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デザインのチカラ

デジタルスケープ

深澤直人デザインの“つくりおろし”新機種 「PRISMOID」

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── まずコンセプトを明確に反映したプロトタイプを製作・発表し、量産化へ向かうのが基本的なプロセスだが、コンセプトを事前に発表することなく発売する今回のようなパターンもある。深澤直人氏のモデル「PRISMOID(プリズモイド)」だ。
コンセプトを発表したものではない、いわば“つくりおろし”デザイン。「misora」と同様ローエンドにあたり、機能を必要最小限に抑えたモデルとなる。

「角錐台という意味のPRISMOIDです。C4.8と大胆に表記してあるのはC面(chamfer チャンファー、45度面取り)が4.8ミリだという意味です。さらに、サイズやFeliCaマークまでグラフィックデザインの要素としてあえてあしらってありますが、通常デザイナーにとってFeliCaマークを入れなければならないのは辛い点なんですよ。FeliCaアンテナが入っている側に必ず表記するルールはデザインする上でいつも悩みどころなんですけど、今回はそれを逆手にとりました。1980年代のプロダクトって、こういうスペックやネーミングをわざと製品の顔となる部分に大きくあしらっていましたよね。ある意味、そのパロディーです。

深澤さんはこれまで、こういった大げさな表記や装飾を避けてデザインを追求してきた方ですが、今回はあえてやろうというご本人からの提案です。
80年代的表現は今の20代の若者には新鮮じゃないかと思いますし、僕ら30代以上の年齢くらいにとっては懐かしさを感じます。」

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── コンセプトメイキングの段階で浮び上がったキーワードのひとつに「フューチャリスティック・フューチャー=未来的未来」がある。‘60年代のスペースエイジとはまた少し別の世界観だ。3色あるうちの黒はマット仕上げで若干赤みを足したビターチョコレートを思わせる仕上がり。

「たとえば80年代にシド・ミードが描いた未来画に出てきそうな携帯電話。PRISMOIDのコンセプト『フューチャリスティック・フューチャー』はそういう意味です。想像上の未来がそのままポンと現実化してしまったような感覚ですね。
これまでデザインしていただいた『INFOBAR』や『W11K』『neon』『INFOBAR2』は機能としてはミドルレンジ、ハイエンドにあたるモデルでしたが、今回は、必要最小限の機能性というところにこだわった携帯をiidaとして出していきたい、と。その結果がご提案いただいたデザインです」

── さらに、14組のデザイナーとコラボレーションしたライフスタイル・プロダクツと呼ぶ周辺グッズが発表された。ライフスタイル提案を主軸とするiidaとしてすでに発売されている観葉植物のような葉っぱのついたACアダプター「MIDORI」につづく製品群となる。PRISMOID用にも、深澤直人氏がデザイン及びアートディレクションを担う和紙ブランド「SIWA」のケース等が完成する予定だ。

「携帯だけを考えるのではなく、暮らしにさまざまなものがある中にぴったりくる携帯という存在を考えなくてはいけない。iidaはauが自ら企画し開発するプロダクト・ブランドであると同時に、携帯電話会社発のライフスタイルブランドを目指しています。携帯だけにとどまらずに携帯電話の周辺に広がる様々なアイテムにも今後ますます力を入れていきたいと考えています」

── デザイナーやアーティストとともにコンセプトを築き、携帯電話や周辺グッズを開発するにあたっては、砂原氏自身が興味を抱く事柄のベクトルが作用することもある。

砂原哲氏

「ただ実際には単に自分の興味だけで企画をして上手くいくわけでは、もちろんありません。自分の興味がベースにありながら、時代に合ったコンセプトを目指し、自分の中の引き出しから、これは次にいけるんじゃないか、と探りながら社内に提案していきます。僕自身はプロダクトデザイナーではないし、プロダクトデザインを専攻していたわけではありませんが、学生時代から関心のあった写真や映像、コンテンポラリーアート、メディアアートそれにAppleのMacOSに代表されるようなインタラクションデザインを含めた同時代的な経験や、カメラをはじめとする様々なプロダクトデザイン体験はひとつのベースになっていますね。外観の美しさと使い心地、操作感をはじめとする携帯電話のプロジェクトでは、そういった経験が役立つ部分は多いと思います」

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