Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 東京舞台照明・岡山貞次

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 東京舞台照明・岡山貞次

2014/07/16 UPDATE

VOL.2 状況の変化にいち早く対応するためのシミュレーション

仮想空間での検証ツールとして

今回の東京モーターショーでは、ダイナミックに動くムービングスポットライトを多用しました。
すべての車の動きをシミュレーションしていきます。どの角度でどう光をあてるか、1台ずつの位置を調整していくという流れで、重量制限をにらみながら配灯計画を立てていきます。アイデアスケッチからスタートし、出展する車が絞り込まれた段階でムービングスポットライトのシミュレーションに着手します。その位置情報をVectorworksデータのまま、施工担当者へ渡せるのは非常に便利です。

当初予定の照明配灯位置
当初予定の照明配灯位置
照射角度の変更でスポットの吊り位置を変更
照射角度の変更でスポットの吊り位置を変更
クラスを変更すると表示される電気コンセント位置(電気施工業者用のシートレイヤ)
クラスを変更すると表示される電気コンセント位置(電気施工業者用のシートレイヤ)
スポットの吊り位置変更に伴い電気コンセント位置も変更されている(電気施工業者用のシートレイヤ)
スポットの吊り位置変更に伴い電気コンセント位置も変更されている(電気施工業者用のシートレイヤ)

スポットのシンボルに、クラスを利用した電気の情報を入れてあるので、スポットを動かした場合、電気施工業者が使用するシートレイヤでは電気シンボルが移動される

照明計画にCADが利用されるようになり、近年は3D化も進み、さらにシミュレーションソフトを利用することも一般的になってきました。プロデューサーや演出家と照明演出計画を立てる時にも役立ちます。
私自身は、照明シミュレーションソフトにデンマークのMartin社が販売している「Martin ShowDesigner」やウクライナのLight Converse社が販売している「LIGHTCONVERSRE」を使っています。これらを使う場合も、まず3DセットをVectorworksで作ってしまえば簡単。
照明シミュレーションソフトは、コントローラの信号を受けて、バーチャル空間で照明機材を動かせる機能を持っており、シーンによって光の照射方向や調光レベルと色などを変えることができます。100台もあるムービングスポットライトの全てを現場で一から確認する猶予はありません。画面上でさまざまな視点で効果を確認してから現場に入るというわけです。なので、画面上で動かす仮想空間がとても重要な役割を果たします。

スポットライトで照射した結果でパースを作成するようなシミュレーション作業はVectorworksだけでも十分に対応できます。ムービングスポットライトを使ったり、ムービング制御卓と連動させる場合にはVectorworksで作ったデータを照明シミュレーションソフトに取り込んで使っています。ムービーにも書き出せますし、リアルタイムで変更しながら光の動きを確認できるので、プレゼンテーションにも適しています。なにしろ、画面の中で動かしてみて、実際に光をあてた効果をその場で確認できるのですから説得力もあります。最近の照明シミュレーションソフトのほとんどがVectorworksのアドインソフトを供給しているので助かります。

時代とともに進化する最先端技術で挑む

照明機材の変化もめまぐるしく、毎年、機能が進化しています。春と秋には世界規模の照明展示会がフランクフルトとラスベガスで行なわれますので、そこで最新の機材情報を得てきたり、日本での内覧会に行ったり、デモ機を借りてきて検証しながら、新しいアイデアを常に温めています。

今回の東京モーターショーでは、固定であてる照明は太陽光に近い色を選びました。ムービングスポットライトの平均演色評価数(注:照らされたものの自然な色合いの度合い)はあまり高くありませんが、フルカラー制御が可能です。1台ずつ、カラーデザイナーと相談しながら、出展車輌に合わせて、照射角や照度バランスと色味を現場で再調整しました。それぞれのムービングスポットライトには特徴がありますが、今回のショーでは全部で5種類、およそ100台の機材を使っています。
車にあてる光は仮想空間だけでは再現が難しいです。現場での判断こそが最後まで重要です。どこにあたるか、あたらないかだけではなく、具体的な演出効果は事前にシミュレーションソフトを利用してプリプログラムを終らせていますので、現場では車輌への照明の細かい調整と演出効果の精度を上げることができると考えています。 現場でのリハーサルによって演出が変わることも珍しくありません。特に、人物が入ってくるとその人の動きに合わせるために、オペレーションを変更しなければならない場合もありますが、仮想空間上でプログラムのほとんどが完成しているので、現場での変更にも余裕を持って対応できています。

ムービングスポットを多用する現場でも、照明シミュレーションソフトと制御卓のオフラインシステムを利用することでプリプログラムが可能となり、短期間の施工スケジュールの中でも完成度の高い演出を行うことが可能となってきた
ムービングスポットを多用する現場でも、照明シミュレーションソフトと制御卓のオフラインシステムを利用することでプリプログラムが可能となり、短期間の施工スケジュールの中でも完成度の高い演出を行うことが可能となってきた
海外での仕事も多い岡山氏。海外の同業者からは「GIORGIO」と言うニックネームで呼ばれているそうだ
海外での仕事も多い岡山氏。海外の同業者からは「GIORGIO」と言うニックネームで呼ばれているそうだ

Vectorworksが共通プラットホーム

モーターショーに限らず、セットデザイナーが描いたセット図面に照明配灯図を描き込んだり、照明シミュレーションに利用していますが、セットデザイナーの多くがVectorworksを利用しています。
演出照明用のシミュレーションソフトはすべて海外製品ですが、そのほとんどがVectorworksで作成した3Dデータを利用できるようになっています。海外ソフトのマニュアルの中にも、「CAD図面はVectorworksで描いてそれを取り込めば良い」と明記してあるくらいですから。それくらいVectorworksは信頼性と汎用性があり、国内以上に海外では標準CADソフトとして使用されているということでしょう。


第43回 東京モーターショー 2013 トヨタブース
施主:株式会社トヨタマーケティングジャパン
企画・総合プロデュース:株式会社電通
照明設計:株式会社東京舞台照明

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

東京モーターショーの照明デザイン

VOL.1

東京モーターショーの照明デザイン

状況の変化にいち早く対応するためのシミュレーション

VOL.2

状況の変化にいち早く対応するためのシミュレーション

商品情報

Vectorworksの2D/3D基本作図機能を搭載したベーシック汎用CAD「Vectorworks Fundamentals」、建築・BIM支援CAD「Vectorworks Architect」、造園や緑地計画用の「Vectorworks Landmark」、舞台計画やステージ&ライティング計画などに適した「Vectorworks Spotlight」、全ての機能を搭載した最上位版「Vectorworks Designer」、さらに各シリーズには、高品位レンダリングと関連するビジュアライズ機能を搭載した「with Renderworks」シリーズが用意されており、利用用途に合わせてお選びいただけます。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2014/

企業情報

エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)

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