窪田建築都市研究所代表窪田茂が選ぶ
ドイツのモノ・コト

窪田茂 プロフィール

1969年、東京生まれ。窪田建築都市研究所代表・一級建築士。2003年、窪田建築都市研究所(有)を設立。建築からインテリア、プロダクトなど、幅広くデザイン活動を行い、近年は企画業務やプロデュース業務なども行う。代表作に、TSUTAYA TOKYO ROPPONGI、Royal Garden Café、MERCEDES-BENZ CONNECTION(六本木、乃木坂、大阪)、Weekend Garage Tokyo、cafe1886 at BOSCHなどがある。
http://www.ka-a.co.jp/

“主張しないのに主張する、そのバランス感覚がドイツらしさ”

メルセデス・ベンツ

  • メルセデス・ベンツ「ML 350」
  • 窪田建築都市研究所が設計を手がけた「メルセデス・ベンツ コネクション」

もともと車が好きで色んなものに乗ってきましたが、当時はメルセデスにあまり興味がなかったんです。好きになったのは六本木の「メルセデス・ベンツ コネクション」を設計したことがきっかけですね。それまではイタリア車にけっこう乗っていて、イタリア車はなんというか「暴れ馬」的で、乗りにくくて壊れやすくて面倒くさいんだけど、それが可愛らしいという感じです。それに比べてドイツ車は安定感とか安心感があるので、落ち着いてから乗れば良いかなと思っていました。

「メルセデス・ベンツ コネクション」を設計してる最中に、毎週メルセデスベンツを一台ずつ借りて、一週間ずつ乗り換える機会をいただきました。そうしたらもう出来の違いが歴然で(笑)。車自体のデザインもけっこう大きく変わりはじめてきていて、若々しいデザインに変わってきていたのもあるけれど、近くで見るとひとつひとつのディティールがものすごく美しい。それまでは全体像しか見ていなかった。ちょっとしたことけど収まりも綺麗だし、つくり方もすごく凝ってるし。よくみたらかっこいいなと思いはじめて好きになっちゃたんです(笑)。いま、乗っているのは「 ML 350(ML 350 4MATIC)」という車種で、もう3~4年くらい経つかのな。なんというか安心できる「相棒」みたいな感じです。

ボッシュ

  • 窪田茂氏所有のボッシュの工具
  • ボッシュの工具を手にする窪田氏

ボッシュとは「cafe 1886 at Bosch」の設計などでお付き合いさせてもらっています。ボッシュ自体は工具とかツールを実際よく使っていて、なんというかロゴの雰囲気からして好きで。この紺に赤字の感じとか。でも、やっぱりすごい長く現場で使われていることから信頼も感じています。

もともと、ドイツの人たちのデザインはバウハウスが源流にあると思います。機能美というか「レス・イズ・モア」的な発想が常にあって。僕自身は建築を勉強してきたので、バウハウスの流れはやっぱり好きだし、そういう思想や発想の仕方はよくわかるんですけど、「cafe 1886 at Bosch」のような店舗のデザインとなるとそればかりという訳にはいかなくて、装飾的とはいわないんですけど、雰囲気をつくるためにすることはあるじゃないですか?そういうことをしようとすると、「なぜそれをする必要があるのか?」という話になるんです(笑)。言っていることはわかるけれど、ここはカフェだから人が入ってきやすい雰囲気をつくるために必要なんですよとか、確かに君たちの言うとおりこの部分は無駄だからやめようとか、そういうやり取りをしました。

設計する前にボッシュの本社にもうかがいました。そこで、スタッフ方々の「ボッシュ愛」を強く感じました。「ボッシュの仕事をするからには、ボッシュのことをもっと知ってほしい」とあちこち案内していただいて(笑)。創始者が住んでいた家とか、昔のプロダクトのアーカイブとかをいっぱい見て。本当に一生懸命に良いものを作ろうという感じがとにかくする。それまでは雰囲気とかそういうものに憧れていましたけど、実際に知ることでより好きになったというのは間違いない。

デュラビット

  • フィリップ・スタルクがデザインした「Starck 1」シリーズ

うまく言えないのですが、ドイツだけどドイツっぽくない感じがします。ドイツの企業らしく真面目に質実剛健につくっているんですけど、真面目だけじゃない感じがするというか。フィリップ・スタルクがデザインしているシリーズが有名ですが、スタルクがつくるんだったら派手で、曲線的な感じになりそうですが、勝手な想像でいうとそれをデュラビット側が抑えて、きちっとしたプロダクトに収める、そのバランスがあるのかなと思っています。

でも、堅いばかりではなくて、微妙なアールの具合だったりとか、プロダクトとして相当優秀だと思います。あまり主張もしないけど、デザインはきっちりされてるというか。一見、ふつうなんだけど佇まいが良いですよね。主張しないのに主張する、そのバランス感覚がいつも良いなと思います。あと、色合いがけっこう良いんです。似たようなものは世の中にいっぱいあるんですけど、でも確かに違うんです。あまり白くなくて、ちょっとグレーっぽい、でも白なんですよね。この独特の風合いがあるから、どんなシチュエーションにもマッチしやすいのだと思います。住宅でも商業施設でも。