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2007 ミラノサローネレポート
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三國 秀美+小山 志穂利 : 2007年ミラノ・サローネ モード化する家具
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ザノッタ社の展示より。リーシ・ベックマンがデザインし、1966年に製品化された《Karelia》の復刻版が展示されていた。


小山 志穂利
Shihori
Koyama


小山 志穂利
学生のかたわら三國秀美のインターン・アシスタントとしてサローネ取材および国内での家具メーカー、新ブランドなどを取材。
この春からフリーランスとしてグラフィック・デザイナーおよびライターとして活動を開始。


晴れたサローネ

今年のイタリアは連日真夏のように暑い日が続きました。ノースリーブなど夏服の人が目立ち、緑がある場所では日光浴をする人をよく見かけました。私にとっては今年で3度目のサローネ視察になりますが、これまで経験したことのないくらいの暑さで記憶に残るサローネでした。反面、雨も降らず多くのイベントを訪れることのできる絶好のサローネだったかもしれません。 サローネを訪れる日本人は年々増えてきています。学生のような若いデザイナーが目立ちました。多くの人が楽しむお祭りのようなサローネは、イタリア同様、業界関係者だけでなく、日本の美大生やデザインに興味がある一般の人にとっても身近なものに変化してきていることを実感しました。今では、トルトーナ地区を課外授業の場としている日本の美術大学もあります。 様々な国からきた人たちと街ですれ違いながら見た今年のサローネの印象は、「モードに似た傾向」でした。白系から刺激的なグリッターまで流行色で統一を見せつつ、形で目を楽しませるとともに、感触で新しさを発見させる。各ブランド、作品共に個性を感じるものでした(文中敬称略)。

ナチュラルでやわらか

サローネで私たちは毎年、プラスチックやスチール、木材などさまざまな素材の家具や照明を目にしますが、ここ数年、皮革やファブリックなどモードに見られる素材を使ったプロダクトが色や形とともにトレンドを見せてくれる、という傾向があるように感じました。サローネ会場の内外で出会ったプロダクトを中心に、そのトレンドを紹介していきます。

ここで紹介するのはトレンドの一つの傾向である、「ナチュラル」で「やわらか」な印象をもつ作品。家具は、私たちが服を見ながらウィンドー・ショッピングするように、実は自分のスタイルを表現する生活に欠かせない大切なものなのです。サローネ、特にミラノ市内のフォーリ・サローネで数々のショールームを見てまわると、「ウィンドー・ショッピング」に似た体験が身近にできます。


パトリシア・ウルキオラ《Volant》、モローゾ社。

パトリシア・ウルキオラ《Volant》、モローゾ社。


去年東京の青山に新しくショールームができたモローゾ社。サローネでもひときわ大きなブースでした。会場では、人気デザイナーであるパトリシア・ウルキオラのライトグリーンとショッキングピンクの細いストライプからなるファブリックを使ったソファー《Volant》が目立ちました。細いストライプなのでビビットな色なのに主張し過ぎず、部屋のアクセントになるコントラストがとても綺麗なソファーです。裾から見える裏地がショッキングピンクなのもオシャレでした。背が高いので座り心地も良く、リラックスするのにも最適です。


富田一彦《Futton》、モローゾ社

富田一彦《Futton》、モローゾ社


他にも、去年に引き続き和柄を使った作品を出した富田一彦の新作《Futton》や《Mikado》は、着物の長襦袢に使われるような昔ながらの和柄を使い、現代的な曲線で新しさを表現したチェアです。ロン・アラッドの新作はプラスチックのシートにメタルフレームで作られた《Wavy》。白と透明のバージョンがあり、ともに今年のトレンドを象徴しているようなデザインでした。


