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ミラノ - Life is design -
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第15回
イタリア発メガネのトレンドは? ─ MIDO〈ミド〉展より ─

 update 2004.05.26

レポート : 上田敦子 / インテリアコーディネーター 




ヨーロッパで開かれるメガネの見本市の中でも、フランスのSILMO〈シルモ〉展と並び最大の見本市となるMIDO〈ミド〉展。今年は5月7日から9日までの例年より一日短い3日間の開催となった。昨年はちょうど見本市の時期が重症急性呼吸器症候群〈SARS〉のニュースが新聞等の一面を賑わせていた頃と重なっていた為、来場者の数に影響があったが、今年は初日から好調な賑わいを見せていた。中国でSARS患者がまた発見されたとのニュースはイタリアでも報道されていたが、去年のようなマスク姿の来場者は見られなかった。

最終的に3日間の会期中の来場者数は昨年の46%増しと、過去5年間の平均入場者数を上回った。見本市開催までのミラノの天候は雨続きで、ようやく天気が回復したのがこの見本市のある週からであった(なんと今年の春はイタリア北部では、過去10年間で最多の雨量を記録した)。来場数に影響があったかどうかは定かではないが、イタリアにもようやくサングラスの時期がやってきたと感じるの見本市期間の天候であった。あまり知られていないが、イタリアにはメガネの世界3大メーカーが存在する。お洒落なネガネ・サングラスを掛けた出展者、来場者が会場付近に多く見かけられ、ネガネを掛けない筆者でさえ思わずそのメガネ姿に見とれてしまう個性的な人も見かけられた。

今年のネガネの傾向を簡単に言い表すのであれば、『コンビネーション』と『回帰』であろう(個人的な意見であり、メガネの専門的な見方ではないのであしからずご了承を!)。色と色との組み合わせ、素材と素材の組み合わせ、形と形の組み合わせなど、多種多様な方法を用いてネガネのフレームという『モノ』を構成している。フレームの上下で異なった色を組み合わせる、幾層にも色の層を組み合わせるという去年にも見られた傾向が更に顕著になっている。又、単に色の組み合わせ方においても、透明な色と不透明な色の組み合わせ、コントラストの強い色の組み合わせなども存在する。まるで色の組み合わせ方の倍数を見ているかのようである。

もう一つの回帰とは、60年代のオードリヘップバーンの映画にみられたようなサングラスデザインのリバイバルである。斬新な近未来的な形というのではなく、どちらかというといつかどこかで見たというような懐かしさを感じさせる形である。大きなオーバル型サングラスに代表されるもので、時代としては50年代、60年代を感じさせるものが多く、中には30年代、40年代の雰囲気さえ匂わすものも存在する。ただ、過去の形そのままというのではなく、それらのものが現代的な要素を加えたデザインとして新たに登場している。

メガネの形においては、矯正用のメガネとサングラスでは、その形の傾向がかなりはっきりしてきている。メガネは長方形型が主流、一方サングラスは顔の半分を覆うような大き目のオーバル型がかなり目立つ。メガネの長方形においては、その角が丸くなっていたりエッジがついていたり微妙なカーブになっていたりと、様々な長方形の変化形が存在する。サングラスについては、目の周りの顔を覆う面積がさらに大きくなり、カーブの丸みが特徴なオーバル型のものに多く見かけた。

そして形以上に最も目に止まったものは、サイドフレームに施された装飾である。メガネを正面から見たときには見えないこの部分に、様々な工夫が加えられている。少々デコラティブ過ぎるではないかと感じさせるくらいの懲り方である。ちょうど洋服のベルトに施されている装飾と同じでようなものである。シンプルなデザインで装飾も何も無くとも、メガネとしての用途としては成り立つが、ファッション的な要素を加える為にはその上に様々な装飾がされてウエスタン風、XXスタイルなどというのが出来る。サイド部分で個性をそれぞれが出しているのだ。サングラスのサイド部分も太めのサイドフレームが多く、その上にアシ素材の刺繍やラインストーンの装飾が施していたりと、昨年よりフレーム部分の装飾的なものが明らかに数を増やしている 【 写真 1〜3 】 。アクセサリー的な要素が強くなっているようである。

