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Rhode Island School of Design(アメリカ)は、ニューヨーク市トライベッカ界隈のワインバーTraceを想定した。乳白色のガラステーブルの下に備え付けられたカメラが、テーブル上の客の手の動きなどの動作を壁面に投影する。同時に、カウンターでサービスするマスターの動作と重複する。絵画や写真などの固定された装飾ではなく、ここでは毎秒異なるシーンがいかにも抽象的に映しだされる。
デザイナーズレストランが流行した頃、このような場所に魅了されて訪れる客の多くは、食べるための快楽よりも、「見る」「見られる」というナルシスト的な感覚が強かったように思う。「食」の場が、エンターテイメントとしての舞台へと飛躍した。Traceは、現代の学生が観察した空間とデジタル映像との融合である。決して、ナルシストとしてのプロパガンダをあおるものではない。意外にも、一枚の鏡が等身大の姿を映し出すよりもデジタル映像が投影する内容のほうが、活動的なニューヨーカーを表現しており、空間に馴染んでいるように思われた。現代美術で頻繁に用いられるデジタル映像はインタラクティブな手法として、今後も空間演出として利用される価値はある。 【 写真 7〜9 】
【 7 】
trace エチュードの展示模様(模型+スケッチ) サローネ会場より
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【 8 】
テーブルの上に置かれた手がデジタル画像として壁面に投影される
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The University of New South Wales(オーストラリア)による、南半球の学生たちが提案したステーキレストランCarnivoraは、非常にユニークなものであった。料理名のついたスツールメニューから注文すると、「家具厨房」でパーツの組み合わせが行われる、という想定だ。実際の料理厨房は奥に設けられており、注文したスツールに応じて肉の調理法も行われる。ここでは、調理と制作に共通するプロセスを同時進行させている。 【 写真 10〜11 】
【 10 】
carnivoraエントランス サローネ会場より ©COSMIT
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【 11 】
レストラン店内の模型 手前に吊るされたスツールを注文すると左側の厨房でアッセンブルされる
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