XR・AR技術で拡張する未来の体験デザイン。D2C IMG SRC STUDIO×SoVeCが挑むプロトタイピング展示の裏側(1)

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XR・AR技術で拡張する未来の体験デザイン。D2C IMG SRC STUDIO×SoVeCが挑むプロトタイピング展示の裏側(1)

2026年1月末に東京・虎ノ門ヒルズを舞台に開催された、都市型クリエイティブフェスティバル「TOKYO PROTOTYPE」。初開催ながら初日から多くの来場者が訪れ、AI・ロボティクスなどのテクノロジーを活用した実験的なプロダクトやアートなどの「プロトタイプ」が披露された。

そのなかでも注目を集めていたのが、株式会社D2Cの「エクスペリエンシャルテクノロジー」領域を率いるIMG SRC STUDIOと、SoVeC株式会社が協業出展した「IDEATIONS Vol.4 Satellite」だ。

“非現実でありながらリアルな存在感”をもたらすXR体験装置や、描いたスケッチを3Dの惑星へ変換して宇宙を構築するインスタレーション、言葉や物などのソースを解析して音へと変換する音楽体験は、来場者の心を大きく動かした。本記事ではこれまでの取り組みをはじめ、出展した3作品の開発経緯やコンセプト、来場者の反響などをうかがった。

「驚き・つながり・没入」、3つの感情の導線をつくるモノづくり

——D2Cグループの会社概要と、IMG SRC STUDIOの役割について教えてください。

田中誠也さん(以下、田中):D2Cグループの前身となる株式会社ディーツーコミュニケーションズは2000年に設立され、iモードを中心としたモバイル広告事業からスタートしました。ドコモの資産を背景としたマーケティングソリューションへと領域を広げるなかで、2017年には「エクスペリエンシャルテクノロジー」領域を率いるIMG SRC STUDIO(イメージソーススタジオ)がグループに参画しました。

これをきっかけにD2Cグループのクリエイティブ領域はさらに拡張され、デジタル領域を中心に幅広い支援を行う現在の新体制へと移行しています。

株式会社D2C 田中誠也

田中誠也 株式会社D2C IMG SRC STUDIO マネージャー/テクニカルディレクター。万博やジャパンモビリティショーなどのイベント、店舗施策、OOHなど多角的な体験設計を牽引。Webやサーバー、アプリを横断する開発知見をベースに、AIを用いたクリエイティブ表現が得意。自社展示「IDEATIONS」の統括を含め、プロトタイピングを通じた未知の体験創出に広く携わる

田中:2025年10月には、D2C、D2C R、D2C IDの3社を統合。デジタル領域の支援体制をさらに強化した新体制へ移行しました。2017年にグループ参画した私たちIMG SRC STUDIOは、クリエイティブとテクノロジーの力で顧客体験(CX)向上のための施策を提供する部門です。デジタルインスタレーション・XR、AIなどの領域での企画、制作、実装、リサーチ、プロトタイピングを行い、最近ではそれらと「場所の魅力」が密接に紐付いた「ロケーションベースエンターテインメント」にも力を入れています。

大前提として掲げているのは「CX CRAFTS」というコンセプトです。手法を問わず、ユーザーの体験を最適化し、心を動かすクラフトマンシップを大切にしています。具体的なモノづくりにあたっては「Wow(驚き)」「Link(つながり)」「Dive(没入)」の3つの感情の導線をつくることを常に意識しています。

——今回の『IDEATIONS』は自社プロトタイピング展示の第4弾とのことですが、こうした研究開発の文化は長らくあるのでしょうか。

田中:スタジオ内には「PROTOTYPING LAB」という機能があり、顧客のニーズや市場の動向から逆算する「戦略的アプローチ」と、直感的な楽しさや面白さを起点とする「実験的アプローチ」の2軸で研究開発を行っています。「IDEATIONS」という名前になったのは近年のことですが、前身の株式会社イメージソース時代から「PROTOTYPES」という名で、もう10年以上独自のプロトタイピング展示を続けています。

