あのヒトが選ぶ、BEST BUY 2017

Gottinghamが選ぶベストバイ
“CIAか宇宙人なのか…?と疑うほどのリサーチ力で構成”

Taryn Simon「A Living Man Declared Dead and Other Chapters」

Taryn Simon(タリン・サイモン)というアーティストを知ったのは、2010年のシンガポール・ビエンナーレです。日本では2014年の横浜トリエンナーレではじめて展示を観ました。TEDには2009年と2012年に出演していますね。彼女の本をずっと集めてきて、コンプリートまであと一冊となっていました。

この「A Living Man Declared Dead and Other Chapters」との出会いは、iPhoneをオンにした瞬間に「flotsam books」(オンライン古本屋)がアップした入荷情報が目に飛び込んできて、「これはキター!速攻買わなきゃ!」ってなりましたね。誰かに買われるんじゃないかと焦ってしまい、ログインがなかなかうまくできませんでした(笑)。一応、本人のサインも入っています。

このプロジェクトはざっくり言うと、血統とそれにまつわる物語を扱っています。彼女は博物学的なアプローチでポートレートを撮影していて、家族間のいざこざから、さまざまな国の政治や歴史、宗教といったものまで、すべて血縁に関わる事物がタイトル通り章立てされています。タリン・サイモンはCIAか宇宙人なのか……?と疑ってしまうくらいのリサーチ力で構成されています(笑)。プロジェクトの組み立て方や、構造がすごく勉強になりますね。あとこの本に関してはすごく造本が美しく、迫力もあります。

彼女は展示も本も同じパワーを注いでつくっているように感じます。例えば、写真家であれば写真集ありきで展示を行う人もいると思うし、あるいはあくまで展示の図録として写真集をつくる作家もいると思うけど、彼女はどちらでもなくて。奥付を見ると、写真やテキストだけでなく、ブックデザインにも自分の名前が入っているんですね。だからこの本自体も彼女の作品という位置づけになっていると思います。

■いま探しているもの・欲しいもの
ほしいというか、つくりたいものはテーブルですね。最近、2つの展示フォーマットで作品を発表していて、既製品のライトボックスを使ったインスタレーションと、オリジナルのライトボックスに収めた作品があります。その次のステップとして、プロダクトデザイナーの方とコラボレーションでテーブル型のライトボックスを制作したいと思っています。そのライトテーブルに作品をマウントして展示・販売するだけじゃなく、作品を抜いた状態でインテリアショップでも販売もしてみたい。「Gottinghamの作品がはまっていた(かもしれない)」ライトテーブルを家具屋で売るっていう(笑)。でも、その前にまず「DesignMiami/」に出したいですね。

写真家 Gottingham

東京造形大学デザイン学科卒業、ロンドン芸術大学修士準備課程修了。国内外の文化芸術事業の企画・運営等に従事した後、2012年にソロプロジェクト「Gottingham」として活動を開始する。アートセンターや研究開発機関、企業などとのコラボラティブ/コミッションワークを中心に作品制作を行う。最近の展覧会に、「Space for Others」(CAGE GALLERY)、 「Variations/Situations」(YellowKorner at IMA Concept Store)。共著に「Rice Koji Monolith」(発行:山口情報芸術センター)など。経済産業省「FIND/47」ではキュレトリアル・アドバイザーを務める。 *Illustrated by Maya Numata

http://gottingham.com