ロン・アラッド《Wavy》、モローゾ社。

ロン・アラッド《Wavy》、モローゾ社。




日本語の名前がついているポリプロピレン製のスツール《shitake》は人気デザイナーのマルセル・ワンダースによるファンタジックな作品です。また、ルカ・ニケットとマッシモ・ガルドーネのコンビがデザインした《Around the Roses--Dreaming flowers Collection》など、モローゾ社はやさしい表情のデザインが得意であることを再認識させられます。全体的にみると、印象に残るカラフルな会場でした。


 マルセル・ワンダース《shitake》モローゾ社。

マルセル・ワンダース《shitake》モローゾ社。



ルカ・ニケット&マッシモ・ガルドーネ《Around the Roses》、モローゾ社。

ルカ・ニケット&マッシモ・ガルドーネ《Around the Roses》、モローゾ社。





ダネーゼ社から出た《KADA》はイヴ・ベアールのデザイン。

ダネーゼ社から出た《KADA》はイヴ・ベアールのデザイン。平面で畳まれたダンボールのような状態から真ん中をスライドさせ、上下を開きトレーを乗せるとサイドテーブルになる。トレーを裏にして載せるとチェアに変身する。モノトーン、ナチュラル、オレンジ、赤、プリントなどのパターンがある。プリント柄が今年の新作。



日本のネクストマルニの《12chairs》、こちらはとてもナチュラルなシリーズです。モンテ・ナポレオーネの一角で展示した会場では、爽やかな風と日に透けるカーテンが似合う、白を基調にしたミラノのアパートメントのようなイメージの中で、テーブルや椅子が展示されていました。


ネクストマルニから。《12chairs》。

ネクストマルニから。《12chairs》。



会場では幸運な事に、「《12 chairs》全てに合うテーブル」をデザインした黒川雅之に話を聞くことができました。会場で私が座ったチェアの印象は一言で言うと「安心」でした。イタリアでさまざまなチェアに座ってきましたが、どれも深く腰掛けると足が床につかない。日本人の私では膝下の長さが合わず、リラックスしようにも落ち着かない。ここに来てようやくほっとしました。特に、黒川雅之(写真左)と安積伸(写真右)のデザインしたチェアはどちらもちょうど良い高さで腰から背中まで体に添うフォルムが心地よいのです。黒川雅之のチェアは背もたれが浮いていて寄りかかると心もちしなります。安積伸のチェアは皮革の黒がとてもスタイリッシュ。深澤直人が“椅子らしい椅子”をデザインしたダイニング・セットも存在感があります。そのほか、植木莞爾、ハッリ・コスキネン、黒川雅之らがデザインしたダイニング・テーブルにディスプレイされた食器類は、盗まれてしまう程人気があったようです。


深澤直人、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)

深澤直人、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)



植木莞爾、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)

植木莞爾、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)


ハッリ・コネスキン、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)

ハッリ・コネスキン、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)




黒川雅之、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)

黒川雅之、 ダイニング・テーブル(ネクストマルニ)












安藤健浩デザイン《KUMA》

安藤健浩デザイン。《KUMA》と名前がついているこの一見コースターにも見えるものは、つなげてベッドカバーなど様々な用途に使うことができる。ブースいっぱいに飾られていた《KUMA》はフエルト製でシンプルな中にも独特の温かみがある。もうひとつの《CROSS》はつなげると高級感のあるインテリアに変わる。身近な素材とそれを活かしたアイディアで作られたブースには人が集まり関心を集めていた。
 


安藤健浩の《KUMA》と《CROSS》。

安藤健浩の《KUMA》と《CROSS》。













ハマダイズミとハシモトヒデオ のユニット“PD DESIGN”デザインの《Skin Light Bulb》

ハマダイズミとハシモトヒデオ のユニット“PD DESIGN”デザインの《Skin Light Bulb》は、サテリテのイベント『Avverati A Dream Come True』に展示されていたルーム・ライト。見た目は普通の電球なのに、実はシリコンゴムで作られている。電球は「ガラス製」という思い込みがあるためか、おもちゃのように握ることのできる柔らかい感触が新鮮で面白い。




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