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デザインのチカラ

デジタルスケープ

KDDIサービス・プロダクト企画本部 プロダクト企画部コンセプト企画グループ
課長補佐
砂原哲氏

細部までおよぶ複雑な構造でコンセプトデザインを実現 新製品「PLY」

砂原哲氏
KDDIサービス・プロダクト企画本部
プロダクト企画部コンセプト企画グループ
課長補佐 砂原哲氏

── 砂原哲氏は、au design project時代よりデザイナーと共に革新的な携帯電話を世に送り出してきた。2009年4月に立ち上げた新ブランドiidaでは、岩崎一郎氏デザインの「G9」、迎義孝氏の「misora」、前衛芸術家・草間彌生氏によるアートエディションを製品化している。
このたび新製品として発売が決定した「PLY(プライ)」は、au design projectのコンセプトモデルとして2008年に発表されたもの。神原秀夫氏によるデザインは、その名の通りプライウッドの積層からイメージされている。コンセプト段階での6層構造は量産化にあたり5層となったが、1層ごとに独立したパーツを絶妙なカラーバランスで彩色して組み上げたスライド式。非常に手の込んだ設計がなされている。

「PLYのコンセプトモデルは、どんな機能でも装備可能であることを想定したデザインです。さすがにそれらをすべて実現するのは難しいことでした。たとえば本体がオペラグラスのように横向きに開いてプロジェクターになるという機能を提案していましたが、そこまでの小型のプロジェクターモジュールは、まだ無いので諦めなくてはなりませんでした。ほかにはミントケースになったり、ティッシュペーパーボックスになったりというユーモア溢れるアイデアもありましたけど(笑)。PLYに関しては、“斬新”とか“革新的な”デザインを求めたというよりも、神原さん世代に特有なゆったりした感覚から生まれる温かみや自然な風合いを重視しています。

ply

デザインの特徴は、5層の積層構造とタブキーです。タブキーでは、アプリケーションやカメラをダイレクトに起動することができたりします。全く新しい試みで、押し心地や使いやすさに細心の注意を払いながら実現しました」

── コンセプトモデルで提案したアイデアは可能ならばすべて取り入れたいが、他の端末を開発しながら進めている状況で、物理的に不可能な条件は自然と見えてくる。

ply

「PLYでは層を再現することが課題でした。マスキング塗装して5色に塗り分けることも可能ですが、それでは見切り部分が美しく仕上がりません。そこで各パーツに分け、層と層の間には黒いパーツも入れ込むという、手間のかかる複雑な構造になっています。カラーバリエーションは3色ですが、それぞれ5層の繊細なカラーバランスで一つの色合いを作り上げています。調色にはかなりの時間をかけました。1層1層、色見やツヤを調整し最適なカラーに仕上げています」

── コンセプトづくりと量産化は全く違う作業だ。コンセプトデザイン段階では必要なくとも、量産化を決定したデザインにはさまざまな厳しい諸条件が発生する。

「量産化したいと思っても、技術的な問題の解決に加え、マーケティング的な確信や、ビジネス面でのシビアな現実と向き合わなくてはならなくなります。そういったことで、コンセプトとして発表しても量産品として世に出ることがないモデルもありますね。あるいは、タイミングの問題で量産化されない場合もあります。商品化が可能と見込まれればメーカーが参加し、デザイナーと我々の三者で具体的に進めていきます。

au design projectでは、年間1〜2モデルのペースで商品化をしていました。開発期間も割と長く、たとえば深澤直人さんの『INFOBAR』や吉岡徳仁さんの『MEDIA SKIN』では、コンセプトモデル着手から発表を経て商品として世に送り出すまで2年以上の歳月をかけていました。iidaではモデル数も増え、開発もある程度スピード感を持ちながら進めています。 携帯電話市場における端末の販売台数は一時期よりも落ちていますが、iidaとしてブランドを立ち上げたからには、それなりにモデル数を揃える必要がありますので、今回のように同時に2機種発売するようになっています。もちろん、以前より時間をかけられないからといってクオリティが下がっては元も子もないですから、そこは気を張って作りあげています」

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