過去の展示の様子

田中:クライアントからの受託案件をこなすだけではなく、こうした“攻め”のR&D活動を主体的に行うことで、チームのクリエイティブ力を強化することを大事にしてきました。最新の技術や市場の動向を常に把握・探求し、それらをどのような表現に落とし込めるかを追求しています。過去には、AIを使ったプロトタイプが、実際の案件へとつながり社会実装されたケースもあります。

——SoVeC、ソニーとはどのような経緯でタッグを組むことになったのでしょうか?

吉原早紀さん(以下、吉原):私は普段、SoVeCで企画やビジネスプロデュースを担当しています。今回はソニーの技術を含めたプロデュースとして参加しました。SoVeCはソニーのグループ会社で、以前からD2C IMG SRC STUDIOとは一緒に色々な取り組みをさせていただいています。最初のきっかけは2022年頃、SoVeCが扱うソニーのVPSを活用したARアプリのプロジェクトでご一緒したことです。

吉原早紀 SoVeC株式会社 ビジネスプロデューサー/XRプランナー。XRコンテンツのプロデュース・プランニングや、ARスマートフォンアプリの企画・運用を行い、ロケーションベースエンタメコンテンツを多数手がける。「Gate」では3Dガウシアンスプラッティング技術やVPS技術の活用を主としたプロデュース、コーディネートを担当した

——VPSとは、具体的にどのような技術なのでしょうか?

吉原:正式名称は「Visual Positioning System」といい、スマートフォンのカメラ画像を使い、操作者がどこにいて、どの方向を向いているかを高精度に特定することができます。従来のGPSだと数メートルから数十メートルのズレが生じてしまいますが、VPSなら数センチ単位のズレに抑えられます。

そのため、ただ空間に物が浮いているだけでなく、現実の建物の形を活かした演出、例えば建物の裏や隙間から現れるといった表現も可能になります。長野駅を舞台にした案件で、壁から牛が飛び出し、実空間の柱をくぐりながら走るといった斬新なXR表現をIMG SRC STUDIOと実現できた時、「これはすごい」と手応えを感じました。そこからのご縁で、今回「TOKYO PROTOTYPE」に共同出展する運びとなりました。

長野駅で行ったARイベントの写真

——「TOKYO PROTOTYPE」は、都市を舞台にクリエイターが未来のアイデアを発信する祭典でした。オファーから開催までタイトなスケジュールだったとうかがっています。

田中:当初は別の場所で1月頃に単独展示を開催する予定だったのですが、昨年10月頃に主催者の方からお声がけをいただき、サテライト形式での出展へと急きょ舵を切りました。そこから企画を練り直し、構想が固まってからの実際の制作期間は1ヶ月強という、最後はかなりの短距離走でしたね。

XRと感覚刺激からなる「現実と仮想が相互接続する体験」

——そのような状況の中で生み出された3作品について教えてください。まずはXRコンテンツの『Gate』からお願いします。

古川雄大さん(以下、古川):私たちのチームはSoVeCさんとの共同出展が決まった際、まず会場となるTOKYO NODE(東京・虎ノ門)へロケハンに行きました。そこで目にした、窓抜けの素晴らしい景観を使って何かできないかと考えたことが始まりです。

古川雄大 株式会社D2C IMG SRC STUDIO ディレクター。先端技術を用いた体験コンテンツの演出・プロデュースを手がける。クライアント企業向けインスタレーション展示やロケーションベースXR施策、大規模インタラクティブ・イルミネーションなど業務領域は多岐にわたる。「Gate」ではコンセプト設計を含む全体のクリエイティブディレクション、サウンドおよびハプティクス演出を担当

