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ミラノ - Life is design -
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第7回
ISTITUTO MARANGONI FASHION SHOW
イスティテゥ−ト・マランゴーニ ファッションショー

 update 2003.07.23
レポート : 上田敦子 / インテリアコーディネーター 




■ ドルチェを輩出した名門ファッションスクールの卒業ショー

今回はミラノにある ISTITUTO MARANGONI イスティテゥート・マランゴーニ(マランゴーニ服飾学園)の卒業ファッションショーを取り上げよう。同校は1935年創立の、イタリア最古かつ最大規模の名門服飾専門学校である。現在世界70カ国700人の学生が在籍しており、Sefano Dolce ステファノ・ドルチェ、Franco Moschino フランコ・モスキーノなど世界を代表するデザイナーを輩出し、世界のファッション界に多大な影響を与えている学校である。

去る6月25日、ミラノのValtellinaヴァルテリーナ通りにある“Alctraz”アルクトラツに於いて、マランゴーニ・ファッションスクールのショーが行われた。会場の前にはショーの開演の2時間も前から既に入場待ちの行列が出来ていた。招待状は、関係者向けの黒のもの、一般用の白のものと2種類あり、それぞれ入場できるゲートが異なる。当然長蛇の列を作っているのは白の招待状を持つ人達で、その多くは在校生達のように見受けられた。招待状には午後8時30分からの開演と記されているが、ショーが始まったのは午後9時20分。50分遅れでのショーのスタートであった。開演までの約一時間、会場となったホールには人、人であった。関係者の招待客にはバールでアペリティフ(食前酒)がサービスされるバールコーナーもあり、時間まで訪れた人々は各々の時間を楽しみ開演を待っていた。考えれば夜の9時を過ぎてのショーである。しかも、学生のショーの開演が夜なのである。この辺りがイタリアらしいとも言える。

かなり待ったような気がする。時間どおりに始まることの少ないイタリアでも、50分というのはかなりの時間に思える。もしかすると、これも主催者側の意図するものかとも思った。「早く見たい・・・どんなものなのか。」じらされればじらされるほど、人の気持ちは傾いていくものだ。会場内にはざっと1000人くらいだろうか。見当もつかないくらいの人ごみだ。そして人々の熱気と夏の暑さが相まっており、もうディスコかコンサート会場にいるようである。

会場の中央にあるステージに照明が照らされ、いよいよショーのスタートだ。バックに流れる音楽に合わせ、ショーは始まった。照明や舞台となるステージも、コレクションのものと変わらない気がする。すべてに於いて手がかけられている。ステージ中央の正面にはカメラマン達のレンズが待ち構えている。ステージ左側から現れたモデルは、本物である。本物というも変だが、マランゴーニのショーに出演するのはプロのモデルなのである。身に付けている衣装は生徒達のデザインであるが、その縫製の仕上げはプロが行っている。マランゴーニの目指すところは、デザインのオリジナル性、素晴らしさであり、それ故、縫製技術までも優れている必要はないのであろう。そのおかげもあり、作品はとても生徒の作品と思えぬ出来栄えである。デザイナーを目指すものは、そのデザインが素晴らしければ、それ以外の技術に卓越している必要はないのかもしれない。“一点卓越主義”がイタリアである。すべてに於いて優れていることを求める日本とは、この辺りが違いといえるだろう。

ショーはヘアーメイクを Tony&Guy トニー・アンド・ガイが担当しており、細部に渡ってミラノコレクションとはいかないまでも、レベルの高いプレゼンテーションが行われている。ショーは幾分エンターテインメント的要素も兼ね備えているが、単なるお祭り騒ぎでは決してない。生徒一人に付き4作品で構成され、モデルによって披露される。合計65人の260作品である。その中には日本人の学生も2人選ばれていた。

