じくOlivetti社の『Lettera32』レッテラ32、Maurizio Nizzoli(マウリツィオ・ニツォーリ)のデザインのもの(1963年) 【写真 2】 。少しくすんだオリーブグリーンの色が、工業デザインながら60年代の香りを残している。双方のタイプライターは、もちろん使用可能である。





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【 1 】 OLIVETTI(オリベッティ)社のタイプライター、VALENTINE(バレンタイン)というタイプ。デザインはEttore Sottosass(エットーレ・ソットサス)〈1968年〉。販売価格は150ユーロ。

【 2 】 同じくOLIVETTI(オリベッティ)社のタイプライター、こちらはLETTERA32(レッテラ32)。デザインはMarcello Nizzoli(マルチェッロ・ニッツォーリ)〈1950年〉。50ユーロ。

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【 3 】 GUZZINI(グッチーニ)社の照明。2つで150ユーロ。

【 4 】 GUZZINI(グッチーニ)社の照明。かさの部分が開閉し、その内部に電球を入れるようになっている。




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