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[谷口吉郎・谷口吉生]展 金沢が育んだ二人の建築家
伝統に根ざした清新な建築を数多く設計した、親子二人の建築世界
2015/01/14
JDN編集部
2014年12月21日まで金沢市民芸術村で開催されていた展覧会「[谷口吉郎・谷口吉生]展 金沢が育んだ二人の建築家」。金沢が生んだ二人の建築家、谷口吉郎氏(1904~79年)と谷口吉生氏(1937年~)の親子二代の仕事を通して、日本の近現代建築が切り拓いた独自の地平と世界へと通じる広がりを紹介した。(上写真:左「ホテルオークラメインロビー」1962年、中・右「帝国劇場 ロビー・客席」1966年、いずれも谷口吉郎)
二人の建築作品には、共に、伝統に根ざしつつ、そこから優れた特質を抽出し、清新な空間を創造する、という一貫した姿勢が流れている。同時に、その生きた時代や求める建築像の違いから、作風には微妙な変化も見られる。東宮御所(1960年)、ホテルオークラ(1962年)に代表されるように、伝統的な木造の文化に根差した、清らかでありつつも、どこか華麗な抒情性を湛える静的な建築を目指した吉郎氏。土門拳記念館(1983年)や丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(1991年)、豊田市美術館(1995年)など、洗練された現代的な素材や構法を用いて、人々が歩むに従って次々に風景が展開していく、より環境との関係性を重視した透明感あふれる動的な建築を求めてきた吉生氏。
明晰な建築思想と凛とした精神性をもつ二人の建築家の仕事を、清らかな意匠から透明感のある環境造形へ、という視点でとらえ、長い思索を通して受け継がれ、深化されてきた建築思想の神髄に迫る展覧会。今のところ巡回は予定されていないそうだが、会場の様子を紹介しよう。
【次ページ】「土門拳記念館」「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」「豊田市美術館」等、谷口吉生氏の作品紹介