作品の傾向としては似通ったものも見受けられるが、デザイン的にはそれぞれ生徒の特徴を表しているのだろう。アバンギャルドなものあり、シンプルなものありと、様々なスタイルを披露してくれた。袖のスリーブが長く、右と左のつながったもの、洋服とキャンバス地のかばんをアクセサリーのように組み合わせて使ったもの、ジャケットの背中部分にカッティングされた布を組み合わせたもの、ジャケットの前後をそれぞれ前部のように仕上げたもの、などが印象に残る。メンズデザインは全体的の4分の1の割合くらいで、それ以外はレディスデザインである。メンズはシンプルながら形の綺麗なジャケットスーツ、パンツの裾を長くしたもの、白のパンツに大きな犬のプリントをしたもの、ニットの袖が長めに処理されたものなどが特徴的であった。

レディスの方はというと、コムデギャルソンの川久保玲のような色使い・アシンメトリーなスカートとニットの組み合わせのもの、“はち”をモチーフにしたカラフルなデザインで頭の部分にも触覚の部分ありのもの、細身のパンツシルエットの上にオートクチュールのようなたっぷりとしたドレスのスカートを後ろ側にはかせたもの、が挙げられる。アクセサリー的な要素として、ヒールの色が蛍光のグリーンとピンクを片方ずつ履かせたりするミックススタイルもあった。ちょうど“カンパリ”のコマーシャルで“Mix”をうたっているものがあるが、そのシーンを思い出させる。レディスの方にもメンズ同様スリーブの長いものが多く見られた。

今回のこのショーを観て、やはりプレゼンテーションが上手いと思う。最終的にいかに自分の作品をよく見せるか、である。もちろん作品そのもののデザインも当然大切であるが、ファッションショーという概念においては、デザインをいかに表現するかが一番大切ではないだろうか。それは洋服であればモデルのサイズに合った縫製が必要になり、ヘアーメイク、アクセサリーや靴をどう組み合わせて洋服を見せるか、でもある。また、最近のモードの傾向としてヌード的なものも多いが、今回のショーにも当然幾作品かは下着を使用しないものもあったが、エロチズムを嫌味に感じることは全くなかった。それが作品の意図とするものであれば、モデルは当然そう演出すべきである。ただ、日本ではこれが必ずしもそうなるわけではないらしい。“見える”ということに対する考え方の違いかもしれないし、モデルや主催者側の感覚の違いなのかもしれない。

今回のショーの作品は、イタリアのメーカーより提供された生地を使っているとのことだが、同校は福井県鯖江市ともコラボレーションしており、鯖江市で行われる“TANNAN FASHION SHOW”にも同校の生徒10人が選出されている。日本の生地メーカーより生地の提供を受け、生徒自身が作品を仕上げているという。日本側のファッションスクールもこのコンペに参加しているとのことなので、近くの方は一度見に行かれてはどうだろうか。

ショーは夜10時頃にフィナーレを迎えた。出演したモデル達全員がステージにもう一度登場し、観客の拍手とともにショーは終わりとなった。その後、会場はディスコ会場と様変わりし、学生達や来場客は更なるエンターテイメントを楽しんで帰ったようだ。今回卒業した学生の中から、将来の Dolce ドルチェ、Moschino モスキーノに続くデザイナーが誕生するかも知れない。興味深かったのはステージの作品だけでなく、来場客がお洒落であったことだ。さすがファッション関係者である。主催者側の学校関係者も、また来場客も思い思いのファッションを身につけ、会場に花を添えていた。会場内が暗く映像には残っていないが、彼女達のファッションをも見て頂きたかった。





ショーの当日開演を待つ人々。招待状は一般用の白と関係者用黒の二種類があり、行列を作っているのは白(一般用)の招待状を持っている人たち。2時間以上も前から人々が集まり始めていた。




会場のプレスコーナー。マランゴーニの学校関係者が席を並べる。




会場内中央ステージを見る。ステージを取り囲んでざっと1000人近くが訪れた。




エプロンドレスのようなトップとボトムの組み合わせたもの(モデル2人目)。




バックを小物に使ったものも多く登場。




着物柄もヘアアレンジに使うとこんな感じに。(日本の鯖江市の生地メーカー提供のもの)




ショーのフィナーレ、出演した全モデルがそれぞれの衣装でステージに上がり、盛り上がりも最高潮に。さながら本物のミラノコレクションのよう。




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