あのヒトが選ぶ、BEST BUY 2017

前田エマが選ぶベストバイ
“棋士が持つ、言葉や考えの美しさを知る”

携帯将棋盤

父と弟が将棋を昔から指していて、いつも日曜の朝は将棋番組がテレビで流れていました。私、ゲームとか苦手だし、将棋とは一生無縁の生活だと思っていたんです。でも羽海野チカ先生の『3月のライオン』を連載当初から読んでいるのですが、「こんなに深く鮮やかに棋士の人生を描けるなんてすごいなー」と弟に言ったら、「現実の棋士もすごくおもしろいよ」とYoutubeを見せられながら弟のプレゼンがはじまったんです(笑)。

超個性的な棋士たち(わかりやすいところで言うと金髪パンチパーマだった人や、カツラの人とか)、師弟関係(映画化された村山聖九段と森師匠とか)、電王戦(コンピュータと人間の戦い)の歴史とか…。少年漫画がリアルな世界になったような、熱い世界がそこにはありました。

何よりも私の心を掴んだのは、棋士の使う言葉のムダのなさ。美しい言葉づかいで、相手のことをリスペクトしているところが素敵なんです。羽生善治先生の対談集なども読み、この1年くらいでどんどんはまっていきました。後世に棋譜(戦いの記録)を残し、それが感動や勇気を与え続けるところなど、棋士には芸術家な面もある。美しい投了というのもあって、自分が負けだとしてもどのタイミングで終わらせるかが重要なんです。ひとりひとりの闘いなのに、ふたりで棋譜を作り上げる。ふたりでひとつの旅をしていような、そんな物語を読んでいるかのような感覚になります。

羽生先生が永世七冠になられた際、その年に羽生先生から「王座」というタイトルを奪取した中村太地先生が、「羽生さんと指していると、二人だけの世界に連れていってもらえるんです」というようなことをおっしゃっていて、少しでも盤上のことが知りたい、その世界をちょびっとでも見てみたいな~と思い、最近は頑張って指しています。

カフェでもバーでもどこにでも持ち歩いてて、将棋を知らない人にも、スマホ片手にルールを見せながら指させています(笑)。棋士の話をすると興味を持ってもらえるのがうれしいし、私、すごく弱いんですけど、昔やってたっていう人が嬉しそうに指す姿を見るのも楽しいし、いろんな年代の人とすぐにコミュニケーションがとれるツールとしてもいいなって思います。

■いま探しているもの・欲しいもの
いま欲しいものは、ポシェット。荷物が少ないのが好きで、冬はポケットにいろいろ詰め込めるけれど、春が来たらそうもいかないので…。よいポシェットを探しています。

モデル 前田エマ

1992年神奈川県生まれ。2015年春、東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーに留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、朗読、ナレーションなど、その分野にとらわれない活動が注目を集める。芸術祭やファッションショーなどでモデルとして、朗読者として参加、また自身の個展を開くなど幅広く活動。現在は雑誌などでエッセイの執筆、アート、服などさまざまなジャンルをテーマに連載を担当している。

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