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ミラノサローネ特集 2009
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桐山登士樹+西中川 京 レポーター

桐山登士樹
Toshiki Kiriyama
デザインディレクター 株式会社TRUNK代表、富山県総合デザインセンターデザインディレクターを兼務
JDN関連コーナー
「桐山登士樹の注目デザイン&デザイナー」

桐山登士樹+西中川 京 レポーター

西中川 京
Miyako Nishinakagawa
株式会社TRUNK勤務。 展覧会 / セミナーのキュレーションとコーディネーションを担当。
桐山登士樹+西中川 京 ミラノサローネレポート



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24年目のサローネで思った事
ロンバルディア州は世界の家具産地の中でもっともインフラが整備された場所です。家具・部品メーカーが半径50キロ圏内に集積し発展してきました。ミラノはイタリアを代表する経済都市として多くのビジネスマンが往来しています。当然世界中の著名な建築家・デザイナーは、自らのデザインを商品化するためにミラノを訪れます。情報を生命線とするメディアも同様です。この様な条件を持つ産地は他にはありません。
ミラノサローネがこうした背景を受けて、長い歴史を刻み世界的なデザイン発信の拠点となりました。事実、さまざまなデザイントレンドが生まれ、多くのデザイナーを排出してきました。しかし最近、投資家によるコングロマリット化やM&Aにより、イタリア企業は大きく変貌しました。
こうした流れが顕在化した最近のサローネは、かつての経営者とデザイナーのコラボレーション形態からビジネススタイルの一部としてデザイナーが使われる様になりました。この事がサローネをつまらなくしています。 今年も多くのデザインが発表されました。もちろん新しい芽を見いだす事は出来ますが、総体で捉えるならメーカーもデザイナーも迷いがテイストになって現れています。そこでデザイナーはもっと賢くならなくてはなりません。その一つのヒントとして、1919年混迷の中から生まれたバウハウスです。この独立宣言でグロービウスは「あらゆる造形活動の最終目的は建築である。」と唱えました。既にモノの力だけで勝負する時代ではありません。取り巻く構成要素を含めデザインをもう一度考え直す時期です。
5年前に手がけた「LEXUS L-finesse」は、欧州ではZEN的ジャパンスタイルとして定着しました。今年は、更に高度に企業と生活者との距離感をデザインする事を考え「Canon NEOREAL」をプロデュースしました。また、今年初参加の東芝の「Overture」は、私的には最高ランクの展開でした。今後もサローネがデザインの祭典として高いポテンシャルを維持していく為には、新たなスキームが必要です。その為にもデザインを生業とする人はミクロマクロの視野角を是非持って欲しいと思います。

