新旧桑沢デザイン研究所生鼎談 浅葉克己氏×高田唯氏×後藤圭介氏 (2)

新旧桑沢デザイン研究所生鼎談
浅葉克己氏×高田唯氏×後藤圭介氏

2015/03/25 UPDATE

1954年の設立以来、多くのデザイナーやクリエイター、アーティストを輩出している桑沢デザイン研究所。ドイツのデザイン学校「バウハウス」のカリキュラムを軸に、他とは一線を画すデザインの教育を行ってきた。今回はその研究所を率いるデザイナーの浅葉克己所長を中心に、学校案内書のデザインを手がけた、高田唯氏(株式会社 ALL RIGHT)と後藤圭介氏(Helvetica Design co.,ltd)との新旧桑沢生対談を行っていただいた。

Vol.2デザインの秘密と学校案内書に込めた想い

「タイポグラフィには文字の選定と制作という2つの方向性がある」
「タイポグラフィには文字の選定と制作という2つの方向性がある」

― デザインはどんな流れを経て完成していくものなのですか。

浅葉 : 2011年に『中原祐介美術批評選集』の装幀をした時は、3.11関連の慰問先で見た「NY」って単語に「地名とイニシャルが同じ」と感じた所からだったね。みんなもそうだと思うけど、デザインは妄想やイメージから始めない? そして深く考え続けていくと段々形ができてくる。

後藤 : そうですね。ただ僕の場合、最初につくりたい形はありますが段々ずれていくんです。人と意見を交えることで生まれる一期一会を楽しんでいる感じです。

高田 : 作字に限って言えば、最近は既存の文字の完成された美しさを素直に表すほうが楽しいですね。トンパ文字もそうですが、文字って元は絵ですよね。その魅力が強いが故にうかつに介入できないというか…。

浅葉 : タイポグラフィにも文字の選定と文字の制作という2つの方向性があるからね。今回はそれぞれが得意な2人が並んだわけか。

高田氏デザインの2011年度の学校案内書
高田氏デザインの2011年度の学校案内書
高田氏デザインの2012年度の学校案内書
高田氏デザインの2012年度の学校案内書

― お2人は学校案内書のデザインを担当されていますね。

高田 : はい。僕は2011、12年を担当させていただきました。依頼が来た時はすごく嬉しくて、母校に恩返しになればと強く思いました。受け手の中心になる高校生は文字をあまり読まないだろうと考え、「見る学校案内」を目指しました。コンテンツごとに分冊にしたのです。せっかくなら僕らしいものを、と写真集中心の案をダメ元で提案したのですが、さらっと通って逆に驚きました(笑)。校内にカメラマンを侵入させて、普段の学生の姿も切り取りました。桑沢は、ものづくりの学校なので写真はフィルム撮影、文字は字幕職人の手書きと、手づくり感にこだわりました。箱を空ける時のワクワク感も出したくて、一見地味だけど空けるとカラフルな色が現れる仕組みです。学校案内書は2年後に、後藤君に引き継ぐことになりました。

同期入学の後藤氏と高田氏
同期入学の後藤氏と高田氏

後藤 : 高田君の分冊のプランを生かしつつ、さらに桑沢を伝える学校案内書にしたいと思い、学校のラウンジに張り出した質問用紙に描かれた回答をそのままグラフィックとして見せるコンテンツを取り入れました。その方が面白く、不真面目さと真面目さのコントラストが、今の学生像をリアルに伝えると考えたのです。「桑沢を丸ごと伝える」をコンセプトとし、デザインを進めるなかで、面白いと感じる桑沢のリアルを積極的に取り入れました。

浅葉 : 外側は風呂敷で包む形だね。

後藤 : はい。桑沢の理念を丁寧に伝えたかったからです。一年次に「衣」の授業がありますが、桑澤洋子先生が創立されたファッションの学校である痕跡を感じさせるためにも、裁った布でカリキュラムや志を包んで伝えたいと思ったのです。風呂敷を広げた時の驚きや、分冊にした各本を積み重ねたときの色の重なりを美しく見せることも意識しました。

浅葉 : 美意識や明快な考えがあるよね。この堅さと柔らかさを併せ持つ桑沢の校風は今後も大事にしたい所です。

後藤氏デザインの2015年度の学校案内書
後藤氏デザインの2015年度の学校案内書
取材時に制作の真っ最中だった、後藤氏デザインの2016年度の学校案内書
取材時に制作の真っ最中だった、後藤氏デザインの2016年度の学校案内書

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桑沢デザイン研究所での日々と「手」の力

VOL.1

桑沢デザイン研究所での日々と「手」の力

デザインの秘密と学校案内書に込めた想い

VOL.2

デザインの秘密と学校案内書に込めた想い

デザイナーをめざす若い人たちへ

VOL.3

デザイナーをめざす若い人たちへ