ミラノサローネ特集 さまざまな企業やデザイナーの出展情報や見どころを紹介

COSMIT代表クラウディオ・ルーティ氏、サローネと万博について語る

COSMIT代表クラウディオ・ルーティ氏、サローネと万博について語る

カルテル社を飛躍させた経営手法で、国際見本市・都市間競争に挑む

2014/05/14

レポーター:桐山登士樹

第53回サローネ・デル・モービレ・ミラノ(通称:ミラノサローネ、以降サローネと略)は総来場者35万7212人、内業界関係者は160カ国より31万1781人と前年比13%増を記録した。長く低迷したイタリア産業界、中でも家具業界が底打ちしたことを裏付ける数字である。昨年コズミット(COSMIT)代表に就任したクラウディオ・ルーティ氏の経営手腕によるところが大きい。カルテル社を飛躍させたルーティ氏の経営手腕が、ここコズミットでどのように活かされるのか楽しみだ。

今年は、フォーリサローネ(見本市会場以外での展示)に拡散した著名な家具関連の各社をフィエラ(見本市会場)に呼び戻し、流失傾向に歯止めをかけた。次なる手はイタリア家具およびデザインのポテンシャルを活かすスキームである。既に純粋なイタリア企業は少なくなり、ファッション業界と同様にコングリマリット化が進んでいる。強いメイド・イン・イタリーの復権を目指して、4月9日に一部の関係者を集めた懇話会が会場内のレッドラウンジと呼ばれるサロンで行われた。その内容を先ずは報告したい。

賑わうサローネの入場ゲート
賑わうサローネの入場ゲート
企画展「 Where Architects Live 」
企画展「 Where Architects Live 」
―今回のサローネについて

ルーティ:サローネは成功を続けており、イタリアの企業のためにベストを尽くしている。イタリア企業は規模の大きさに関わらず投資を行い、インターナショナルブランドとしての地位とプライドを築き上げた。イタリア企業は、イノベーション力があり、新素材を積極的に取り入れ、マーケティングにも優れている。そのために、イタリアブランドはベストのクオリティを保っている。

サローネに参加している企業の70%がイタリア企業、30%が海外企業である。30%の中にはフランス、ドイツなど非常に重要な国が含まれる。サローネはすべての国に開かれており出展待機リストは60社以上に及ぶ。ベストな状態を維持するために、ポテンシャルのある企業を審査して選定している。最近の新しいクライアントには、アジア、南米、アメリカ、アフリカが多い。

今回のサローネ企画展「 Where Architects Live 」では、単にモノを売るだけでなく、ライフスタイルや空間を提案している。その上で建築家との関係は重要で、特に日本の建築家の坂茂は素晴らしいインスタレーションを提供してくれた。

今回は、昨年に比べて大きい変化を感じている。まず、我々もびっくりするほど来場者数がアップしている。昨日(初日)は20%程アップしており、ご覧の通り、あらゆる国籍の人たちが来場している。また、イタリア企業の変革が興味深く、積極的な投資を試み、新たなブースデザイン、プロダクトを展開している。まさに、イタリアブランドは新しく変わろうとしている。

―海外とのビジネス状況はどうですか?

ルーティ:我々はすべての国にオープンな態度だが、国の文化やライフスタイルの違いで海外ビジネスは難航していた。しかし、グローバルマーケットを意識した製品、コミュニケーションを行うことで、現在は非常にうまくいっている。私は国だけでなく、チャンネル(ルート)のことも意識するべきだと考えている。コントラクト、建築プロジェクトなど多くのチャンネルがある。今後はこれらにも対応していかなくてはいけない。

―ミラノ万博2015についてどう考えていますか?

ルーティ:ミラノ万博公社との関係の中で、何かをしていきたいとみんなが考えている。私の立場としては、デザイナーを巻き込み、ミラノ万博において組織(ミラノ市、ローマ政府機関)が計画している「MILANO NOW」というプロジェクトのコーディネーションをしている。すべての最高のイタリア企業、すべての最高のミラノエネルギー、たとえばファッション、デザインなどが成功するようにサポートしていきたい。
ミラノ万博は単なるプラットホームではない。海外から多くの人々がミラノにくる。ミラノは小さな都市であるが、とても魅力的な都市である。特に、デザインとファッションにおいては。私たちは、ミラノ万博で最高のミラノを見せたいと思っている。

COSMIT代表クラウディオ・ルーティ氏
COSMIT代表クラウディオ・ルーティ氏
―ミラノ万博2015において、インテリア家具はどうなりますか?

ルーティ:まだ、我々の計画は決まっていないがミラノ万博およびミラノ市内どちらでもプレゼンテーションをする機会を考えている。万博期間中にミラノに来る人たちは、この時期の世界の中心がミラノにあることを感じ、たくさんのエネルギーがある最高のミラノを見ることができるだろう。

現状は、レストランや施設など十分に準備されておらず、もっとオープンにならなければならない。インターナショナルなデザインを施さなければならない。今回のサローネ会期中に準備が着実に進んでいることを理解できるでしょう。

以上、ルーティ代表は来年のミラノ万博とも連携しシナジー効果を上げるよう働きかけて行く決意を表明した。実行力のある方なのでその手腕を期待したい。メゾン・エ・オフジェは、すでに3月にシンガポールで実施し次にはマイアミでの見本市を計画している。アンビアンテは、更なる領域の拡大と取り込みに積極的なアプローチを展開している。欧州の展示会ビジネスは、水面下での競争は年々激しくなっている。一つ間違えば、歴史と実績を持っていた世界最大級のテーブルウェア・ギフト用品関連の見本市マチェフ(MACEF)と同様となる。幸いミラノは、サローネとフォーリサローネの両翼が健在なだけに更なる飛躍の可能性を秘めている。攻めの王者に変わる事が出来るか、関係者の期待は大きい。

Profile

桐山登士樹

桐山登士樹/株式会社TRUNK 代表

デザインマーケティング、ブランドプロデュース、建築・デザイン展のキュレーションおよび運営を行う株式会社TRUNK代表、デザインディレクター。ミラノサローネは、1985年から毎年取材、分析。2005年からはLEXUSのインスタレーションをプロデュース。2008年からはCanon NEOREALのプロデュースを5年間手がけ、エリータデザインアワード2011グランプリ受賞など。日本におけるイタリア2001年イタリアと日本「生活のデザイン展」日本側事務局ディレクター。2015年ミラノ国際博覧会日本館 広報・行催事プロデューサー他
http://www.trunk-design.jp/