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思考と創造プラットフォームの形成を模索する、京都初の現代芸術の国際展「PARASOPHIA: 京都現代芸術祭2015」
PARASOPHIA-【京都市美術館】フロリアン・プムヘスル/アン・リスレゴー/サイモン・フジワラ/ヘトヴィヒ・フーベン
2015/04/08
JDN編集部
京都市美術館の大陳列室は1~2階の吹き抜けになっているので、それを囲むようにフロアをぐるりと回るような形での展示方法となっている。ここからは、いくつか個別の作品に目を向けてみたい。
フロリアン・プムヘスル氏「メザマシ隊」
近代のグラフィックデザインやタイポグラフィーを入念に調査し、その調査や分析を絵画や映像作品で視覚化する作品を制作するフロリアン・プムヘスル氏は、大正から昭和初期にかけての日本前衛美術について調査するため来日し、左翼の演劇の劇団「メザマシ隊」の写真からインスピレーションを受けた「メザマシ隊」を制作。京都の職人がつくった漆喰のパネルに、シンプルで力強い16のモノタイプをペインティングした。
アン・リスレゴー氏「神託、フクロウ……ある動物は眠らない」
SF小説から着想を得た3Dアニメーションやインスタレーションで知られるアン・リスレゴー氏の「神託、フクロウ……ある動物は眠らない」は、フィリップ K. ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」が題材。CGアニメーションのフクロウが、格言やフェミニストの弁論から引用した断片を独白する。高慢で威圧的なとれるフクロウの態度が妙な愛嬌も感じさせる不思議な作品だ。
サイモン・フジワラ氏「キングコング・コンプレックス」
今回の展示のなかで、個人的に作者からの投げかけがもっとも難解かつ興味深いと感じたのは、サイモン・フジワラ氏の「キングコング・コンプレックス」だ。フジワラ氏自身の出自や家族の歴史を出発点とし、綿密な調査に基づく事実とフィクションがゆるやかにない交ぜになった私的な物語が、鑑賞者の物語や歴史と結びついた時に拡がりを見せるものだが、展示されているインスタレーションはいわば点と点でしかなく、それらを有機的に結びつけるのはなかなか困難な作業といえる。だが、それらフジワラ氏の思考(あるいは思惑)にうまく誘導された時に別の物語が立ち上がるような快感がある。