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思考と創造プラットフォームの形成を模索する、京都初の現代芸術の国際展「PARASOPHIA: 京都現代芸術祭2015」

思考と創造プラットフォームの形成を模索する、京都初の現代芸術の国際展「PARASOPHIA: 京都現代芸術祭2015」

PARASOPHIA-【京都市美術館】蔡國強

2015/04/08

JDN編集部

京都市美術館を中心に、京都府京都文化博物館、鴨川デルタ、堀川団地など、京都市内の複数の会場で開催中の現代芸術の国際展「PARASOPHIA: 京都現代芸術祭2015」(以下「PARASOPHIA」)に、世界各地で独自の活動を続ける40組45名(21の国と地域)の作家が集結した。

芸術祭にありがちな「アートで町おこしを!」といった雰囲気は、国際的都市である京都を舞台にしているためか皆無だ。では、京都で国際芸術祭を行うというのはどういうことか?同展覧会アーティスティックディレクターの河本信治氏の言葉を借りると、「10年後、20年後の文化資産に繋がる、思考と創造の継続的で世界に開かれたプラットフォームを京都に根付かせる」ことにあると考える。

メイン会場となる京都市美術館
メイン会場となる京都市美術館
「別の、逆の、対抗的な」という意味のparaに、叡智や学問体系を意味のsophiaをつなぎあわせた造語
「別の、逆の、対抗的な」という意味のparaに、叡智や学問体系を意味のsophiaをつなぎあわせた造語

規模が巨大化する世界的潮流をよそに、10,000平方メートル以上にもおよぶ展示スペースを確保しておきながらも、あえて参加作家の数を絞って、ひとりひとりへの十分な展示スペース提供と、細やかな支援に注力することを選択した。つまり、京都という都市にとって大きすぎない規模での開催を重視したのだ。また、2年間の準備期間に参加作家のほとんどを京都に招聘。京都の文化遺産や人々の暮らしにふれ、京都と関わることによって新しい作品をつくることを試みた。作家たちが調査するなかで出会った人たちとの対話や、その2年間を通じて開催されたオープンリサーチプログラムやパブリックプログラムが、多様な表現や思考が出会う場(プラットフォーム)でありプロセスとなったようだ。

チケットブースは名和晃平氏とSANDWICHによるデザイン
チケットブースは名和晃平氏とSANDWICHによるデザイン
掲示板も帝冠様式を取り入れている
掲示板も帝冠様式を取り入れている

【京都市美術館】

蔡國強氏「京都ダ・ヴィンチ」

ふだん、全館をまるごと使ってひとつの展覧会を開催することがない京都市美術館だが、1933年建立の帝冠様式の重厚な建物が現代芸術で埋め尽くされた。まず、館内でひときわ目を引くのが、北京オリンピック閉会式の花火の演出などで知られる蔡國強氏の作品だろう。1階の大陳列室の中央に組み上げられた高さ15メートルにおよぶ竹製の塔作品・パコダを中心に、蔡氏が10年近く続けてきた「農民ダ・ヴィンチ」で制作されたロボットなどが無秩序に展示される。「農民ダ・ヴィンチ」は中国各地の農民が衝動の赴くままに、身近な材料だけで作品を制作するプロジェクトだ。さらにそこから派生したプロジェクト「子どもダ・ヴィンチ」で子どもたちが身の回りにあるもので制作した作品がパコダに飾られ、渾然一体となった「京都ダ・ヴィンチ」が形成されている。

  • 陳列室の中央に組み上げられた竹製の塔作品・パコダ
    陳列室の中央に組み上げられた竹製の塔作品・パコダ
  • 蔡國強氏
    蔡國強氏
  • 「子どもダ・ヴィンチ」で制作された作品がパコダに飾られる
    「子どもダ・ヴィンチ」で制作された作品がパコダに飾られる
  • 「農民ダ・ヴィンチ」で制作されたロポットの一部 (1)
    「農民ダ・ヴィンチ」で制作されたロポットの一部
  • 「農民ダ・ヴィンチ」で制作されたロポットの一部 (2)
    「農民ダ・ヴィンチ」で制作されたロポットの一部
  • 「農民ダ・ヴィンチ」で制作されたロポットの一部 (3)
    「農民ダ・ヴィンチ」で制作されたロポットの一部