“ドイツ人がつくるモノには背後に込められた思いがある”
モンブラン
普段からこれを愛用しています。エレガントではあるわけですが、とにかく放り投げても踏んづけても壊れそうにない頑丈さと重厚さが好き。
父親の転勤でドイツに引っ越して幼稚園に入園その後は公立の小学校に上がったんですけど、ドイツの教育方法がおもしろいんです。日本だと漢字をいっぱい書いて字の書き方を学習しますよね。日日日…山山山…とかね。ドイツの場合、まずは鉛筆でアルファベットを書かせるんです。ブロック体で覚えた後は、筆記体で。日本と 同様になぞらせて覚えさせるんです。そこからもう少し進むと、先生が有名な小説やゲーテの詩とか、そういうものを読むんです。生徒はそれを聞いてノートに書く、それを先生がチェックする。綺麗に書くことと正確に書くことの両方が見られるんです。上手くなってくると「あなたは合格」と言われて、そうするとペンで書くことが許されるんですよ。さすがにモンブランではないのですが、子どもにとって十分高価なペンが与えられます。次の日からはペンで書くようになるのですが、当然のことながら修正がきかないわけです。つまり心して書きなさい、と。
ゲーテや明治時代の欧米に学んだ日本人とか昔の人の手紙などを見ますと、本当にすらすら美しい筆記体でそれこそ流れるごとく書いてるんですよね。そういう伝統が昔から続いているんだと思います。物の価値としての華美さとか綺麗さもあるんだけど、しかしそこにはドイツ人のモノに込める思いが背後にあるんですよね。
アウディTTクワトロ
デザインと4輪駆動の操作性が好きで乗っています。ボッシュの部品がたくさん入っていることも誇らしいです。ドイツの高速道路(アウトーバーン)は区間によっては速度制限がありません。そこで鍛えられた高速性能、ハンドリング、制動技術。すっきりした内装デザイン。200キロを超えるスピードで運転しても揺るがない安心感や安定性、制動力は素晴らしいですね。ちなみに、ドイツの高速道路では200kmで走っていても、脇をポルシェがスーッと抜いていくなんてのはザラですよ。
今すごく思うのは人間と同じで車も環境の産物なんだなと。やはりドイツ車はドイツ文化やドイツ人の価値観の塊みたいなものだと、日本でドイツ車に乗っていて強く感じるようになりました。父の転勤でアメリカのノースカロラ州のシャーロットというのどかな町に引っ越して、そこで17歳の時に免許を取って初めて乗ったのはビュイックのセンチュリーというクルマだったのですが、アメ車の良くも悪くもおおらかな感じは、その時はそういうものだと思っていましたし(笑)。
ドイツのデザインで気持ち良いのはアールのつけ方。高速の入り方とか出方とかに顕著です。日本の首都高みたいに右からも左からも合流したりとか、やたらと文字による注意喚起とかはなく、道路がきちんと制度設計されている。しかも安全の幅をとっているので、無理なく曲がることができる。場所があるからかもしれないけど、ドイツの高速道路はそういう風につくられているんですよね。
ダックスフント
ドイツを代表する犬だなと思います。もともと子供の頃から家でダックスフントを飼っていて、いま飼っているのはダックスフントの中でも一番小さいカニンヒェンのスムース・ヘアです。最後のドイツ赴任を終えて帰国する際にドイツからつれてきました。100年近く続くドイツ人のブリーダーファミリーと仲良くなるのに2年近くかかり、その後ようやく個人的な信頼を得てようやく分けてもらえました。
ダックスフントは身体こそ小さいですが、もともとは猟犬なのでとても勇敢です。また個性と自己主張が強い犬種のようです。科学的な根拠はありませんが、我が家のダックスフントは、日本のダックスフントに比べて、より猟犬に近いというか、野性が色濃く残っているように思っています。警戒心が強く頑固ですが、一度信頼を勝ち得ると非常に仲良くなれます。そんなところは、なんかこう ドイツ人譲りみたいだなと思っています。