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第12回 (2)
レオナルド ダ ビンチの馬




ご覧のようにこの馬の表情は、穏やかで知的な馬のそれとは違い、荒れ狂う馬の表情をしており、体全体の筋肉の付き方その躍動感あふれる様も含め、まさに野生の馬そのものといえます。なぜレオナルドはこのような表情にし、野性的な馬にしたのかは分かりませんが、2次元に収められている時よりも、立体に起こした時の方が、さらにこのスケールが、この銅像(この絵)の持つ本来の迫力を倍化していることは確かです。ひょっとするとレオナルドは、野生の馬の持つ力強さや生命力を見抜き、現代に再立体化されることまでも見越して観察していたのかもしれませんね。





レオナルドの凄さは当然として、これを現代に起こした人たちの技術力も見逃すことはできません。前にも書いたように、数の少ないスケッチを立体に起こすことはとても大変です。その絵の持つ本来的な意味を失うことなく忠実に再現するためには、多くの模型を作成しなければなりませんし、原作者がこの世の人ではないので確認を取ることもできない状況で、多くの時間や、制作する上でのスケッチ、時には制作者なりの解釈が必要だったのでしょう。
そして、巨大な銅像の作成には、各パーツを作成して後から合体させると言う手法が使われました。これは、一気に全体を作り上げることはその大きさからも困難であるために採用されたのでしょう。これらのパーツ一つ一つも大きく、制作中の作業風景や銅像の型も展示されていました。












お話したように、この“レオナルドの馬”は、制作に至るまでの歴史などもあり、見る上でも興味深いところがたくさんあります。しかし、皆さんももう写真をご覧になってお分かりと思いますが、展示の方法が余りにもお粗末だと思いませんか? あの馬の表情をただ呆然と見上げるより手立てがなく、ポツンと屋外環境に置かれたことにより、その強調されるべき芸術性が失われ居ると思いませんか?
しかも、設置されているこの場所は、競馬場の敷地内です。なんともとってつけたような話で、ただ置いただけのような展示の仕方も含め、もったいないように思えてならないのです。きっとこのことには何か政治的な理由もあるのでしょうが、なんとも言いがたい感じがします。

この銅像がレオナルドの手によるものではなくそのレプリカと言うこと、さらにあの色(銅像なのでブロンズで言いのですが・・・)による圧迫感、そして大きさからくる展示場の確保、資金ぐり。等々、推測で考えると、このような不遇の扱いを受ける理由が思い当たります。ただ、あの展示の仕方では、ミラノの中心部に置いたとしても、ミラノ市民に受けいれられずに、きっと早々と撤去されたでしょう。

これが、屋内の大きな空間、または半屋内のところに設置し、その像全体を見れるような通路などを設けた展示として、ストーリーも分かるように構成したのであれば、きっともう少しまともな扱いを受けるのではないかと思います。それだけの価値が、この銅像にはあると思いますが、残念ながらそうは思われていないようです。

なぜこの像をレポートしたかと言うと、どこの世界でも同じだとは思いますが、現代では、作品よりもその情勢や資金といったものに、多くの事柄が決定されているように思えるからです。そんな中で、本当のものを見極める目。自分が良いと思えるものを見定める判断基準。そういうものがこれからの時代に必要ではないかと思い、ちょっと風刺的にこの題材を選びました。













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