wipe寺岡万征・鍋島貴が選ぶ
ドイツのモノ・コト

寺岡万征・鍋島貴 プロフィール

2006年に寺岡万征によってwipeを設立。2012年より近畿大学の建築学科の同級生だった鍋島貴が加入。建築、インテリア、家具の設計・監理から、トータルブランディングまで手がける。
http://www.wipe-udc.com/ 

“「レス・イズ・モア」より、「レス・アンド・モア」に影響を受けた”

ディーター・ラムス

  • ディーター・ラムスの「Less and More」
  • 寺岡万征氏所有の「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代」図録

元々ブラウンの社内デザイナーだった方で。建築家のミース・ファン・デル・ローエが、「レス・イズ・モア」と言ったのに対して、この人は「レス・アンド・モア」と言ってて。要はミースは少ないということは、より良いことだと言ってたんですけど、ディーター・ラムスは少ないのプラスもうちょっとみたいなことを言ってるんです。

基本的に目的を決めてデザインをしていると、「レス・イズ」の「レス」の部分が良くなっていくと思うんですけれども、そこにちょっと遊び心が入っている、「アンド・モア」のところに影響を受けていますね。いまのデザイナーはみんな「レス」は意識していてるので、「レス」ベースの「アンド・モア」のデザインをしたいなと思っています。

結構レアなものなんですけど、日本のブラウンの古い社内誌も持っています。古本屋で買ったのですが、けっこう高かったです(笑)。ディーター・ラムスがデザインしたものではないんですけど、ブラウンの世界戦略を考えていくときに、デザインを社内で統一するためにつくられたもののようででしょうか。つまり何を考えてこの会社を大きくしていくかみたいなことがまとめられています。この社内誌の見開きの大きさと、確かブラウンのレコードプレーヤーが同じ大きさなんですよ。この辺がドイツっぽい。

オトル・アイヒャー

  • 寺岡万征氏所有の「Otl Aicher」

ルフトハンザのロゴデザインとか、ベルリンオリンピックのシステムが有名で、よくディーター・ラムスと仕事されていたようです。ディーター・ラムスにしてもそうなんですけど、デザインをシステム化していくところが好きですね。

彼は書体デザイナーでもあるんですけど、ルフトハンザのデザインマニュアルをかっちりつくられた方で。縦組みのロゴはこう、横組みのロゴはこう、というルールを厳格に決めたんですね。ロゴに会社のビジョン集約させて、そこから派生させていくというやり方をされています。要はシステムに乗っとって会社のロゴを運用していく、そうすることで会社の価値をより上げていくことを目的にしている。システムにするということは、デザインの基本をよりわかりやすくすることだと思います。たぶんこういうシステムの考え方は、インテリアのデザイナーとか建築の人は、ここは別の人がやることだからと切り離しちゃうところですけれど、知っておいたほうが良いなとすごく思います。

デュラビット

  • フランク・ハスターのデザインによる 、デュラビットの「ARCHITEC」シリーズ

デュラビットは昔から憧れのあったメーカーですね。最初はなかなか高くて使えなかったんですけど。特によく使い続けているのが、「ARCHITEC」というシリーズで、この丸と四角とで構成される感じがバウハウス的ですね。結局システムで成り立っているんですよね。このシリーズはこの形でデザインが終わっているというよりは、これプラス何かという見せ方ができるので、とても使いやすいと感じています。

おそらくデザインされたフランク・ハスターという方は、増殖してもいいようなシステムを組んだデザインをされている。だからいくつも並んだ時も美しい。あと、デザインしすぎないというか、やりすぎないデザインだから、何にでも合わせられる強さがあるんですよね。シンプルで形が綺麗なだけでなく、きちんとデザインされているから、手を洗った後にポタポタ水を垂らさず済むようにできている。飲食店のような不特定多数の人が使うことも考えられていますね。やっぱり、水回りが良いと豊かだと思うし、こういうところでけっこう差が出てくると感じます。

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