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アップサイクルの元祖「FREITAG(フライターグ)」変わらぬデザイン哲学
フライターグ兄弟へのインタビューとスイス・チューリッヒの工場と旗艦店から
2014/10/15
JDN編集部
■カット・デザイン・検品
次に素材を切り出して、“デザイナー”と呼ばれるスタッフの手に渡る。「素材が一つひとつ異なるので、その選定が非常に重要なんだ。素材の柄をどのように出すか、厚みが微妙に異なる素材をどのように使うか、判断することがたくさんあり製品づくりの中心と言える。工場の中で様々な役割を4、5年経験してから、デザイナーの職につくことが多いね」
製品の大元のデザイン、アートディレクションについては、フライターグ兄弟が今も担当している。
縫製工程のみ、スイス国外に発注している。スイスには適切な縫製工場がないそうだ。FREITAG F-actory NOERDでの次の工程は、縫製された製品の検品となる。縫製の不具合だけでなく、柄のある素材を表ではなく裏に使ってしまった等の理由で没になることもある。検品を通過した製品は、世界中のショップへ出荷さると共に、オンラインショップで販売される。
■チューリッヒの旗艦店
チューリッヒの旗艦店「FREITAG Individual Recycled Freeway Store」は19個の錆びた中古コンテナを積み重ねてできている。「へばった様子が愛らしい」コンテナは、補強され積み上げられ安全を確保している。高さは26m。「チューリッヒ市の高さ制限をクリアできる充分な低さと、皆の背筋をぞっとさせるに充分な高さ」とのこと。屋上の9階まで階段で登るのは少し大変だが、誰でも眺望を楽しむことが可能。
この旗艦店があるエリアはチューリッヒ市の5区(KREIS5、クライス5)にあり、“チューリッヒ・ウエスト”と呼ばれている。チューリッヒ駅から一駅、西にあり、もともとは工業地帯だ。今ではグルメとナイトライフを楽しめて、先端的なギャラリーやショップもある、いわゆるトレンドエリアになっている。雰囲気を東京で例えるならば、万世橋のエキュート、東神田のニューアガタビル、日の出のタブロイド、蔵前のミラー、佐賀町エキジビット・スペースと、各種飲食施設を豊洲あたりに配置した感じだろうか。チューリッヒ市では、この5区の成功を受けて、鉄道を挟んで反対側にある4区でも再開発が盛んだ。
■フライターグ兄弟
最後に、渋谷のショップでのインタビューから印象に残った言葉を紹介する。改めて、彼らのぶれの無さが伝わるのではないかと思う。
── 創業して20年以上が経ちますが、何か変わったことはありますか?
「変わってないね。年はとったけど笑。兄弟であることは変わってないし、10才位しか年を取ってないように思う」
── 工場の楽しい雰囲気はどのようにしてできているのでしょうか?
「建築や工場は、ブランド哲学の反映なんだ。最終的な製品だけでなく、全てを一体として表現する。それを見て欲しい、ということです」
── 昨年20周年でしたが、30周年のフライターグはどうなっている?
「まず、価値観は変わらないね。一方で、新しいセグメント、たとえばファッションや文具等、対象は拡げていきたいと思う。僕らは豪華な車や宝石にお金を使ったりはしないので、得られた利益は本業に注いで、絶えず新しいことをやっていきたいと考えている。道を誤らないことだね」
── アップサイクルの先駆者として、同じようなコンセプトのブランドについて何かコメントはありますか?
「コンセプトが同じなのは良いと思う。アップサイクルは業界として必要な流れだとも思います。ただ、コピー商品を作るのは悲しいことだね。そしてグリーンやエコといっても名前だけで実態がない場合もあるので、それもどうなんだろう。だましてはいけないよね。スタートアップが‘未来のフライターグ’を目指してもらうのは大歓迎だ」
- ●取材協力
- FREITAG
http://www.freitag.ch - 日本・スイス国交樹立150周年記念 特設ウェブサイト
http://swiss150.jp