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2007 ミラノサローネ特集
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三國 秀美 : 2007年ミラノ・サローネ デザインというインターフェース
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トルトーナ地区にて。左から小山志穂利、インガ・クネルケ(写真家)、マルティ・ギセ(デザイナー)
 

トルトーナ地区にて。左から小山志穂利、インガ・クネルケ(写真家)、マルティ・ギセ(デザイナー)

マルティ・ギセ、トルトーナ地区で発見
フォーリ・サローネという市中展示では、オープニング・パーティが重要です。多くの場合、その夜しかデザイナーに会うことができないからです。 今回、人気のトルトーナ地区は2度回りました。1度目は4月20日のトルトーナ・ナイトで、その日は夜中まであちこちでパーティが行われていたのですが、通りを前に進むことができないほどの混雑。取材にならず歩くだけで精一杯となり翌日出直すことにしました。今まで経験したことのない混雑で駅へ続く歩道橋を渡るだけでも30分近くかかり、あらためてこちらのお祭り好きには驚かされました。


人でにぎわうトルトーナ・ナイト

人でにぎわうトルトーナ・ナイト。「シャッターを押す余裕ができた場所」はこの辺りだけ。


このトルトーナ地区では、JDNで昨年インタビューに登場したマルティ・ギセが、《Food Furniture》という食品デザインに携わった10年を祝うイベントとサポリティ社初のキッチン・コレクション発表ということで出展しています。ギセ本人も毎日夕方からの実演イベントに登場するということで、翌日その会場でギセの作品を見たり、インタラクティブ・クッキングのインスタレーションに参加したりとあれこれしていたところ、本人に会うことができました。

《Olive Atomic Snack Performance》

《10 years of Food Design》展より。ショーケースには、所狭しと作品が並べられている。手書きのキャプションはギセ・タイポではなく、ごくまじめな文字。ちなみに手前の作品は《Olive Atomic Snack Performance》。うーん、子供がこうすると親に叱られるような。


IBMの第二世代のプリンター・パーツ

こちらはIBMの第二世代のプリンター・パーツ。それをチョコレートで模っている。







「JDNのインタビューでおっしゃっていた通り、トルトーナでお会いすることができましたね。私も調理台に埋め込まれたディスプレイの指示通りに前菜を作るという、インタラクティブ・クッキングに挑戦してみました。レモンにエビ、コリアンダーと素敵な仕上がりでしたが味はちょっと薄くて。塩が必要でした。」 「えっ、きっとそれは食材のせいです。バリエーションがあるのですが、アンチョビーだったらバランスがよかったはずです。」 「なるほど、それならわかります。さて、食品のデザインを始めて10年という節目のイベントをここミラノで実現されました。東京では見ることのできなかった作品もありましたが、10年の仕事に対して作品点数40というのは、ちょっと少ないような気がするのですが。」


《SSK BERLIN SNACK BAR WALL》

壁にもさまざまなパネルを掲げてこれまでの仕事を紹介している。これは98年の《SSK BERLIN SNACK BAR WALL》というプロジェクト。ギセは絵によるコミュニケーションも得意としている。


「自分では、60から70点くらい用意していたのですが、時間ですとか、準備にいろいろ制約があって。こちらの手法はだいたいこうなのですが。キャプションなどもあまりに時間がなかったため、紙に直筆です(笑)。」 「食品のデザインをさらに広げて、今回はキッチンのデザインに挑戦されています。デザインの仕事が広がり充実しているようですが、また来日の予定はありますか?」 「今年の秋も東京のデザイン・イベントに行く予定です。また会いましょう。サポリティ社のもう一つの展示会場で、別のプロジェクトのためのテーブルを展示していますので、ぜひ見てみてください。」

サポリティ社初のキッチンシリーズ

サポリティ社初のキッチンシリーズ、《SENDA_K》。キッチンは家そのものだ、というコンセプトのもとに、5つのエレメントでこれからのキッチンを表現した。手前右が《WORKING TABLE》、右に《COOKING UNIT》、左奥はキッチンに個性を与える《ART PIECE》、中央に食品などを収納する《GOLD MONOLITH》戸棚、右奥の《TECHNO WALL》は調理器具などを収納する戸棚である。(c)saporiti


