肩を覆う鎧のような「ネックオーナメント」や、大きく膨らんで指からこぼれ落ちそうな「リング」など、独特のフォルムをもつ中村ミナトのジュエリー。その外見とは裏腹に、身につけるとしっくりと馴染んで着けやすいものばかりだ。いずれも「装着時にできる空間そのものが作品」という中村の思想が浸透している。

線や面、球体などで構成される明快なかたちは、中村が平行して進めている彫刻制作と密接に結びついている。大学で彫刻を学んだ後、小さな抽象彫刻を作ろうとしたことをきっかけに、中村はジュエリー制作に携わるようになった。彫刻にも共通する幾何学的な作品は、ジュエリーの素材や表現が多様化する潮流のなかで次世代の表現を拓くものとして注目された。

身の丈をこえるほどの大きな彫刻は房総半島にあるアトリエで制作し、ジュエリーは、東京都心の工房で制作している。これまで彫刻とジュエリーをはっきりと区別し、個展発表も別々に行ってきた。しかし近年、両者が近づいてきたように感じるという中村の制作において、ジュエリーと彫刻はどのような関係にあるのだろうか。
本展では、ジュエリーを中心に代表作でこれまでの活動を紹介するとともに、両者の往還のなかに立ち現れる中村ミナトの制作の現在を取り上げる。

また、会場の一部では重要無形文化財保持者（人間国宝）などの作品を展示し、陶磁や漆工など工芸の魅力を紹介する所蔵作品展「近代工芸の名品」も同時開催される。

【関連イベント】
●アーティスト・トーク
日時：3月8日（日）14:00～15:00
出演：中村ミナト（出品作家）
場所：工芸館会場
※申込不要、参加無料（要観覧券）