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2007 ミラノサローネ特集
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三國 秀美 : 2007年ミラノ・サローネ デザインというインターフェース
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《8組の建築家の解釈による8つの窓》というドゥオーモ近くのラ・リナシェンテ百貨店でのイベントから
 

《8組の建築家の解釈による8つの窓》というドゥオーモ近くのラ・リナシェンテ百貨店でのイベントから。隈研吾の窓。木製のエレメントを天井から吊り下げることにより、空間の奥行きを感じさせる。

インターフェースを重視する
去年のレポートで触れた通り、情報化の波により、国境を超えてデザインが進化し平均的にその質が上がるというトレンドは基本的には今年も変わりません。その中でもデザインの進化がもっとも発揮されるのは、インターフェースだと私は考えます。
社会とデザインの関連性が見えにくい「今」という時代は、携帯電話の普及などで我々の生活が「個」を中心としてこの10年だけでも激変しており、「個」寄りになっているといえます。直感的にユーザー・インターフェースに目が向くのは、こうした背景があります。


《Bamboo Light System》

木と紙に慣れてきた日本はとりわけインターフェースに敏感なのかもしれない。サローネ会場ではエウロ・ルーチェという照明展が回ってきた今年、市内でショールームを使ったヤマギワ社の作品が印象に残る。こちらはパリ在住アルゼンチン人パブロ・レイノソの竹にインスパイアされた作品《Bamboo Light System》。2種類のパーツで自由に照明を形作ることのできるインタラクティブな面も持ち合わせた美しい作品である。プレス資料より。



《SASSOLUCE》

島根県の砂岩でできている吉川彰英デザインの照明《SASSOLUCE》は、まさに住と人の間に介在するインターフェースの役割を果たす。時とともに苔むし、表情が変わっていくという。静かで力強く、印象深い作品である。ヤマギワ社。プレス資料より。









折しもイタリア入りする前にテレビに映っていた吉岡徳仁がau向け「メディア・スキン」という携帯電話についてデザインの背景を語り(小型化する携帯電話で、自分自身、口元に手を当ててしゃべるのがいやだったから、そうしないですむデザインを考えた、と言っていた)、40以上のプロジェクトを同時に進行させることもあるという隈研吾が自分たちの提案する建築について語っており(制約をクリアして社会、つまり「地域」に違和感なく存在し、なおかつ依頼者やユーザーに満足してもらえることが一番うれしい、と言っていた)、インターフェースの重要性を示唆していました。両氏ともサローネでは欠かせない名前です。展示されている彼らの複数の作品が見る者への説得力を持つのは、モノとユーザーの会話を独特なインターフェースで繊細かつ大胆に媒介しているからなのです。

また、「さらに挑戦し続けたい。デザインは本質論。本質的ではないところでデザインがビジネスに巻き込まれていることには疑問を感じている」と熱く語る黒川雅之も、インターフェースを模索しながら走り続けているデザイナーであり、彼の言葉や作品には大いに説得力があります。


《TEARDROP》

同じくヤマギワ社から出された《TEARDROP》という吉岡徳仁デザインのふんわりとした照明。さりげないながらも、最近の吉岡のデザイン・スタイルを象徴している。プレス資料より。





《Panna》

モローゾの会場で展示を行った吉岡の《Panna》シリーズ。「クリーム」という意味を持つ。





雲の中のような空間は、数知れないストローのようなプラスチックの筒で構成されている

雲の中のような空間は、数知れないストローのようなプラスチックの筒で構成されている。





隈研吾はアクリルと竹の簾虫籠(すむしこ)で透けるような空間を演出

トリエンナーレの会場で行われた三井不動産レジデンシャル社の「つなぐ」というイベントで、隈研吾はアクリルと竹の簾虫籠(すむしこ)で透けるような空間を演出し、外と内をつなげた。
 


ひのき洗面台風呂

また、隈は洗面台と風呂をつなげた「ひのき洗面台風呂」も同じく発表している。自己をつなぐ、つまり外の顔をはずす儀式の場ということである。






「DECODE ELEMENTS」

「DECODE ELEMENTS」(エレメントのもつ暗号を解く)というスフォルツェスコ城でのイベント。隈研吾は《Chidori》を出品した。日本の伝統的手法で木を組み合わせたオープンで透明な家。「エレメントは“言葉”のようなもの。“言葉”がつながると文章になり、すべては組み合わせ方による。」