次号で詳細について触れます。
概要
昨年10月から続く世界的な不況の中、開催された2009年のミラノサローネ。新たに開発されたデザイン数は例年と変わらないように思われたが、展示設備や什器の簡素化や見本市への出展を急遽取り止め、市内のスペースやショールームでのみ展示を行なうブランドが多数出るなど、不況の影響によるデザイン業界の現況を垣間みるものとなりました。
過去10年に渡り、イタリアデザインを牽引してきたKartellとCappelliniが、それぞれ‘What a wonderful world‘、’magic‘という言葉を今年のコレクションのメッセージとしたように、各メーカーそれぞれにその健在ぶりをアピールする前向きな言葉をプレスリリースに並べたが、同時にそれはそうあって欲しいというメーカーや業界全体の希望や期待を代弁したものであることは明らかです。
コレクションに関しても、不況時に多くみられる「ブランドイメージを表現するコンセプチュアルなデザインのライン」、「確実に売れるスタンダードなライン」とをコレクションの中で整理する戦略が多くのメーカーでとられていました。 よって今年のデザイン傾向もその戦略に追随するものとなっています。とはいうものの昨年がミレニアム以降からのデザインから新しいデザインへの過渡期であったとすれば、今年は昨年出された新しいデザインの方向へ更に歩を進め、それぞれの方向性において、より分かりやすく、よりダイナミックな表現となって登場しました。
A Girl's Dream
昨年からひきつづきパステルカラーは人気色であるが、今年はフォルムや素材もより繊細で強烈。少女が空想の中で遊ぶ世界を具現化しているようなデザインが多く登場した。押し花や丁寧に表された小花やシェルなど女性を象徴し、かつ女性の心をくすぐるモチーフも多用された。
MOROSO/ joy/ Edward van Vliet
MOROSO/ joy/ Edward van Vliet
Kartell/ bloom/ Ferruccio Laviani
Kartell/ bloom/ Ferruccio Laviani 小さなお花のピースを沢山組み合わせたフェミニンなデザイン
Edra/ Cipria/ Fernando & Humberto Campana
Edra/ Cipria/ Fernando & Humberto Campana
Bd Barcelona Design/ Tout va bian/ Antoine + Manuel
Bd Barcelona Design/ Tout va bian/ Antoine + Manuel 立体的なパターンが全体に施されたキャビネット
MOROSO/ flower table/ Tord Boontje
MOROSO/ flower table/ Tord Boontje
Sawaya & Moroni/ Dalmare/ William Sawaya
Sawaya & Moroni/ Dalmare/ William Sawaya
Royal Tichelaar Mukkum/ Fundamentals of Makkum/ Atelier NL
Royal Tichelaar Mukkum/ Fundamentals of Makkum/ Atelier NL
擬態化する家具
スタンダードなデザインが増える一方で、昨年からあるオブジェ化の傾向も続く。今年はより進化して擬態化したものも多い。その代表がMelitaliaから発表されたGaetano PesceのColprado。コロラドの雄大な地形をそのままソファにした作品である。なんとも素敵な大人のパロディ。Kartellから発表されたPatricia UrquiolaのFrilly Stoolもカラフルな切り株やカヌレを想起させる。カラフルでキュートで気取らないデザインが多く登場した。
Meritalia/ Colorado/ Gaetano Pesce
Meritalia/ Colorado/ Gaetano Pesce
MOROSO/ tailored chair/ Nika Zupanc
MOROSO/ tailored chair/ Nika Zupanc 今年も楽しいニューデザインを発表したMOROSOから出されたとてもフェミニンなフォルムの椅子
Kartell/Frilly Stool / Patricia Urquiola
Kartell/Frilly Stool / Patricia Urquiola
MOROSO/ moment collection/ Front
MOROSO/ moment collection/ Front 木のベンチに擬態したソファ
MOROSO/ paper cloud/ 吉岡徳仁
MOROSO/ paper cloud/ 吉岡徳仁 フワフワとした雲に変身したソファ。
Edra/ Cipria/ Fernando & Humberto Campana
Edra/ Cipria/ Fernando & Humberto Campana
“Edra/ Segreto/ Fernando & Humberto Campana”
Edra/ Segreto/ Fernando & Humberto Campana ギラギラでグリッター感を全面に打ち出したEdra。潔さもかっこいい秘訣
動物モチーフ
動物モチーフの家具は、1月のメゾンエオブジェに引き続き良く目についた。動物を象徴的にデザインしているものもあれば、ダイレクトに動物個体全体で表現しているものなど個性はそれぞれ。見ていると何となく笑いたくなるかわいさに、癒される人も多いだろう。
Meritalia/ Gli Amici and Montarana/ Gaetano Pesce
Meritalia/ Gli Amici and Montarana/ Gaetano Pesce
Cappellini/ Antlar/ nendo nendoの鹿の角モチーフを背面にデザインした椅子
Cappellini/ Antlar/ nendo nendoの鹿の角モチーフを背面にデザインした椅子
Cappellini/ Peacock / Dror Benshetrit
Cappellini/ Peacock / Dror Benshetrit こちらはクジャク
bambi chairs/ 山本達雄
bambi chairs/ 山本達雄 サテリテに出展されていた山本氏の鹿の椅子。手触りと細さが絶妙
ヘルニアのようなフォルム
脈々と続く想定外の場所にゆがめられ飛び出したデザインの系譜。今年もヘルニアのようなデザインは健在である。そのいびつさゆえの存在感と美しさには不思議な説得力がある。
driade/ Virgo / Xavier Lust