メガネのフレームの色に関しては、はっきりした色使いのものが目に止まった。例えば、MaxMara〈伊、Safilo サフィロ社〉の真っ白のフレームなどは色自体が強烈な色ではないが、顔の上にのせた時にはかなり印象的なイメージになる色使いのもの 【 写真 7 】 。フロント部分の上が赤、下が白といった色の組み合わせのものや市松模様のもの 【 写真 11〜12 】 、又透明な素材を用いた黄、ピンク、カラフルな色使いのもの 【 写真 4 】 、不透明な黒のフロント部分に透明な蛍光色のサイド部分を組み合わせたもの 【 写真 18 】 、キャメル、白、茶をサンドイッチの層ように組み合わせたもの 【 写真 14 】 等々。単純に黒、茶と色分けできる色使いではなく、様々な組み合わせ方で色使いされているものが多い。

素材に関して言えば、メタル素材ももちろん健在だが、確実にプラスチック素材のものの数が多くなっている。様々な色を演出する為に軽いイメージのプラスチック素材が用いられているのかもしれない。またメタル素材とプラスチック素材を組み合わせるなど、異素材を使ったものも多い。デザイン・素材・色使い全てに凝ったものが多く登場していて、にくい演出をしているメガネフレームを多く目にした。

イタリアはこれからサングラスの時期。お天気の日ともなれば、外に出かけるのにはサングラスなしでは考えられない。太陽の光は、日本で感じる以上にここではまぶしく感じる。日本ではサングラスは特殊なものと考えられ、負のイメージもまだ大きいようだが、ここイタリアではそういったことはまずない。日本でいえば、女性の日傘のようなものだろうか? 太陽が顔を覗かせていれば、冬でもサングラスをつけるという感覚である。ファッションの一部としてももちろんだが、一般に欧米人は瞳の色素が薄いため、強烈な太陽の刺激から目を守る為につけているとも言われる。天候もネガネ業界の売上に大きく左右されるであると思われる為、これから時期、太陽はまさにサングラスの為の大きなプロモーション道具である。昨年は異常なくらいに猛暑だったヨーロッパ各地。イタリア人は既に今年のバカンスの予定を考えることに精を出している。見本市で多く見かけた女優サングラスを自分のスタイルと組み合わせた女性を、この夏目にするのが楽しみである。




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【 1 】 「PICNIC」シリーズのサングラス。サイドフレーム部分にカラフルな花をラフィアアシで刺繍している。伊・トスカーナ地方の伝統工芸の一つを取り入れたもの。
【Salvatore Ferragamo】

【 2 】 「PICNIC」シリーズのサングラス。
【Salvatore Ferragamo】

【 3 】 スポーティな顔を覆うフラットなサングラス。
【EMPORIO ARMANI】

【 4 】 カラフルで透明なプラスチックメガネ。
【EMPORIO ARMANI】

【 5 】 エレガントとスポーティさを兼ね備えたサングラス。
【GIORGIO ARMANI】

【 6 】 メンズライクな要素をもつ知的なイメージのGIORGIO ARMANIのネガネ。
【GIORGIO ARMANI】



【 7 】 シンプルな白一色のフレーム。
【Max Mara】
【 8 】 サイド部分が特徴的なサングラス。
【Cristian Dior】
【 9 】 キュートなピンクフレームのサングラス。
【D&G】
【 10 】 上下異なった色の組み合わせのフレーム。
【T.look】
【 11 】 市松模様のフレーム2種類。
【T.look】
【 12 】 トレンド館出展のT.lookのメガネ展示風景。床面に置いた時計にメガネを時計の針のように配置。
【 13 】 パイナップルにメガネをディスプレイ。
【デンマークのEYE EYE】
【 14 】 ミルフィーユのように3色の色違いの層になっているフレーム。
【デンマークのEYE EYE】
【 15 】 仏のFace a Faceのセールスマン。ジャケットと合わせたネガネはキャメル色のコンビのもの。売り込むほうもお洒落。



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