株式会社イーフロンティア

Shade 3D
TOKYO DESIGNERS WEEK 2013 JDNブース デザインと
施工の現場

2014/03/05 UPDATE

プロダクトから建築、空間系のクリエイターたちに強く支持されている3DCGソフト「Shade 3D」。
近年ではプロトタイプ制作ツールとして身近になった3Dプリンタとともに、ますます利便性を高めている。今回は、最新版「Shade 3D」を使用した事例にフォーカスし、その魅力を探ってみたい。

Vol.1インターネットの世界を表現した斬新な空間デザイン

コンテンツが空中にパラパラと飛んでいるようなイメージを表現
コンテンツが空中にパラパラと飛んでいるようなイメージを表現
Shade 3Dで描きながら同時進行で模型を制作

2013年秋に開催された東京デザイナーズウィーク期間中、東京・神宮外苑絵画館前の特設テント内で、小規模ながら多くの注目を集めたのがインターネットメディア「JDN」のブースだ。

黒い格子が不規則に重なり合い、大小さまざまなパネルが張り巡らされた空間は、インターネットとは無縁に思えるかもしれない。しかし、中に足を踏み入れるとすぐに、格子はネット網であり、パネルが各コンテンツを示していることに気がつく。

ブースデザインを担ったのは、JDNの親会社である丹青社のインハウスデザイナーを中心としたデザインユニットAUN2H4(アウン)の稲垣氏、吉田氏、杉本氏だ。今回は出展プロジェクト当初から参画し「JDNの世界観を空間で表現したい」というコンセプトから、見たこともない展示デザインを実現させた。

「JDNはウェブサイトであり、つまりデジタルコンテンツが主体です。デジタル画像を投影するなどの方法は簡単に思いつきましたが、あえてデジタルではなくアナログでインターネットの世界を表現してみたいな、と考えました」(稲垣氏)

デザインユニット「AUN2H4(アウン)」のリーダー、稲垣氏
デザインユニット「AUN2H4(アウン)」のリーダー、稲垣氏。JDNの出展にあたりプロジェクトの初期から参画し、ブースのコンセプトを立案した

ネット上のコンテンツが空中にパラパラ飛んでいるようなイメージを構想してスタディを繰り返した結果、当初、面で考えていたブースから、面が抜かれ、結果的に骨組みだけを残す形ができあがった。

最初からShade 3Dでデザインし、同時に模型も制作していくアウンの3人。「もともと僕ら全員がShadeユーザーなんです。僕自身は大学3年生のときにアルバイトをしていた設計事務所がShadeを使っていたのでそこで習得しました」(稲垣氏)。クライアントとの打ち合わせでは、手描きのスケッチレベルの段階でも、方向性が固まり次第Shade 3Dでモデリングしていく。今回のように、ブースの壁面を抜いていくという検討も、「3人で共有し、すぐに確認ができるので、Shade 3Dで納得がいくまで試行錯誤します」と稲垣氏。

ジャングルジムのように均一な格子ではなく不均一、整然ではなく雑然とさせることで無限に広がるインターネットの世界を表現したJDNのブース。もちろん、ウェブサイトとしてのJDNは整然として見えるが、その奥には複雑に絡みあうコンテンツの存在がある。

「いままで誰も作ったことがない、非常に複雑な形でしたから、模型が大切でしたね。模型で形にすることで、具体的なイメージを共有し、スピード感を持ってプロジェクトを進めたかったんです。Shade 3Dで起こしたパースと模型がセットで完成していきました」(稲垣氏)

コンテンツ同士をつなぐリンクのあり方を検討しスタディを繰りかえす
コンテンツ同士をつなぐリンクのあり方を検討しスタディを繰りかえす。この時点では壁という考え方だった
Shadeでモデリングしながら、同時に模型も制作した
Shade 3Dでモデリングしながら、同時に模型も制作した。STLファイル書き出しに対応しているので、直接3Dプリンタ出力が可能だ
イメージを形にする

アウンが完成させたデザイン案は、展示会の施工現場を良く知る人ならば「あり得ない」と呟いてしまうような難しい形だった。特に、イベント展示の準備期間は短い。いかに素早く適切にイメージ通りの形を作ることができるかがポイントとなる。今回も、現場で組み立て作業ができるのは1日だけ。「Shade 3Dのパースを見た時に、みなさんはイメージが固まっていって明るい顔になっていく一方で、このデザインを具現化するための段取りで、私の頭はフル回転していました(笑)」と語るのは、グループ会社としてブース作りをサポートした丹青社人材企画室の松村氏。同室の松山氏とともに初期段階から加わり、予算や進行上の管理を徹底して行ってきた。

グループ会社としてブース作りをサポートした丹青社人材企画室の松村氏
グループ会社としてブース作りをサポートした丹青社人材企画室の松村氏。ネットの世界を表現する華奢な造形をいかに成り立たせるかが課題だった

予算上、壁を立てることが難しく、材料や加工の選択も制限された。結果、木材を使うことは決まったが、それをどうやって組むのか。3本の木材が重なるので、パーツの接合を強固にしないと構造が成り立たないのだ。しかし、ネットの世界を表現する華奢な造形は譲れない。そこで利用したのが重力の力だ。「数本の格子を組んで構成したいくつかの面が、さらに重なり合うことによって、重力が上からかかります。すると、自然な末広がりになって安定するんです」と松村氏。
壁を立てることをやめて、自立する構造物をそっと置くという発想の転換。それを可能にしたのは、早い段階から完成イメージを共有し、さまざまな検討ができたからこそだ。

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インターネットの世界を表現した斬新な空間デザイン

VOL.1

インターネットの世界を表現した斬新な空間デザイン

イメージの共有と現場の力

VOL.2

イメージの共有と現場の力

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