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ミラノ - Life is design -
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第5回
MIDO(ミド)展 メガネの見本市より

 update 2003.05.28
レポート : 上田敦子 / インテリアコーディネーター 




■ SARSの影響で・・・

5月2日から5日まで、ミラノの国際見本市会場にてMIDO(ミド)展が開催された。聞きなれないかも知れないがミラノで開かれるこの見本市は、メガネ業界にとって最も権威ある国際展示会である。メガネやサングラス、それに関わるレンズ、コンタクトなど眼鏡製品の見本市である。今回は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響で中国の共同出展ブースが不参加になるなど、開催前から来場者の人数などに懸念の声が上がっていた。加えて開催期間がちょうどイタリアのイースター休暇(復活祭休暇)と重なったこともあり、見本市の来場客の人数に影響を与えたようだ。


■ 会場内にもマスクをする人たちが

初日に訪れた際には、見本市会場内のどのブースにも人はまばら。毎年なら入りきれないほどの人でごった返していると言われるブースでさえ、訪れている人はわずかであった。また、SARSを心配してマスクをしている来場客も見かけた。イタリアでも毎日SARS関連のニュースがトップニュースとなっており、街中でマスクをするとSARS感染者と思われるという情報が流れていた。
最終的な来訪者は25,500人で前年に比べると33.4%の減少。イタリア国内からの来訪者は48.8%の激減だったという。香港でのSARS患者の激増のニュースが最も流れていた頃であったから、この数字は仕方ないと言えるだろう。来訪者の数では例年をかなり下回ったが、出展したメーカーの商談実績としては悪くない結果を残したと言う報告もある。


■ 趣向を凝らしたブースデザイン

今回の見本市で使用された会場は、14〜16号館と香港ブースとなった17号館のみで、家具の見本市であるサローネなどと比べると規模は小さい。その中には日本のメーカーであるCharmant(シャルマン)や福井県の複合ブースなども出展していた(ちなみに福井県の鯖江市はメガネの国内シェアの約90%、世界シェアの約20%を占めるメガネの産地である)。
ブースデザインに目をやってみると「CHANEL」「VERSACE」「Rayban」等を手掛けるイタリアのLuxottica(ルックソティカ)などの照明や展示方法に凝ったものに比べると、日本のブースは華やかさと面白みに欠ける面があった。ベルギーのTHEO(テオ)はピンクの花をテーマイメージとしたブースで、まるでコスメティックメーカーのMARY QUANT(マリークァント)を思わせる形と色使いのブース作りであった。日本の商品技術は世界的に見ても優れているのだが、商品を見せるという手法は残念ながら彼らのほうが上手のようである。
メガネという物自体がそれだけで存在するものでなく、洋服等と合わせてファッションを作る物であるという事もあり、それぞれのブースはショー的な要素が多く組み込まれていた。コレクションの映像をブース内のモニターで流したり、ブランドの洋服と組み合わせて展示されていたり、もはやメガネというものは物を見る為だけの物ではないことを物語っている。