driade/ Virgo / Xavier Lust
Sawaya & Moroni/ Linia/ William Sawaya
Sawaya & Moroni/ Linia/ William Sawaya
Sawaya & Moroni/ Libeskind Tea & Coffee Set / Daniel Libeskind
Sawaya & Moroni/ Libeskind Tea & Coffee Set / Daniel Libeskind
Ambiguous Boundary 曖昧な境界
ファブリックやパターンで新鮮に映ったのが、境界線が曖昧なもの。ラインがぼかされているパターンや色がにじみあっているもの、現実と虚構が混じり合っているものなどが登場した。
driade/ Virgo / Xavier Lust
MOROSO/ moment collection (Rug)/ Front
Bisazza/ Summer Trees Commode/ Tord Boontje
Bisazza/ Summer Trees Commode/ Tord Boontje ガラスタイルをPCのピクセルに見たてたパターンを施したキャビネット
Sawaya & Moroni/ Libeskind Tea & Coffee Set / Daniel Libeskind
MOROSO/ Rug Morosoの会場に敷かれていたカーペット
Normann Copenhagen New Danish Modern/ Blueclay/ Claydies
Normann Copenhagen New Danish Modern/ Blueclay/ Claydies
有名デザイナーによる標準化への試み
「自分のデザインした椅子が、あらゆる名作椅子のように今後の椅子の規範になること」は、既に評価を確立したベテランデザイナーの目指すところであると思う。デザイナーの意思とメーカーの「確実に売れるスタンダードなライン」を作りたいという意識が一致した今年は、標準化を目指した椅子が多く発表された。いづれもデザイナーの個性が生かされ、その力量を十分に証明したデザインと仕上がりとなっている。
Cappellini/ BAC/ Jasper Morrison
Cappellini/ BAC/ Jasper Morrison
MAGIS/ Trattoria Sedia and Tavolo/ Jasper Morrison
MAGIS/ Trattoria Sedia and Tavolo/ Jasper Morrison
lapalma/ Stil/ Patrick Norguet
lapalma/ Stil/ Patrick Norguet
MAGIS/ Vanity/ Stefano Giovannoni
MAGIS/ Vanity/ Stefano Giovannoni シンプルなフォルムの中にもジョバンノーニならではの色気が漂う
MAGIS/ 360°family / Konstantin Grcic
MAGIS/ 360°family / Konstantin Grcic
driade store/ RING/ Philippe Starck & Eugeni Quitllet
driade store/ RING/ Philippe Starck & Eugeni Quitllet
MAGIS/ Flower/ Pierre Paulin
MAGIS/ Flower/ Pierre Paulin アクリルの透明性を活かした丸みのあるフォルムが独特の重みと美しさを生み出している。
クラシカルな印象の家具
ユニークな印象のデザインが多く発表される一方で、スタンダードラインの流れの一部として新しくかつクラシカルなデザインも多く登場。20世紀初頭を彷彿させるフォルムと深めのカラーで来場者の目をひきつけた。
Ceccotti/ TwentyTwo armchair/ Jaime Hayon
Ceccotti/ TwentyTwo armchair/ Jaime Hayon リヤドロに続きバカラでも美しく繊細でかつユーモラスな才能を見せたJaime Hayonデザインの椅子。
driade/ Lucas/ Oscar Tusquets
driade/ Lucas/ Oscar Tusquets スペインの建築家Oscar Tusquetsがdriadeから発表した椅子。小さめのサイズとフェミニンなフォルムが美しい
driade/ Lisa/ Laudani & Romanelli
driade/ Lisa/ Laudani & Romanelli
driade/ Salomonica/ Oscar Tusquets
driade/ Salomonica/ Oscar Tusquets
zanotta/ Battista/ Anna Deplano
zanotta/ Battista/ Anna Deplano
Kartell/TATi/ Ferruccio Laviani
Kartell/TATi/ Ferruccio Laviani
巨匠へのオマージュ
クラシカルな印象の家具に引き続き、巨匠へのオマージュピースや復刻デザインも登場。

artell/ MASTERS/ PHILIPPE  ヤコブセン、イームズ、サーリネンの3人の巨匠がデザインした名作椅子の背面のラインを取り出しくみ出したユニークなオマージュピース
Cappellini/ Fronzini color / A.G. Fronzini
Cappellini/ Homage to Mondrian/ Shiro Kuramata (1975) 倉俣史朗さんが約30年前にデザインしたモンドリアンへのオマージュピースがカッペリーニから復刻
Cappellini/ Proust Geometrica / Alessandro Mendini
Cappellini/ Fronzini color / A.G. Fronzini (1975) こちらもモンドリアンカラーで復刻されたFronziniのテーブルと椅子。タイムレスなデザイン
Cappellini/ Archetto / Alessandro Mendini
Cappellini/ Proust Geometrica / Alessandro Mendini (1978) 20世紀のイタリアデザインのアイコンである椅子の復刻。
Cappellini/ Archetto / Alessandro Mendini
Cappellini/ Archetto  自身へのオマージュともいうべき彫刻のようなキャビネット。鏡ばりの表面仕上げとまるで門のように大きなサイズ


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