キーワードは「タイムレスなデザイン」、“伝統ある進化”を続けるデュラビットのデザイン

「wipe」(寺岡万征・鍋島貴)インタビュー(1)

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キーワードは「タイムレスなデザイン」、“伝統ある進化”を続けるデュラビットのデザイン

1817年にドイツの「黒い森」地域にあるホルンベルクという小さな街で陶器工場からスタートした「デュラビット」。最初は陶器類のみを製造していたが、1956年に陶器から磁器に製品範囲を広げ、衛生用セラミック製品の製造にまで拡張。トイレや洗面ボウルなどの衛生陶器製品をはじめ、バスタブやバスルーム・ファニチャー、ウェルネス・システムなどを製造・開発する、デザイナーズ・バスルーム製品のリーディングカンパニーだ。現在では、ワールドワイドに事業を展開し、生産工場は世界10工場、従業員は5,000人を超え、製品は130カ国以上で販売されるまでに発展を遂げた。その理由は「伝統ある進化」という企業文化を根底にした、革新的な技術と優れたデザインによる製品を世に送り出してきたからだ。

フィリップ・スタルクがデザインした「Starck 1」シリーズ。衛生陶器業界に革命をもたらしたとまで言われている

フィリップ・スタルクがデザインした「Starck 1」シリーズ。衛生陶器業界に革命をもたらしたとまで言われている

デュラビットのデザイン力、そして製品のクオリティに関しては、数多くの権威ある国際的なデザイン賞を獲得していることから疑いようがないだろう。特にフィリップ・スタルクによる、「Starck 1」シリーズはセラミックで業界に革命をもたらしたとまで言われ、四半世紀以上経っても古さを感じない普遍的なデザインだ。デュラビットは、スタルクだけでなくマテオ・トゥーンやジーガーデザインなどの著名デザイナーとコラボレーションすることで、サニタリー分野に優れたデザインを取り入れ、さまざまなニーズや嗜好を満たす無数の製品を生み出してきた。そのデザイン性の高さから、ミュンヘンの「BMWヴェルト」やドバイの「ルジュ・ハリファ」といった有名施設や、「東京ステーションホテル」や「ホテル椿山荘東京」、スイスの「チェディ アンデルマット」など世界に名だたる宿泊施設にデュラビットの製品が導入されている。

ミュンヘンの「BMWヴェルト」

ミュンヘンの「BMWヴェルト」

またデュラビットを語るときに、「サステナビリティ」という言葉は外せない。節水仕様の製品開発や、製品に使用される光源をすべてLEDにするなどはもちろんのこと、衛生用セラミック製品の製造には、創業当時と同じ基本素材である粘土、カオリン、長石、石英という、天然素材を採用。環境に配慮した生産技術と徹底した品質管理の融合により、極めて機能的な長寿命製品を真面目につくり続けている。まさに、「Dura=durable〈耐久性のある)」 + 「vit=vitreous china (衛生陶器)」=Duravit(デュラビット)の社名がすべてを表しているといえる。

飲食店の店舗デザインを中心に手がける、寺岡万征氏と鍋島貴氏による「wipe」。「昔から憧れのあるブランド」と語ることからもわかるように、デュラビットのデザインの哲学に共感してきた。これまでに多くの店舗でデュラビットの製品を導入している彼らに、デュラビットのデザイン力とそのクオリティについて、仕事の進め方や飲食店に求められるサービスなど、現場目線を通して語っていただいた。

クライアントと“伴走”するのが「wipe」のスタンス

寺岡万征(以下、寺岡):「wipe」として一緒に仕事するようになって3年くらいですかね。それまでは別々に活動していて、もともとは近畿大学の建築学科の同級生です。大学生の時にコンペに出すためのチームをつくろうよとなって、最初は4~5人くらいメンバーがいました。その時に「いつかはみんなで仕事ができたら良いよね」と言ってて、そのメンバーで残った二人が僕らです。

「wipe」の鍋島貴氏(左)と寺岡万征氏(右)

「wipe」の鍋島貴氏(左)と寺岡万征氏(右)

鍋島貴(以下、鍋島):メンバーには家具をつくれる人だったり、グラフィックデザインができる人もいました。建築の人間だけだと狭い世界になっちゃうので、それぞれがそれぞれの分野の知識とかアイデアを持ち寄り、常に会議をしようというコンセプトでやっていました。僕らは大学の中でもけっこう浮いた存在で、髪の毛を青とかピンクに染めたりして(笑)。浮いたまま今に至るみたいな。

仕事の進め方に関しては、まずお話をいただいてから、二人でああでもないこうでもないと色々話しあって、ひとつ筋が決まったタイミングで担当を決めるという形ですね。

最初のアイデア出しとかで、僕は突飛なところから落としていくみたいな感じで、反対に寺岡は下からまとめて上に行くみたいな感じです。思考の仕方がぜんぜん違うので、二人でアイデアを持ち寄ると中和されていい感じになるっていう。同級生で一緒に仕事をすると喧嘩別れするっていう話は聞くんですけど、ふたりの考え方や性格も全く違うので喧嘩にもならず、お互いがお互いを補完しあうみたいな感じです。

寺岡:鍋島と一緒にやりはじめて3年くらいなんですが、僕は2006年に「wipe」を設立してからしばらくはひとりで活動してていて。その時はインテリアの仕事がメインだったのもあり、いまのところはインテリアの割合が多いんですけど、今後は建築も増やしていけたらと思っています。業態で言うと飲食が一番多いですね。最近は飲食以外にも、美容院、クリニック、戸建てとかもやりだして、基本的になんでもやると。お酒、特にワインが好きなのでワイン関係のお店が多いですね。

鍋島:飲みに行って打ち合わせみたいな(笑)。

「wipe」施工事例-東京・千駄ヶ谷のレストラン「ル・リール」(撮影:矢野紀行)

「wipe」施工事例-東京・千駄ヶ谷のレストラン「ル・リール」(撮影:矢野紀行)

「wipe」施工事例-大阪・大阪市のヘアサロン「「インタラクションヘアデザイン」(撮影:松本崇志)

「wipe」施工事例-大阪・大阪市のヘアサロン「「インタラクションヘアデザイン」(撮影:松本崇志)

寺岡:ふたりとも「お客さんと一緒に進もう」と考えているので、とにかくコミュニケーションを重ねる。やっぱりデザイナーなので、クライアントの意見を取り入れて、それをどうやって落としこむかという作業を粘り強く進めていくというのがスタンスです。

鍋島:僕らは“伴走”という言葉をよく使うんですけど、「一緒に進もう」というスタンスを伝えると、けっこうクライアントもがっつり乗ってきてくれるというか、理解してくれて話しやすくなるっていう。その壁を取り払う作業として、こちらの思想を伝えると意外にスムーズに話が進みます。

たいていのクライアントは大まかなイメージはあるんですけど、すべてがまとまってるわけではないので要望は小出しになりますね。それを全部まとめなきゃいけない仕事だと思っているので、話を伺って全体のバランスを考えて提案するということになりますね。住宅の場合は、このお風呂にしたいとか、この照明を使いたいとか具体的なイメージはけっこうあります。

寺岡:店舗だと自分が使うものではなくて、お客さんがどう思うかっていう部分がベースになるので、またちょっと主観と客観で違ってきますね。

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