■ 今年のトレンド

さて、メガネのデザイン的なものに触れていこう。今やメガネは視力を矯正するといった目的だけではなく、ファッションの一部と言ってよいだろう。洋服のイメージに合わせて形や色を選ぶトータルファッションを構成する一部分になっており、また自分の個性を主張する為の小物のひとつとしての役目も担っている。
現在、メガネは「セル幅の狭いスクエアタイプ」のフレームの人気が続いている。小さめの枠の流行はここ4年ほど続いており、もうしばらく続くと思われる。全体的にはフレームの形は、細めの長方形や楕円と長方形の間のものが多いが、これからの傾向として大きめのオーバル型のものやバタフライの形のような70年代を思わせる物なども見かけられる。また色つきレンズが入っているもの、傾斜がついているものもある。
フレーム素材はプラスチックとメタルが主流だが、高価なチタンフレームも人気である。
メタルフレームにおいては、とても薄くフラットなモデルも見かける。ネジやヒンジを全く使用していないタイプのものもある。新しい傾向として、プラスチックフレームはサイド部分が透明で幅のあるタイプのものや、ホワイトカラーのサイド部分の上にドッドやストライプ模様で、更に色をのせられたものなどが見られた。
色に関しては淡い色彩のスチールブルー、ホワイト、イエロー、ボルドー、アンティークローズ、パープル、そしてグレー、ブロンズ、ゴールドなど、色彩豊かなラインが並ぶ。洋服やTPOに合わせて着替えられるといった色使いである。ツートーンカラーの組み合わせや、色の濃淡を使用したものなど、グラフィック的に立体感のある仕上げになっているものもある。また、装飾的な要素として、フレームにラインストーンが付けられたものや、サイド部分に装飾が施されているものなど、メガネというより「顔をふちどるアクセサリー」と捉えられるような手の込んだものも見受けられる。


■ ブランドネームあってのメガネ

それぞれのブースを回ったが、印象に残るのは全て洋服のブランドネームでブースが出されているということである。CHANEL、 GUCCI、 DOLCE & GABBANA、 VERSACEといった高級服飾ブランドのブースは、メガネのデザインというより、それぞれのブランドネームで成り立っているといったように見受けられる。フレームのサイドに刻み込まれたロゴがなければ、果たして消費者はそのデザインの違いを洋服のように区別できるかといえば、難しいだろう。
このことが、各ブースを見れば見るほど実感するのである。洋服以上にメガネやサングラスは、そのブランドイメージで消費者が購入を決める要因になっていると言えるのではないだろうか。一部のものを除いて「どこのもの?」と問われても答えに困るほど、特にそのデザインに於いて差異はない。あるのはメガネという世界での流行が、それぞれに分散しているだけである。洋服と共にファッションの一部となっているメガネやサングラスは、鞄や靴と同様全体のバランスを作る際になくてはならないものである。しかし、それら他のもの以上に顔の一部である所以、より強い個性を発揮できるものでもある。
ファッション界において洋服のデザインの流行が繰り返されるのと同様、メガネやサングラスのデザインの流行も、60年代や70年代へと回帰する。デザインが回帰するだけでなく、最新の技術を駆使したレンズと組み合わって、又違った方向性を持つものへと進化する。同時にそれを選ぶ消費者の選択の幅は増えていく。洋服を着替えるようにメガネも着替えることも、もはや当たり前のようになりつつあるのが現在である。

見本市を見て感じたことは、メガネが洋服の一部でファッションと切り離して考えることのできないものである、ということ。また、メガネそのもののデザインや品質といったものよりも、ブランドイメージの方が優先されてしまっている現実である。どのメーカーもオリジナルブランドだけでは成り立っていかない。洋服の流行がメガネ、サングラスへもたらす影響は計り知れないものになる
残念に思ったことは、日本のメーカーも最新技術を使用し高品質のものを出しているのに、その展示方法で魅力が充分に伝えきれていないブースもあったということである。モノが人にコミュニケーションを図るというやり方を考察してもらいたいと願う。日本の製品の良さを是非上手くアピールして欲しい。





THEO BVBAというベルギーのメーカーのブース。ピンクの花をモチーフとした独特のブース。




キャンディーカラーで構成されたT.I.M.OCCHIALIのブース。




CHANELのブースより。正面にはコレクションの映像が流れる。イメージカラーの黒を基調としたシックなブース作り。




業界大手のLUXOTICA(ルックスオティカ)グループのブースより。ブルーと白の照明のコントラストが幻想的な雰囲気を作り出している。




Raybanのブースには中央に噴水が作られている。毎年ならこの中には入りきれないくらいの来客があるが、今年はこんな風。




フレームフロント部分にラインストーンの装飾のされたメガネ。




Chalman社のオリジナルブランドのメガネより。透明フレームに色つきのレンズとの組み合わせ。




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