古川:『Gate』は、XRと感覚刺激からなる「現実と仮想が相互接続する体験」を味わえる作品です。今回は、現実と見紛うような高精細な仮想世界に対し、僕らがどうやってつながるかをテーマに、アプローチの異なる複数の体験(Gate 01〜03)を用意しました。

『Gate』

古川:従来のARのように映像の上に単に物体を乗せるのではなく、物理的な境界の向こう側に仮想世界が存在し、そこに物理的なプロップ(小道具)や五感を刺激するインターフェースを介して直接介入したり、スマートフォンを携えて自ら近づいて観察したりと、体験の切り口を変えることでシームレスな現実拡張を目指しました。

『Gate 01』アヒルのおもちゃなどのプロップを付け替えて体験できる棒型デバイスを箱の中に入れると、プロップが表示された仮想空間がモニターに投影され、高精細ゆえ窓の向こうの世界に反映されたような体験が味わえる

——ソニーの技術協力が大きな鍵になったそうですね。

森秀人さん(以下、森):この「現実と見紛う仮想空間」を実現するために、ソニーの技術開発研究所は、「3Dガウシアンスプラッティング」を活用した超高精細な3D空間キャプチャ技術を提供しました。光の反射や質感までもフォトリアルに再現できる技術です。

森秀人

森秀人 ソニー株式会社 技術開発研究所 リサーチャー。「Gate」ではコンテンツ撮影に関わる技術開発およびコンテンツの提供を担当。「Drawn Planets」では、研究開発中である小型の視線認識型ライトフィールドディスプレイの提供を担当

森:今回の技術的なチャレンジとしてまず思い出すのは、東京の変わりゆく風景の撮影が非常に難しかったことです(笑)。ガラスの反射や逆光、夜のビル群の明かりなど、環境が複雑で…。さらに、高精細でありながらスマートフォン上でサクサク動くための、データの軽量化も求められました。

年末にはソニーのチームもIMG SRC STUDIOのスタジオに合流して、テストを繰り返しましたよね。現実世界と馴染ませるために、3D空間内に「影」を落とす専用のメッシュを生成する仕組みを開発するなど、単なる技術提供ではなく、ワンチームとしてモノづくりに臨みました。通常、R&Dの現場では半年ほどかけてバージョンを上げていくものを、今回はわずか2カ月弱という短いスパンでゴリゴリにサイクルを回していきましたね。

『Gate 01』制作中の様子

古川:本当にご負担をおかけしました(苦笑)。IMG SRC STUDIO単体ではここまでの高精細な世界は実現できません。ソニーの圧倒的な技術力と、それをつないでくださったSoVeCさんがいてくれたからこそ、このすごい技術を、心を動かすエンターテインメントへと昇華させることができました。

森:あまりにも生々しくて、「ただのクロマキー合成(動画の切り抜き)でしょ?」と間違われるくらい綺麗に仕上がりました。お蔵入りになってしまったのですが、『Gate 02』用に「木の根っこ」の超高精細モデルも撮影していたんです。木の根っこの中に入っていくような体験をテストして、「こんなこともできるんだ!」と自分たちでも驚く発見がありました。お互いに倒れる一歩手前くらい大変でしたが、それ以上に「楽しすぎた」というのが本音です(笑)。

——体験してみると、視覚だけでなく、実際に手で触れるような感覚もありました。

古川:エンターテインメントとしての面白さをつくるため、マルチモーダルな演出を組み込みました。例えば『Gate 02』では、重厚感のあるジョイスティックを操作し、仮想の「サボテン」を掴み上げる体験をつくりました。

『Gate 02』

古川:仮想の物体を掴んだ瞬間に装置がずっしりと重くなり、落とせば振動が伝わります。さらに、ソニーが開発した「Grid Scent™(グリッドセント)」というにおい制御技術を搭載したデバイスを用いて、サボテンを引き抜いた瞬間に草の匂いが湧き上がる演出も取り入れました。展示什器の鉄板の重さひとつをとっても、そこにあるという「実在感」を徹底的に追求しています。

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