《Beside the eclisse》

このイベントは数々の建築家やデザイナーがモノとモノをつなぐエレメントを独自に解釈してみせており、大変面白い構成になっていた。こちらはサローネ会場を設計したフクサス、マッシミリアーノとドリアナ夫婦による《Beside the eclisse》。「不確かな我々の存在は地球の核のような本質を求めて未知なるドアを開けて進むしかない。」



《Sssth!》

隈と同世代といっていい、ミケーレ・デ・ルッキは木材を使った《Sssth!》という塔を提案。「決して実在しない、小さな家。あるのは空を見る穴。空を見上げて自分の明日を探すだけ。」







《Ottimi errori》

プロダクト・デザインをすすめる一方で、デ・ルッキは自己表現をアートにも広げ始めた。ブラック・セラミックを使ったオブジェを並べ、《Ottimi errori》と題した個展が小さなギャラリーで静かに開かれていた。








ネクストマルニ

ネクストマルニは今年もモンテ・ナポレオーネ通りで新作を発表した。アルベルト・メダがデザインするラウンジ・チェアでくつろぐ黒川雅之。その温和な表情からは想像もできない、厳しい目でデザインを見つめている。






黒川のデザインするラウンジ・チェア

黒川のデザインするラウンジ・チェア。何度もモックアップを作って微調整したという。最後は女性の意見を取り入れた低めの椅子は、なるほど本当に座り心地がいい。温かみのある仕上がりは、今年のトレンドのひとつにもなっている。(c) nextmaruni, photo by Yoneo Kawabe




《Volant》

人気デザイナーのひとり、パトリシア・ウルキオラがデザインするソファ《Volant》も温かみのある表情をしている。モローゾ社製。








《LEATHERWORKS》

椅子の表面のレザーは皮膚にもっとも近いインターフェース。カンパーナ兄弟のデザインする《LEATHERWORKS》は数種類の型押しレザーをランダムに張り合わせ、一脚一脚が「偶然」の仕上がりになる。エドラ社はこうした深い感覚に訴える作品を世に出すのが得意なメーカーである。官能とグロッシーは今年のもうひとつのトレンド。
 




《NESS BED》

《NESS BED》はヤコブ+マクファーレンのデザイン。ガラスをカットしたような面でベッドが覆われている。メタリック仕上げは今年のトレンドのひとつ。サワヤ&モローニ社製。プレス資料より。








《Moon System》

ザハ・ハディドはコンピューターを使うことなく手書きでデザイン画を起こすという。《Moon System》ソファ。二つに分かれ、手前のパーツがオットマンになる。美しいだけではなく、座り心地がよい。B&B社製。







《Overscale Flames》

同じくB&B社から。ジャン・マリー・マサードがデザインした《Overscale Flames》というオイル・ランプは優雅で存在感がある。ちなみに幅は88cmとなっている。








喜多俊之の作品

伝統工芸とのコラボレーション《The Future of Tradition》を展開した喜多俊之。正面にある二畳の空間《Ceremony Space》の上には津軽塗りの大皿が置かれている。奥には有田焼のテーブル・ウエア《NANAKURA》のコラージュが壁に掛けられている。とても新鮮でまるでアートのようだ。


 




《Vertigo》

深澤直人デザインの《Vertigo》トレイとボウルのセット。新鮮なのにどこか懐かしい。コリアン素材。B&B社。プレス資料より。
 


《KOISHI》

深澤はドリアデ社からも有機的なデザイン、《KOISHI》クッションを発表している。ファイバーグラス塗装。プレス資料より。
 


《Koochy》

カリム・ラシッドのデザインしたソファ《Koochy》は、レザーのカバーに変えることもできる。ザノッタ社製。




《Cadmo》
ラシッドのデザインは多くの会場で見られた。アルテミデ社より出された《Cadmo》 (2006)こちらは現在アルテミデ社のウエブサイトのトップページを飾る。
 




《KAWA》

蛇口のメーカー、チザール社からは《KAWA》という洗練された蛇口が発表された。ラシッドいわく、「サーフィンが水しぶきを上げて波に乗っているイメージをデザインした。丸みが大切で、なおかつ薄く仕上げたかったから、技術的な面は大変だったね。色も含めて“斬新さ”を表現したかった。」
 


《ILBAGNOALESSI Dot》

フィンランドのオラス社はアレッシーのキッチンやバスなど水周りのための蛇口を提供している。蛇口は水と人との間のインターフェースといえる。《ILBAGNOALESSI Dot》プロジェクトより。こういう円筒型のハンドルはありそうでなかった。デザインはオランダ人のヴィール・アレッツ。
 


