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String & IC Lights Installation by Michael Anastassiades

String & IC Lights Installation by Michael Anastassiades

注目のデザイナーMichael Anastassiades(マイケル・アナスタシアデス)と、数々の名作照明で知られるFLOSの初コラボレーション

2014/11/26

JDN編集部

2014年のミラノサローネで発表されたFLOSの新作「String Lights」と「IC Lights」。デザイナーは、キプロス島生まれ、RCA出身でロンドンに自身のスタジオを構えるMichael Anastassiades(マイケル・アナスタシアデス)氏だ。新作の日本での初披露に合わせて東京のデザインウィーク期間中に来日した氏に、FLOS代表のPiero Gandini(ピエロ・ガンディーニ)氏と共にインタビューすることができた。FLOSとの出会い、自身のデザイン哲学等を、新製品と共に紹介しよう。
(上写真:新作「String Lights」と共に、左がMichael Anastassiades氏、右はPiero Gandini氏)

「String Lights」
「String Lights」

FLOSについて、多くは説明不要と思うので、概要のみを。1962年設立の住宅や建築照明を提供するイタリアの国際企業で、Achille Castiglioni(アッキレ・カスティリオーニ)を始めとしたデザイナーとの多くのコラボレーションで知られる。設立と同じ年に発表された、カスティリオーニ兄弟による「ARCO」は、50年以上を経た今なお照明デザインのアイコンとなっている。Jasper Morrison(ジャスパー・モリソン)、Marc Newson(マーク・ニューソン)、Marcel Wanders(マルセル・ワンダース)、Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)、Philippe Starck(フィリップ・スタルク)、Ronan & Erwan Bouroullec(ロナン&エルワン ブルレック)等との共同は、日本でも良く知られるところだ。

Michael Anastassiades氏については、多少の説明が必要だろう。1967年キプロス島生まれ、ロンドンのカレッジで土木技術を学んだ後、RCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)で工業デザインを学び、1994年にロンドンに自身のスタジオを設立した。
そのデザインは、ニューヨーク近代美術館、V&A博物館などのパーマネントコレクションに選定されている。2006年の建築事務所スタジオ・ムンバイとの共同以来、David Chipperfield(デビッド・チッパーフィールド)等の建築家との共同や、セルジオ・ロッシのブティックやスワロフスキーのインスタレーションなど仕事の領域を拡げている。

そのデザインは、円柱、直方体、球、といったミニマルな要素を用いているので、一見したところでは当たり前に見えてしまうかもしれない。だが、機能的であることはもちろんのこと、慎重に見ると予期していなかった魅力に気づくのではないだろうか。

「IC Lights」 T1 high
「IC Lights」 T1 high

まず、両者の出会いについてPiero Gandini氏に尋ねた。
「3年前、2011年ことです。ニューヨークのギャラリーで非常に美しいシャンデリアを見ました。『これは誰のデザインだ?』と名前を聞いたのですが、発音が難しくて、実は覚えることができませんでした(笑)。後日、知人に名前を思い出す手伝いをしてもらう中で、パトリシア・ウルキオラが『私の友達よ!』と教えてくれたのです」

その数週間後、ロンドンで再会し、時間が無かった二人はタクシーの中で一緒に仕事をすることを決めたという。「素敵なドローイング、きれいなラインはとても忘れられないものでした。プレゼンテーションの能力も素晴らしく、全てが私を感動させたんです」

「シンデレラストーリーに聞こえますね」と聞いた。
「シンデレラストーリーではないと断言します。マイクは非凡です。そしてその表現は首尾一貫している。とてもラッキーなタイミングで出会うことにはなりましたが、彼がセルフプロダクトで展示するチャレンジをしていたからです」

※Michael Anastassiades氏の愛称

東京のFLOS SPACEでの展示風景
東京のFLOS SPACEでの展示風景
「IC Lights」 S2(2)
「IC Lights」 S2

FLOSとの共同をどう感じたかMichael Anastassiades氏に聞いた。
「驚くほど良いものです。素晴らしいサポート、リレーションシップ、そして信頼。美しさを製品にすることに妥協がありません。美しくダイナミックな関係を築けていると思います」
「デザイナーはコミュニケートする義務があると考えています。コミュニケーションがなければ、自分のデザインは存在しない。そうしたデザイナー側の姿勢は非常に重要だと思います」

新作の名前について。
普段乗っている電車の窓から見える規則的に並ぶ電線からインスピレーションを得た「String Lights」は良く分かるのだが、「IC Lights」の名前はIdentification Code(英国の移民者出身国を分類する入国管理局の識別コード)に由来するという、その理由が分からなく尋ねた。
「直接の関係はないです笑。名前がデザインを定義してしまうことを好まないのです。IC Lightsには色々な形があるので、様々な出身国を表すICとも言えますが、記号化して間接的に人を表現するICということかもしれません」
「IC Lights」は、ジャグリングの名手の体とボールの動きにインスピレーションを得たデザインだ。
発想の根源については「人生の全てが反映している。好きなもの、見えるもの全て。そして、人間関係。人間の観察ですね」という。

続けて、とてもシンプルだが非常にリッチなイメージを新作から感じたので、日本のデザインの影響や自身のデザイン哲学について聞いた。
「昨晩のパーティでも同じことを聞かれました。RCAを卒業した後、インターンとして日本に3ヵ月滞在したことがあります。日本の魅力的な文化、建築、美しい物に惹かれていたのです。23年経って、戻ってきましたが、いまだに非常に特別な場所です。私のデザインについて言えば、形態の純粋さを探し求めています。シンプルさを極めて、時代を越えて共通する魅力を抽出したい」
「何年代風とか、何かを参照したようなものではなく、タイムレスなデザインを、時代を越えて残るようなデザインを志向しています」

「String Lights」(2)
「String Lights」

最後に、今後の予定について尋ねた。
「ジャパニーズだよ、『アマ』だ」とPiero Gandini氏。
この9月のロンドンデザインウィークでMichael Anastassiades氏によるインスタレーションをしたそうだ。写真を見せてもらうと、人よりも大きな真珠をイメージした白い球が展示されている。このタイトルが『アマ』だ。日本でアマのドラマが非常に人気だったことは伝えると、驚いていた。日本でのお披露目は未定だが、来年4月のユーロルーチェ(ミラノサローネ併催の照明展)でも何かが発表されるのかもしれない。

東京のショールームでのインスタレーションは12月中旬頃までの展示を予定している。

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FLOS
http://japan.flos.com

Michael Anastassiades
http://michaelanastassiades.com