《WORKING TABLE》

単品でデザインを見てみよう。《WORKING TABLE》は食事だけでなく、人との語らい、仕事となんにでも使える。









そのままの流れで、サポリティ社のCEOであるラッファエレ・サポリティの案内により、解説を交えて展示会場であるアーナルド・ポモドーロ財団ミュージアムで自社戦略と作品の解説をしてくれました。 「父が設立したサポリティ社はすでに50年以上の歴史を持ちます。当社の戦略はこれまでの本筋のデザイン事業と実験的なデザイン・プロジェクトから成り立っています。今回ギセに依頼したキッチン・デザインは後者ですが、こうした攻める部分がないと前進しません。企業として、ビジネスを成長させるということが第一義ですが、社会との接点も欠かすことはできません。こちらの大きな会場はもともと工場でした。ミュージアムとして再利用しようという話があり、当社も文化の一端を担う企業として参加しています。 こちらでは、8組の作家にテーブルを依頼した《Inside Art 07》リサーチ・プロジェクトをアート作品とともに展示しています。テーブルというのは食事や書き物をするだけの家具ではありません。人々が集うコミュニケーションの場でもある。絵画や彫刻などアートのあるシーンで使われていてもいいじゃないか、と思ったのです。文化と人々との間の接点になるように。」

《SENDA_K》

《GOLD MONOLITH》。3面全ての棚が収納可能となっている。《SENDA_K》の中心となるエレメント。(c)saporiti


《TECHNO WALL》

《TECHNO WALL》。技術要素の高い扉はオリジナルの図柄をオーダーすることができる。


ギセをはじめインターフェースに対する鋭い感覚を持つデザイナーに依頼しながら二本柱の戦略でデザイン・ビジネスを展開するサポリティ社もまた、インターフェースを意識するイタリア企業の一つとしてさらに前進を続けています。

(プレス用写真以外:三國秀美撮影)


《COOKING UNIT》

《COOKING UNIT》。シンクと調理台、テーブル機能を合わせた細長いユニット。右端にディスプレイが埋め込まれており、今回はギセが自分の手で調理し、ビデオ映像を使って調理の仕方を指示してくれるインタラクティブ・クッキングのインスタレーションが行われた。


《COOKING UNIT》

この《COOKING UNIT》には126個のLEDが埋め込まれており、調理を楽しくしてくれる。
(c)saporiti








《FRAME TABLE》

《Inside Art 07》展より。マルティ・ギセ《FRAME TABLE》は文字通り額縁をイメージしたテーブル。ガラス部分の高さが調節できる。四隅のネジもまたチャーム・ポイントである。
 


《CZ-T1》

NYを拠点とするデザイナー、カルロス・ザパタの《CZ-T1》テーブル。2本のアルミの脚がテーブルを支える。デザインを主張せず、アートに溶け込む仕上がりになっている。
 


《JOHN CAGE》

詩的なテーブル《JOHN CAGE》のデザインはジャンフランコ・パルディ。パルディのデザインは常に危ういバランスを模索し、新しい意味を見出そうとする。
 


《HASHI》

マルコ・フェレッリの《HASHI》は文字通り、木の棒を組み上げて構成されている。透明感と光の効果を意識したテーブル。

 




《SHINING》

エリック・マリアの《SHINING》テーブルは木製のテーブル面とガラスの脚でできている。正方形に見えるようでいて、ちょっとゆがんだ形をしており、見る者に錯覚を起こさせる。写真右隅にはサポリティ社長の姿が。





《RIFLETTI》

直球勝負のようなデザインの《RIFLETTI》は、このミュージアムの内装も手がけたピエルルイジ・チェッリとアレッサンドロ・コロンボによる。スチール脚の表面は鏡面磨きを施してあり、緊張感を漂わせる。





《DAN》

艶っぽい表情を持つこのテーブル《DAN》は伊藤節と志信のデザイン。確かに面に段差があると、料理を置いても、違うものを置いても面白い。表情を出すため、自動車と同じ塗装を施してある。





《YAYOI》

フィリッポ・パリアーニとミケーレ・ロッシにより創設されたパーク・アソチアティ建築事務所の《YAYOI》は、シンプルでありながらディテールに気を配ってデザインされたテーブル。デュポンのコリアンという素材を使い、埋め込まれたLEDが光ってテーブルに表情を与える。レストランなどからの需要がありそうな作品である。


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