思考と制作を軽やかにつなぐ3D CAD「Onshape」、プロダクトデザイナー川本真也が見た新しい景色(2)

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思考と制作を軽やかにつなぐ3D CAD「Onshape」、プロダクトデザイナー川本真也が見た新しい景色(2)

履歴が残るから、修正作業もスムーズに

――今回PTC社の「Onshape」を使って、デザインをつくっていただいたんですよね。

はい。椅子をデザインしてみました。作業時間は2〜3時間ほどです。はじめてのソフトだったのでいろいろと機能を試しながら進めましたが、慣れればもっとスムーズにできると思います。

川本さんが今回つくった椅子のデザイン

――実際にデザインしてみて、機能や使いやすさはいかがでしたか?

まず表示がとてもきれいだと感じました。これまで使っていたソフトでは画質が粗かったり、影の出方が不自然に見えたりすることもありましたが、Onshapeは細部までシャープで立体をさまざまな角度から確認しやすい。見た目にも気持ちがよく、つくり込みがしやすい印象でした。

履歴が自動で記録されるのも大きなメリットですね。ほかのソフトでは一度つくったものを修正する際は最初からつくり直す必要がある場合も多いですが、Onshapeでは履歴を遡ることが可能です。たとえば、角の丸みを調整したいときに数値を変えるだけで全体が自動的に更新され、戻したければ履歴から戻すことができます。

この履歴機能は、工場とのやり取りでも活きると思います。工場から設計上のフィードバックがあったとき、履歴機能があることでどこをどう変更したのか明確に残るため、工場側とも共有しやすい。同じデータを工場の担当者が直接閲覧できるというのも大きな利点だと思います。

クラウドならではの軽やかさと、互換性の高さ

――共有のしやすさもクラウドならではですね。

そうですね。ファイルの送受信やバージョン違いの混乱もなく、URLを共有するだけで常に最新の状態を見られるので安心感にも繋がります。しかも履歴が増えても動作が軽く、スケッチから3D、2Dから3Dへの移行も速い。長時間向き合うツールだからこそ、ワンテンポ遅れるだけで地味にストレスになるんです。この“軽さ”や“操作感の良さ”は使い続けやすさにも直結すると思います。

いまは一人で作業していますが、もしチームで使うとしたら、ほかの人がつくったデータを自分が直接開いて「ここはこうしたほうがいい」とその場で修正できるのは便利ですね。遠隔でも共有して同じ画面を見ながら話せるのはクラウドならではです。

学生に教えるような場面でも活かせると思います。学生のモデルデータを自分が同じ空間で開いて、「ここがうまくいっていないね」と話しながらその場で直せる。データの受け渡しがいらず、指導と修正を同時にできるのは教育や共同開発の場でも有効だと感じました。

また、クラウド上で動作するSaaS型ツールのため、デバイスを選ばないのもメリット。パソコンはもちろん、スマートフォンやタブレットからもアクセスできるので、プレゼンや打ち合わせでも気軽にデータを見ながら確認できます。OSの違いを意識せずに作業できるのは大きいです。そういった場合データの互換性で問題が起きることがよくありますが、Onshapeはそうしたトラブルもほぼなく、2Dと3Dの行き来もスムーズ。全体的にストレスなく扱えました。

ブラウザからログインするだけですぐに作業できるのも快適でした。インストール型のソフトのように立ち上げを待つ必要がなく、「思い立ったらすぐ触れる」感覚。設計が生活のリズムに自然に溶け込むような心地よさがあります。

さらに常に最新バージョンに自動アップデートされる点も魅力的に感じました。買い切り型のソフトだとバージョンアップのたびに費用や手間がかかることもありますが、Onshapeはサブスクリプション型で常に最新の環境を保てる。ユーザー側が管理しなくても最新の状態になっているというのはいいですね。

豊富なマテリアルで、素材の表現力が広がる

――川本さんは3Dとレンダリングを別のソフトでおこなうことが多いそうですが、Onshapeの場合はいかがですか?

Onshapeはレンダリングまで同じ環境で完結できました。またマテリアルの種類もとても多い。金属だけでも、真鍮・アルミニウム・ステンレスなどがあり、さらにその中で細かく質感を選べます。少し傷の入ったテクスチャーなども用意されていて、ドラッグするだけでリアルに反映されるのは驚きでした。

種類がとにかく豊富で、デザイナーとしては表現の幅がかなり広がります。質感もワンクリックで付けられて、金属の光沢やマットな仕上げなどもすぐに確認できます。

――今後、Onshapeで挑戦してみたいことは?

今回はシンプルな椅子をつくっただけですが、家電のような内部構造を含めた複雑なものにも挑戦してみたいです。「外部ネジ」を生成できる機能があって、それを試してみたときは驚きました。ネジって、径やピッチ、長さ、基準面などを正確に設定する必要があって、地味に手間がかかる部分なんです。

でも、Onshapeではサイズを指定するだけで自動的に正しいネジ形状をつくってくれます。穴との整合性も取れていて、設計上の作業がすごく楽になると感じました。実際の家具ではあまり使わない機能ですが、筒の脚やキャスター部分をつくるときなど、こういう実寸に近い検証が簡単にできるのはありがたいですね。

それから「アセンブリ」という機能。複数のパーツを組み合わせて、動きをシミュレーションできるんです。今回はパーツが少なかったので使いませんでしたが、回転やスライドなどの動きを設定できるので、おもちゃのような動くものや、家電のスイッチやボタン、タイヤの回転なども再現できそうです。そこまで一貫してできるのはすごいなと感じました。

設計者にも便利な機能が多い印象です。まだこれから探ってみたいという段階ですが、すごくポテンシャルの高さを感じています。

海外での発表を通じて、自分のデザインを確かめていきたい

――最後に、今後の展望を教えてください。

今年のミラノでの展示がとてもいい経験になったので、来年もぜひ出展したいと思っています。ミラノに限らず、これからも海外での発表を増やしていきたいですね。

国によって反応がまったく違うのも面白くて、ミラノでは作品の細部や造形のディテールを丁寧に見てくれる人が多かったのに対して、上海ではどちらかというとビジネス的な視点で見られることが多かった。そういう文化や価値観の違いを感じながら、自分のデザインがどんな風に受け取られるのかを確かめていくのは、今後の制作にも大きな刺激になると思っています。

■Onshape ※無料版の提供あり
https://www.onshape.com/ja/home-ja

文:高野瞳 撮影:寺島由里佳 取材・編集:石田織座(JDN)