カンパナ兄弟の20年の歩みを総括、「Antibodies:抗体展-The Works of Fernando and Humberto Campana(1989-2009)」

[PR]
カンパナ兄弟の20年の歩みを総括、「Antibodies:抗体展-The Works of Fernando and Humberto Campana(1989-2009)」

ヴィトラ・デザイン・ミュージアム企画・制作、サンパウロ出身のデザインユニット・カンパナ兄弟の軌跡をたどる展覧会「Antibodies:抗体展-The Works of Fernando and Humberto Campana(1989-2009)」が、西武渋谷店で開催中だ。同展覧会は世界中を巡回して、すでに5年目に突入しているが、アジアでの開催は今回が初となる。

紐、梱包財、ぬいぐるみ、木材など、どこにでもある素材を用いながらも、彼らにしかつくれないユーモラスで批評性に満ちた作品の数々が並ぶ。カンパナ兄弟を語るときに、「リサイクル」「自然素材と人造素材の融合」「多文化の統合」といったキーワードがあげられるが、それらの意味することを間近で感じられるのはなかなかない機会だ。特に彼らの作品をコラージュして再構築したアートワークは、デザインの思考の一端をのぞくことができるだろう。

stool

stool

arm chair (A Crowd of Mulattos)

arm chair (A Crowd of Mulattos)

同展覧会の開催に合わせて来日した、カンパナ兄弟の兄であるウンベルト・カンパナ(Humberto Campana)氏にインタビュー。ブラジルの現在、彼らに刺激を与える日本、短い時間ながら興味深い話をきくことができた。

ウンベルト・カンパナ氏

ウンベルト・カンパナ氏

― 「Antibodies」のタイトルに込められた意図とは?

タイトルはヴィトラ・デザイン・ミュージアム側が考えた興味深いものです。伝統的なものに対してB-SIDEを見せる、デザインという行為の裏側を見せるといった意図があります。ヨーロッパや日本に比べて、デザインという意味においてはブラジルに伝統と呼べるものはありません。そうした状況、デザイン新興国としてのブラジルのいまを打ち出したものです。

arm chair

arm chair

armchair (Slum)

armchair (Slum)

― 20年でブラジルのデザイン環境はどのように変わったか?

20年というのは短い時間ではないので、やはり大きく変わったといえるでしょう。特にグローバリゼーションが大きな役割を果たしたと考えています。私たちが活動をはじめた頃の世界は北半球が中心でした。それがようやく、北半球と南半球が関わりあっていけるような世界になってきたと思います。

現在のブラジルにおけるデザインは、自身のアイデンティティを持つまでに成長しました。そして、私たちはそれに大きく関わってきました。若者たちがそれに倣って、後についてくる状況にまでなりました。事実、数年前まではブラジルではデザインフェスなどは成立しませんでした。いまではデザインスタジオの数も増え、ミラノデザインウィークにも出展するデザイナーも増えています。

― 兄弟のそれぞれの役割は?

私のほうが手作業のなかで素材に触れて考えるのが好きなタイプです。その素材の限界はどこにあるのかを探しながらつくっていきます。反対に弟のほうが知的な作業が好きなタイプで、しっかり設計してデザインします。ただし、つくるものによっては、その役割がダイナミックに入れ替わることもあります。ふたりで活動することのメリットは、ふたりが離れた場所にいても、今日のように“カンパナ兄弟”としての仕事ができることですね。

armcharir (Red)

armcharir (Red)

suite (One Family)

suite (One Family)

― 日本について

今回が3回目の来日になります。トラディショナルなものとモダンなものが共存しているのがとても刺激です。日本は多くのインスピレーションを与えてくれます、「Sushiシリーズ」は私たちのなかの日本を表現した作品です。自分たちの視点で文化を表現することによって、相互に影響を与えあうことができると思っています。

table centerpiece (Tokyo Garden)

table centerpiece (Tokyo Garden)

インタビューの終了間際に、「カンパナ兄弟としての活動をはじめたばかりの頃に、 domus誌に『根はブラジルにあるが、使用している言語はインターナショナル』と評されたことに、とても感銘を受けたし活動の拠り所としてきた」というコメントが印象的だった。現在のブラジルのデザインシーンを牽引するカンパナ兄弟の原点を垣間見た気がする。

展示作品

展示作品

展示作品

展示作品

同展覧会は西武渋谷店(~4月26日)を経て、そごう神戸店(5月10日~5月15日)を巡回する。