インタビュー 編集部が注目するデザイナー・クリエイターのアイデアと実践に迫る

「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展 ~原画×映像×体感のワンピース」にみる展示デザインの現場

「尾田栄一郎監修
 ONE PIECE展 ~原画×映像×体感のワンピース」
にみる展示デザインの現場

マンガという日本独自の表現フォーマットを、どのように空間へ変換するのか。原画の魅力を展示で伝える、クリエイティブの現場に迫る。

2012/03/21

JDN編集部

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2次元の原画を3次元へ

2012年3月20日から森アーツセンターギャラリーにて開催されている
「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展 ~原画×映像×体感のワンピース」。
この展覧会の会場構成を企画・制作したのが、展示・内装などの空間デザイン最大手である丹青社だ。

同社プリンシパル クリエイティブディレクターの洪恒夫氏は、企画コンセプトから展示空間全体の骨格作りを統括し、各セクションと協議しながら輪郭を作り上げる役割りを果たした。また、コンテンツに関してはプランナーおよびデザイナーと共に細部まで構築し、アートディレクションも行った。

プランナーの石田裕美氏は、企画立ち上げから関わり、具体的な展示物やコンテンツの見せ方を企画した。デザイナーがイメージを構築していく時に、底支えとなる立場だ。

プランを具現化し、すべての展示アイテムに関わったデザイナーは、吉田真司氏。立体造形物の細部にまで責任を持って進めてきた。

「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展 ~原画×映像×体感のワンピース」展示風景
展示風景
展示風景
展示風景

企画は、ほぼ白紙の段階に近いところから始まった、と洪氏は振り返る。
今回の展示は、『ONE PIECE』連載媒体である「週刊少年ジャンプ」を発行する集英社とともに、朝日新聞社などが共同で主催している。丹青社は、展示づくりのパートナーとして指名された。まずは朝日新聞社とのブレーンストーミングから参加し、展示空間全体がある程度固まった段階で、集英社へプレゼンテーションをすることになった。

洪氏 「漫画が空間に広がる展覧会、という構想がもともとあり、基本的には原画展です。我々にはまず、どういう展示内容が考えられるのか、具体的な提案が求められました。
最初の集英社さんへのプロポーザルで、おおよその了解は得られたと思います。しかし最終的には、作家の尾田さん本人のOKが必須であり、そのために集英社の編集部や宣伝部の方々と何度もやり取りを重ねながら、ひとつの展示を作り上げていきました」。

様々な条件や情報を主催側と共有した上で、展示空間に足を踏み入れてから会場を出るまでをワンパッケージとして企画立案していった。

石田氏 「最初の段階ではいろいろな発想があるし、実現したいと考える展示も膨大な数がありました。今回は一般的な美術展示でもなければ、テーマパークのアトラクションとも違います。漫画に軸をおいてその魅力を空間で伝えることを基本にアイデアをひねっていきました」。

 読者層は「週刊少年ジャンプ」のファン、コミックスのファン、もちろん子どもも多い。2次元を空間で見せて、彼ら彼女らに喜んでもらうには、映像はもちろん、ゲーム的、体感的要素も必要だろうと考えた。ただし、あくまでも主役は原画。

洪氏 「様々な課題の解決を考えながら、コンセプトやコンテクストをふまえて骨格を固めます。次にコンテンツを描き加えて、ある程度の具体性を肉付けした状態でプレゼンしました。作品を支え続け、世に送り出してきた集英社さんだからこそ尾田さんの気持ちにも寄り沿うことができるので、どういうプロポーザルなら納得してくれるのか、多方向からの検討を重ねましたね」。

プロジェクトは2011年1月末に始まった。少しずつ企画を詰め、3月初めに集英社にプレゼン。感触は良好だった。さらに内部での精査を経て、さらにアイデアが熟した段階で尾田栄一郎氏に企画を披露したのは、7月のことだ。

洪 恒夫氏
洪 恒夫氏
展示設計図書より。尾田栄一郎氏の机から広がる原画、という展示イメージ
展示設計図書より。尾田栄一郎氏の机から広がる原画、という展示イメージ
展示設計図書より
展示設計図書より(4点とも)
展示設計図書より
展示設計図書より
展示設計図書より