《PRISM clock》

《TOKYO DESIGN PREMIO》展より。ここ数年、アクリル素材と丁寧に向き合う山田佳一朗の《PRISM clock》は見る方向によりフェースの色が違う。ちょっとしたアイデアだ。






《DUST MUG》

同展より。大阪を拠点とするideacoが提供するプロダクトはさりげなくて楽しい。そうそう、リサイクルごみの日まで缶をまとめておくのに頭を抱えていたが、《DUST MUG》が解決してくれる。








《Mov》

サテリテに初参加のコバヤシ・ミキヤは、オブジェのようにも見えるビーチ用スツール《Mov》を展示。使うときは逆さにして、輪を踏むように砂に埋め込み、固定する。こぢんまりとした作品ながら、視点が広い。









《guscio》

トリエンナーレではイタリアのセラミックの認知度を上げるイベントが行われていた。マリオ・ボッタの《guscio》は貝殻という意味。建物の中の建物として、胎内回帰をイメージし、原点を見つめなおそう、というオブジェである。









《guscio》を上ったところには、《sit_down_please》と題して9組のデザイナーに依頼されたセラミック仕上げの椅子が並べられている

《guscio》を上ったところには、《sit_down_please》と題して9組のデザイナーに依頼されたセラミック仕上げの椅子が並べられている。右からマラッツィ社と組んだマルコ・アチェルビス《STEPbySTEP》、セッテチェント・セラミカ・ダルテ社と組んだ伊藤節・志信の《Arrow》、チェディア・セラミケ・ディ・ロマーニャ社と組んだジュリオ・イアケッティの《Zerobench》。タイルの表面の違いにより、さまざまな表情を見ることができる。



《Leia》

アクィレリア社と組んだミケーラ&パオロ・バルデッサーリの《Leia》はオブジェのよう。














《Pixel Ballet》

フォーリ・サローネより、モザイクのビサッツァ社による展示では大きなピノキオが出現。スペイン人のハイメ・アニョンが起用され、《Pixel Ballet》というインスタレーションが展開された。





《Silver Ware》

もうひとつの部屋でのStudio Job による豪華なインスタレーション、《Silver Ware》。きらびやかさは24Kホワイト・ゴールドを使ったモザイクの仕上げからくる。大きな食器に囲まれ、別の世界に迷い込んだかのようだ。




《FOREST》

モンテ・ナポレオーネ通りに近いシックな文房具ショップの地下で今回展示を行ったM+K DESIGN。新作《FOREST》はオブジェのような照明である。ファイバーの織り成すモアレが美しい。懐かしいような感覚に包まれる。




《TOKYO DESIGN PREMIO》展で展示されていた鳥のようなシャンデリア

《TOKYO DESIGN PREMIO》展で展示されていた鳥のようなシャンデリア。「人と交わって初めて完成するもの」を目指す根津孝太と塚本薫のCO/EXデザインユニットによる新作でスワロフスキーとのコラボレーション。やじろべえのようにバランス型でどこにでも設置できる。影が美しい。




サテリテでは福岡を拠点とする中庭日出海率いるTORAが風をよけるフィン《Fu Ha Ri》など

サテリテでは福岡を拠点とする中庭日出海率いるTORAが風をよけるフィン《Fu Ha Ri》、照明《Floor Flower》、時計《Yura Yura Clock》などを展示。風があたるとふわふわと動く《Fu Ha Ri》は多くの来場者が目に留めた。





《Mori》

サテリテ初参加の長谷川滋之が美濃和紙とのコラボレーションで作り出した照明《Mori》。旭川家具のカンディハウスの《Nami》というベンチをデザインしている長谷川は、繊細な素材使いが気になるデザイナーである。





フェルト・ユニット《CUMA》と《CROSS》

照明のシェードにも使える、安藤健浩のフェルト・ユニット《CUMA》と《CROSS》は完成度が高い。ユニットの組み合わせにより、パーティション、敷物、カバー、ウェア、アクセサリとさまざまな用途に使える。「つなげるエレメントとして構造的に突き詰めるとこういう形になる」という。
 


《DULCNEA》

最後はサローネ会場から心に残る照明。アーティストであるミンモ・パラディーノがダネーゼ社のためにデザインした《DULCNEA》。ONでもOFFでも存在感のある、アート作品である。高さは2メートルと大きい。


 


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